第4話

「なるほどね~。人の血を摂取すると怪物化するんだ……」


 今私は、襲って来た無頼漢たちを皆殺しにして、その躯に座っていた。

 右腕は、関節が一つ増えており、長さが身長程に伸びている。

 そして、指が刃物と化していた。

 変身できているよ。書物の通りだ。訓練すれば、目の器官を作ることも可能そうだ。


「だけど、不味いね。栄養価は高そうだけど、味が好みじゃない」


 感覚で分かる。若い方がいい。

 ここで考える。


(屋敷に籠っていれば、後10年は安泰だよな~)


「ひい!? 化物!? 鬼!?」


 あっ、やっべ。見つかっちまったわ。考え過ぎたね。

 私はその場を後にして、闇夜に消えた。



 次の日から、私の家の捜索が始まった。

 だけど、こんなこともあろうかと地下室を作っていた。防空壕だね。

 出入口の偽装も完璧で見破れないだろう。

 藪医者の資料を筆頭に、金目のモノも退避してある。

 家探ししても、なにも出ないよ?

 そう思っていたら、火をつけやがった。


 これには、いかに温厚な私でも頭に血が上った。


「親から貰った屋敷だったのに……。皆殺しにしてやる」


 私は、夜まで待った。夜になっても、私の捜索隊は、屋敷から離れようとしない。正直、うざい。

 次の朝日が昇る時、私の屋敷跡には大量の死体が積み上がっていた。





 住処を奪われた私は、大事なモノを牛舎に詰めて移動した。問題点は、夜間移動しかできないってことだ。何処かに安住の地はないものだろうか。

 それと、追手が来る……。その度に返り討ちにした。


「生き残りがいると面倒だと思って、全滅させてんだけど、追手を撒けない。どっからか観測してんのかね?」


 都から逃れても、人里から離れても、山中に潜んでも、奴らの追手は私を補足して来た。どんな組織だよ。

 こうなると、私以外に怪物がいるのかもしれない。会ってみるのもいいかもしれないな。


「対人恐怖症の私は、静かに生きたいんだけどな~」


 今日も私は体を変形させて、追手を屠って行く。

 もうね、原型なんて分かんなくなって来たよ。

 だけど、身長3メートルもある巨人に変身してしまった。このくらいでないと、武装した軍には敵わなかったんだ。相手側も学習しているのか、徐々に強さを増して行く。

 だけど、私の相手ではなかった。


「刃物を通さない皮膚。槍よりも長いリーチ。毒を受け付けない血液……。陽の光以外は、無敵なんだけどな~」


 人力で攻撃してくる限り、私の優位は変わらない。


「覚えていろ、化物! いつか必ず、貴様に天誅が落ちるぞ!」


 ――グシャ


 私は、追手の最後の一人を叩き潰した。


「天誅って言われてもね……。売らなきゃ買わないんだけどな~。それと、悪いことをしているとは思っていない。人類に悪影響を及ぼしている覚えはないし、食料にするのも追手だけだ。食料は、不味いけど家畜でもいいし」


 化物って言うか、妖怪が実在すると思われた時代だ。その最たる例が、私になってしまったんだろう。

 人類に仇名すつもりはないんだけど、怖がられているんだな~。

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