第4話

目の前にくるなにか。

ゲームよりもずっと恐ろしいが緑色で小汚い布切れを腰に巻いている。多分ゴブリンと呼ぶのがふさわしいのかもしれない。


少しの休憩の最中、私はそんなことを考えていた。


多分20体近く倒しただろうか、Levelも3にあがった。

ゴブリンたちはどうやら大通りのそばにある駅から湧いているようだった。

周りにいる奴らは全部倒したが少し間を開けるとまた駅からぴょこっと出てくるのだ。


「さすがに駅入るのは怖い.....けどこのままにして睡眠とかとれないし....いくしかないよねぇ.....」


何回か深呼吸をし、自分を落ち着かせてから駅に足を踏み入れる。


そこには外よりも多い、たくさんの肉塊になった人間の姿があった。


「すこしは慣れたとか思ったけど........なれるわけがない、か......。」


とてつもない匂いがして思わず鼻をふさぐ。

と、目の前にゴブリンがやってきてそんなことはいってられなくなった。

現れてはぶん殴り。向かってきては薙ぎ払い。

もう何体倒しただろうか。


ひっきりなしにやってくるゴブリンたちに嫌気がさし始めた。


「だぁーーーー!!!さすがに多いて!!!!!!とまってくれ!!いや、お願いです!まじで止まってください!!!!」


なんて情けない声だろうと自分でも思うがぶっちゃけもうつらい。

身体も精神もとっくに限界なんて超えていた。


「はぁ、くそっ。てかこの駅こんなに広かったっけ.......???」


多分駅内にはいってから2時間は経過しただろうか。

必死すぎて気づかなかったがふと違和感を覚えた。


「駅に入ってからゴブリンのいるほうへ走ってきたけど、やっぱおかしい......」

 

「もしかして.......駅全体がゲームでいうダンジョンみたいになってる.....??」


そうなると話は別だ。

全部を駆逐する勢いで徘徊していたが、もしダンジョンのようにリポップ式であれば倒したところでまたモンスターが沸いてしまう。


「どうしよう.....無い頭で考えろ~考えろ~~~~~......。」


まぁ簡単にいいアイデアが浮かんだら人間苦労しないもんで。

私は一旦あきらめてこのダンジョンから出ることにした。

駅に踏み入れた場所まで戻り外にでる。

そこには少数の自衛隊や警察が集まっておりすぐさま能力を使い身を隠した。


「どうなってるんだこれは........」

「今日本中で確認できただけでも同じ現象が60件あまり.....」

「一体この世界はどうなっちまったんだ......」


そうだ。

この場所だけが変になっているわけがないじゃないか。

なんでそんなことにも頭がまわらなかったのだろうか。


いやな予感がして私はポケットにいれていたスマホをすぐさまだし画面を開いた。

そこには夥しい量の着信や連絡の履歴があった。


私はすぐにその中に大量にある母親に電話をかけた。


「!!!!!!!あんた無事なの!!!?!?!」


「...........でるの遅くなってごめん。私は大丈夫だよ」


そう告げると母親はどうにか止めていた栓が外れたように泣き出した。

何度かけてもでないからこの不可解な現象に巻き込まれたんじゃないかと。

そして母親がゆうには世界のあちこちにダンジョンのようなものが突如発生し、そこからモンスターが出現し人を襲っている。と。


「実家は無事......????」


「私たちのところにはとくにないから今のところ被害はないわよ。」


「どうやら駅とかテーマパーク、学校みたいな人の一定集まる場所に変なことが起きてるみたいなの.......」


「人の集まる場所.......」


思った以上に事態は深刻だった。

夜19時といえど人の多い場所であれば昼間とそう人口密度はかわらない。

ということは一体何人の人が犠牲になったのだろうか......。


母親には無事を伝え通話は終了した。

他の知り合いから来ていた連絡も返しながら帰路に立つ。



ようやく家につきシャワーを浴びた。

鉄のにおいがこびりついていて何度も何度も体を洗った。

能力のおかげがいくらスポンジでゴシゴシこすっても傷一つつかなかった。


シャワーを浴び服に着替え、私はベッドにダイブした。


疲労からくる眠気がひどかったが私はSNSを開き世界の現状を探った。


[誰でもいい助けてくれ!化け物がそこまできてる!!!!]

[え、もしかしてあれが今世間で騒がれてる化け物ってやつ???]

[友達から返信こないんだけど.......無事だよ、ね??]


阿鼻叫喚。


これほど当てはまる言葉はないのではないだろうか。

いくつもの悲痛な叫びが文面で流れてきた。


とくに千葉にある某テーマパークと大阪にある某テーマパーク。

あそこも被害にあっているらしい。

現状だけでも被害者は数100万にも及ぶ勢いだ。


だが、その中でカードの使い方を理解した人間も現れていた。

私とは違い藁にも縋る思い出カードを確認し、なにも起こらないことに絶望してカードを破り捨てた。

あんな仕組みで気づく方法なんてこんなもんしかないだろう。

みんな必死なんだ。

必死で今を生きるために頑張ってる。

どうにか地獄を止めるべき人々は立ち上がろうとしている。


私は目が覚めたらまた駅のダンジョンに入ることを決意し、意識を手放した。

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