第71話 まだはんぶん……?
「話を戻すぞ。魔属性と属性値は、出来上がるモンに影響を与えるステータスだ。……そして、そういうステータスは、他にも三つある」
おじさんは左手の残りの指を折り曲げながら、その三つの説明に入る。
「その三つは、素材評価、素材特性、硬度……の、三つだ」
「評価に、硬度……」
素材特性の話はデラキナにもされたのである程度把握しているが、残りの二つは当然初耳だ。
「まずは、素材評価。こいつは、素材自体の状態の良し悪しを示すステータスだ」
「じゃあ、さっきの『サンダードラゴンの鱗』が粗悪品だといったのは、その素材評価が低いからってことですか?」
「それもある。……が、一番大事なのはそこではない」
「そうなんですね」
「ああ。それについては、後ほど説明しよう」
おじさんは私が少し逸らしてしまった話を戻すために咳払いをすると、素材評価の説明を再開した。
「素材評価は、出来上がるモンの評価……つまり、ランクに影響を及ぼす」
「ランクが違うと、違う装備品になるんですか?」
「いや……ランクが違くとも、出来上がるモン自体が変わることはない。……だが、その性能には大きな差が生まれる」
「じゃあ、素材評価が低いとどうしようもない……ってことですか?」
「それも、違う。メイン素材の評価は、もちろん大事だ。だが、評価の高い素材アイテムを混ぜれば、ある程度は底上げできる」
「底上げ、ですか?」
「ああ。素材評価は、素材アイテムごとに1から100の間で決まっている。そして、素材アイテムを混ぜると……素材評価が、メインと混ぜたモン3:1の比重で混ざり合う」
「3:1……」
ということは、計算式にすると{(メインの素材アイテムの素材評価)*3+(混ぜた素材アイテムの素材評価)}/4が混ぜた後の素材評価になる。
つまり、例えばメインの素材アイテムの素材評価が50だとして、そこに素材評価が90の素材アイテムを混ぜれば、(50*3+90)/4で60に上がるというわけだ。
もう少し簡単に言えば、差分を1/4にしてメインの素材アイテムの素材評価に足し引きするのでも良い。先程の例で言えば、50と90の差の40を1/4して10。そしてその10を、混ぜた素材アイテムの素材評価の方が高いのでメインの素材アイテムの素材評価に足し合わせて、60ということになる。
「ランクは、80以上がAランクとなる。それは、80でも100でも差がないということだ。メインの素材評価が低くとも、高いモンを繰り返し混ぜれば無理やりランクを押し上げることもできる」
「なるほど」
たしかにそれならば、素材評価が低いということは粗悪品と呼ばれる理由足り得るが、それだけで素人の私に粗悪品だからと『サンダードラゴンの鱗』なんてすごそうな素材アイテムをポンと渡す理由とまではいかないことになる。
もちろん、60と90を混ぜても50の時とは違って7.5しか上がらないので、80というのは元の値が低すぎるとかなり遠い壁ではあるのだが。
「次に、素材特性……これは、お前も知っているんだったか」
「簡単に話を聞いただけなので、できれば説明をしてほしいです」
「そうか。……だが、これに関してはあまり説明することもない」
「……そうなんですか?」
「ああ。説明することがあるとしたら、素材特性の種類くらいだ」
そういうと、おじさんはまだ使っていない右手の指を二本立てた状態で私に見せてきた。
「素材特性には、二種類ある。一つは、出来上がるモンに効果を上乗せする素材特性。もう一つは、混ぜた時に効果を発揮する素材特性だ」
おじさんが、二本立てた状態から指を一本折り曲げる。
「一つ目は、文字通りの意味だ。例えば、「物理攻撃ダメージ+5%」という素材特性なら、出来上がった武器にその効果の一部を付与できる。その程度かは運次第だが、この場合大抵は1%か2%くらいに下がる」
「運次第……」
それが説明で使っただけの言葉なのか、システム的な意味を持った言葉なのかで、結構話が変わってくる。
つまり、その運というのが、リアルラックの話なのか、LUC値の話なのか、ということだ。
……いや、私の場合はどちらにせよ高いから、あまり深掘りはしなくていいかな。
「二つ目も、同様の意味だ。例えば、「素材評価+10」という効果なら、それを混ぜた段階で素材評価を10加算する。こちらは、効果の値は固定だ」
「……そういうものもあるんですね」
調合の方もそういう感じなのだろうか。
調合の方では素材特性を持てる数が基液次第で固定だったはずなので、後者の素材特性の場合その枠を消費するものなのかどうか気になるところだ。
……そういえば。
「鍛冶では、その素材特性は何個でもつけることができるんですか?調合だと、数が決まっているらしくて」
「そうなのか。……鍛冶では、素材特性の数に制限はない。素材特性という意味では、他の素材アイテムを混ぜれば混ぜるほど、出来上がるモンは強くなる」
「おー……」
思わず感嘆の声が漏れてしまう。
どれだけ他の素材アイテムを混ぜられるかというところが、鍛冶師の腕の見せ所であり、面白いところでもあるのだろう。
しかし、それは当然無制限にできることではないはずだ。おじさんの言い方から考えて残りの五つのステータスは鍛冶の最中に影響があるステータスということになるので、その中にその限度を決めるステータスがあるに違いない。
とはいえ、今は残る硬度の話だ。これもまた、響きからしてかなり重要なステータスなのだろう。
「最後に、硬度。これは、出来上がるモンの強さにそのまま影響を及ぼす」
「強さ……」
「抽象的な言い方にはなるが、強さだ。明確な影響は、誰にも分らん。高ければ高いほど良いというわけでもない」
「難しい話ですね」
「ああ。だが、俺はある程度の法則性を知っている。完璧な理論ではないが、いずれはお前にも伝授しよう」
「ありがとうございます」
やっぱり、このおじさんは凄いおじさんだったようだ。
ラッキー……なのかな。なんか、メリアがこのおじさんに弟子入りする条件に影響を与えて弟子入り出来たって感じがするし、色々な偶然が重なった結果、腕を上げてからじゃなきゃ関われないNPCに関われてるみたいな……まあ、つまるところやっぱりラッキーってことかな。
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