第3話

目の前には人だったであろう肉塊と真っ赤な鮮血。そして人ではないなにか。

耳に聞こえてくるのは劈くような悲鳴と人ではないなにかの声。

鼻には強烈な悪臭と鉄のにおい。

なんだこれは.......。


「た.....すけ、たす.........」

とても弱い力で掴まれた足元にはそう言葉を残し意識を落とした女性がいた。


「っ~~~~~~~」


なにも言えなかった。


目の前のあれはなんだ。


ここはどこだ。


どうしてこんなことになった。



 ‘‘私が非日常を望んだからか...........???‘‘


 

恐怖が体を駆け巡り、足は子羊のように震えてその場から動けなくなった。

嘘だと思いたかった。

夢だと思いたかった。

でも、目が耳が、鼻が。

自分の五感すべてがこれは現実だと伝えてくる。


(いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだっ)


ブンと耳元で音が聞こえた瞬間私は吹っ飛んだ。


「カハッ......!」


何かに頭をぶん殴られ私はビルに激突した。

頭には感じたことないくらいの激痛が走った。

そして下を見れば血が滴っていた。


一体誰の、、、???


目を少し上にあげると得たいの知れないなにかと目があった。


なにかは笑った。


そして全速力でこちらに走ってくるのが見えた。


(やばいやばいやばいやばいやばい...........え、死)


鈍器が目の前まで迫ってきた。

そして私は反射的に何かを蹴り上げた。


「.........へ????」


蹴り上げた足はなにかの顎にクリーンヒットし、なにかは動かなくなった。


「倒した......?」

「この化け物と戦える.........??」


以前恐怖からは脱せていないが少しの希望が見えた気がした。

目の前にはさらに別のなにかがこちらも見ている。


「殺さなければ殺される........」

 

なにかが持ってたバットのようなものを拾いあげ私は走りだした。


「ガギャ、ギャァーーー!!!」

 

「うっ、る.....せぇん!だ、よぉぉぉぉ!!!!!」


叫ぶなにかの頭を狙いバットを振りかざす。

能力を得たときのステータスの影響だろう。

渾身の力で殴ると、なにかはバットにあたると同時に体ごと吹き飛んでいった。

そして次は右から1体、左から2体。

少しだけ短く息を吐く。

そして右からバットが飛んできた瞬間少し高く飛んだ。

すると左から迫ってきていた1体にバットがあたった。

 

(いける.....!!!)


身体を翻しバットが当たり呻いているなにかをぶん殴ると近くにいたもう1体にぶつかり2体とも吹き飛んだ。


ブンっ!!!!!


体勢を整えたであろうもう1体の攻撃が横腹をかすった。


「った~~~~~~~、、、!」


だが抑えている余裕も痛がっている余裕もない。

私は持っているバットに力を込めて頭をねらい振りかざした。


なにかが吹き飛んだその時、2回ほど聞いたレベルアップのようなBGMがまた頭を流れ、無機質な音声が聞こえた。


【レベルアップ】


 「.........レベルアップ????」


 周りを見渡すし少しだけ離れてからステータス画面を開いた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【能力:盗人の本懐】

 能力1:認識阻害

 己の認識をゆがめ他者から把握されなくなる

 己よりもランクが高い能力者には効果が効かない


 能力2:物質掌握

 他者の物を己の物にする

 物質には触れなくても視界に入り認識できれば物質を掌握可能


【能力:戦神の寵愛】

 能力1:能力上昇

 己のレベルアップ時80%の確率で2倍能力値が上昇する


 能力2:戦闘の知恵

 全ての武器が使用可能になる

 また、呪いが付与されている武器も無効化して使用可能


 能力3:健康体

 状態異常無効化

 身体が破損しても時間経過により修復される


 Level:2(+1)

 攻撃:29(+12)

 防御:22(+8)

 知力:16(+6)

 速さ:32(+14)

 俊敏:25(+10)

 器用:17(+6)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「上がってる......!!!!」


なにかを倒したことで経験値がたまったんだろうか。

まだまだそう確定できることはできないが、これで希望が見えた。

最初に殴られた箇所の血は止まった。

【健康体】の能力の効果だろうか。

わからないことは多いいが、私はまたなにかがいる場所に足を踏み入れた。


理由??


そんなの私だってわからない。


本当は英雄になるだれかの能力だったSSランクを盗ってしまったから。

目の前の人に「助けて」と言われたから。


いや、そんな大層なことは考えてない。


多分ここで強くならないと、私は私の大切な人を守ることができないかもしれない。


そう思ってしまったから。

私はたぶん主人公じゃない。

そんな責任は負えない。


でも、それでも。

私は私を守るために。

今後大切な人を守るために。


戦わなくてはいけない。


そう思った。

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