第13話 東都のおねぇは尊さにバフをかける
「ほいっ」
バイト終わりの駐輪場で東都にヘルメットを投げる。
運動神経抜群の東都は難なくキャッチしてくれた。
「千田くん……」
俺の名前を呼ぶと、ニコッとエンジェルスマイル一つ。
「すっごいださかったね」
「ぐふっ」
俺はその場でひざまずく。
「イケメンムーブをかましての空振りは救いがないよね」
「天使の微笑みで悪魔の攻め方やめて」
「でも、嬉しかったよ。私のこと心配してくれたってこと、だもんね?」
「か、勘違いしないでよね。あんたのことなんて全然心配なんかしてないんだからっ!」
そう言って立ち上がり、腕を組んで顔を背ける。
「ふ、ふんっ。しょーがないから、オレ様が家まで送ってあげるわよ。感謝しなさいっ」
「なるほど。これがツンデレというやつなんだね」
イケメンムーブの空振りをおふざけツンデレで緩和したところで、東都をバイクに乗せる。
「そういえば、これって配達用のバイクなんだよね? なんでVストロームなの?」
東都が車種をわかっているのに驚きだが、こちらの疑問よりも先に彼女の質問に答える。
「店長が新しいバイクを買ったから、このバイクを店に寄付したんだ。おかげで配達なんて新しい仕事が増えた」
「でも、配達の仕事ってあんまりないよね?」
「ま、店長の思い付きだしな」
互いに苦笑いを浮かべ、バイクのエンジンをかけて東都の家に向かう。
バイクを運転中。
そういえば東都を乗せるのはこれで二回目だが、どこか乗り慣れている感が否めない。
「東都ってバイク詳しいの?」
先程のバイクの車種を知っていた分も気になり、赤信号で停車中に質問をしてみる。
「そんなにだけど、何回もバイクの後ろに乗せてもらっているよ」
「それって、彼氏、とか?」
そう聞くと後ろから、「うーん?」とからかうような声が聞こえてくる。
「もしかして千田くん。私が誰のバイクに乗ったか気になる?」
「いや、全然」
めちゃくちゃ気になるが、あえて塩対応してみる。
「またまたぁ。気になるでしょ?」
「そういえば、テスト範囲なんだが……」
思いっきり話を逸らしてやる。
「そんなわざとらしいことしてぇ。本当は気になるくせにぃ」
「おっと青信号だ。青信号、みんなで渡れば怖くないっ」
ブーンとバイクを発信させ、東都の家までやってくる。
「ほいっ、到着」
バイクを東都の住んでいる団地の前に止め、ヘルメットを脱ぐ。
「お姉ちゃんだからっ!」
「へ?」
いきなり姉宣言をさせられてびっくりする。
「私がバイクに乗せてもらったのお姉ちゃんだからっ! 彼氏とかいないからっ!」
いきなりフリー宣言をしてくれて、俺の心は心底躍る。
「詩音。呼んだ?」
「「おっ!?」」
急に目の前に現れたのは、電子タバコを加えたモデルみたいな大人のお姉さん。
どこか東都に似ている気がする。
「お、おねぇ!? いつの間に!?」
「お前が彼氏いない歴=年齢を暴露する前から」
「なっ!? そんなこと言ってないもん!」
「事実だろ?」
「事実だけど、事実だけども……!」
くぉぉと声にならないような声を出しながら東都はヘルメットを脱いでバイクからおりる。
「どうも。私、
「初めまして、千田陽です」
「千田くんのことは詩音からよぉく話を聞いてるよー」
「ちょっ! おねぇ! 余計なこと言うなー!」
東都が怒った様子お姉さんを引っ張って行く。
「じゃ、じゃあね千田くんバイトお疲れ様送ってくれてありがとう」
もの凄い早口で言ってくる。
相当焦ってんだな。
普段、俺を無意識に尊死させようとしてくるんだ。
仕返ししてやる。
「東都!」
名前を呼んでやるとすぐに振り返ってくる。
「俺も彼女なんてできたことないから!」
そう言ってやると、パァとひまわりが咲いたみたいな笑顔を見してくれた。
そのあと、お姉さんが何か言ったみたいで、ぽこぽことお姉さんを叩く姿は尊かった。
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