第5話

 今私は、燃える都にいた。私の住んでいた、廃墟になった都じゃない。

 疫病が発生したので、遷都した都だ。この都が、この国の中枢になっていた。

 そして、私の追手を指揮した人物と対峙している。


「追手の主犯は、従弟の子供だったのか~。従弟甥になんのかな?」


「くっ、何故こんなことを?」


「もう10年くらいさ、追手を出しているの君じゃない? 今更だよ。流石にウザくてさ~。決着をつけに来ただけだよ。反撃されるとは思ってなかったの?」


「我が一族から出してしまった化物。何時の日か必ずや、一族の者が……」


 ――グシャ


 聞くに堪えないよね。

 私がなにをしたって言うのかな?

 怪物が怖くて、追手を出しているのは君たちだったんだよね。

 まあ、理解はできる。


「人は理解できない存在に恐怖するからね……」


 これで少しは静かに暮らせるかな?





 時代が移って行く。私は、身分を隠しながら人の街に潜むようになっていた。

 木を隠すには、森の中だよね。

 職業は、猟師とした。害獣駆除だね。人の血肉は、手を出さないことにした。

 ちょっと夜中に狩って、朝日が昇る前に肉屋に売りに行く。熊に怯えていた村には、感謝されたりもした。


 追手は、数百年経っても続いていた。

 でもね、こっちも追手を撒く方法くらいは確立させてんだよ。

 たまに強い傭兵が来るけど、逃げちゃえば問題ない。それと、聞いたことがある童話が生まれていた。


「酒呑童子って、私の話になんのかな?」


 退治されたことになってんだけど、どうなってんだ?


 それと戦国時代に突入したみたいだ。

 もうね、人が大量に死にまくっているよ。

 私は頼まれては、国人領主を処して行く。

 そう……、私はとある大名と通じるようになっていた。利害の一致だよね。


「一騎当千の貴殿には、最大級の恩賞を約束しよう」


 そう言ってくれてたけど、信用はできない。私の弱点を知られれば、誰しもが殺しに来るだろうし。

 まあ、持ちつ持たれつだ。

 その戦国大名も途中で討たれちゃったしな~。



 その後、太平の世が待っていた。戦国時代を治めた大名は優秀だったみたいだ。

 まあ実際は、記録に残らない内戦はあったけどね。将軍職を継承する一族が、全員優秀なわけもない。

 私は、一定の禄を貰える立場になっていたので、もうすることもなかった。隠居している状態だ。

 ここで思った。


「私の弱点……、陽の光を克服ってできないのかな~」


 私は、久方ぶりに藪医者の手記を読むことにした。



「特別な彼岸花が、必要っぽいね」


 金をバラ撒いて、国中の彼岸花を集めさせる。

 そして見つけった。


「蒼い彼岸花だよ。本当にあるんだな」


 持って来てくれた、炭焼き屋には、一生働かなくていいほどの金子を与えた。


「さて実験だ。上手く行くかな?」


 量はあったので、実験を繰り返して行く。

 そして分かったのは、人間離れした身体能力や変身できなくなる効果が現れた事だった。彼岸花を使った薬は、怪物化を抑制する薬だったみたいだ。

 だけど、数百年生きたことで私も肉体改造は行っていたんだ。健康な肉体って、これ以上ない幸せだよね。


「お日様の下で歩き回れるようになるか、超人的な肉体の維持かの二択か~」


 彼岸花を使った薬を飲むと、一般人になれる。だけど、怪物と呼ばれる肉体も捨てがたかった。

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