第67話 べにいものきょうか



 コットンに乗ってアザッレの街へと移動を開始した私は、ひとまずメノから届いていたメッセージを確認することにした。


 ≪meno:ネットで話題になっていました≫

 ≪meno:あの後ユニークボスをテイムしたとか≫

 ≪meno:レベルもまた上がってますね≫


 話を聞きたそうでうずうずしている感じが伝わってくる。

 とはいえ、あの話をメッセージでやり取りをするのは面倒だ。


 ≪ゆきひめ:また今度会った時に話しましょう≫

 ≪meno:わかりました≫


 返信はやっ。

 なんて思っていたら、今度はエリーナからメッセージが届いてきた。


 ≪エリーナ:おはようございます。私は本日十七時ごろまでのログインを予定しているのですが、その間にお時間はありますでしょうか?≫


 狩りのお誘いかな?

 それにしても十七時までで終わりとはとても規則の正しい生活を送っていそうだ。昨日は私が二十一時ごろにインしてから一度もインしてなかったし。


 ≪ゆきひめ:大丈夫です。今アザッレの街を目指しているのですが、エリーナさんはどの辺りにいますか?≫

 ≪エリーナ:アザッレの街周辺のマップデータを集めているところです≫

 ≪ゆきひめ:それなら、十五時くらいからでどうですか?≫

 ≪エリーナ:承知いたしました。それから、メノの方を連れてきてもよろしいでしょうか?≫

 ≪ゆきひめ:もちろんです≫

 ≪エリーナ:ありがとうございます。それでは十五時にメノを連れてアザッレの街の前でお待ちしております≫


 十七時までなら、ソワンとバッティングすることもないだろう。

 どうやらソワンは騎乗ペットを使用する様子がなかったし、徒歩ならばここまで六時間ほどはかかるはずだ。

 ちょっとギリギリな感じもあるけど。


「それじゃあ次はステータスポイントを……あ、そういえば」


 メリアをテイムしてレベルが上がったわけだが、その際にべにいもを召喚していたはずだ。

 それなら経験値の二割はべにいも渡っているわけで……


「お、レベルが11になってる」

「ぷ?」


 レベル6だったはずだから、5上がったのかな。

 もしくは、実はストーンリザード狩りの時にすでに7まで上がっていたという可能性もあるが、どちらにせよステータスポイントは10あるわけだ。


 それに、スキルも解放されている。

 べにいもの固有スキルは強力とは言い難いし、こちらは何かスキルを取っておいてもいいだろう。


 サクッとべにいもの強化を済ませてしまおうと思い、べにいものステータスを確認する。


 ≪STR2(2+0)≫

 ≪INT6(4+2)≫

 ≪VIT5(4+1)≫

 ≪DEX3(3+0)≫

 ≪AGI1(1+0)≫

 ≪LUC8(4+4)≫


「ふむ」


 低い……低すぎない?

 それとも、私の感覚がおかしいのかな。

 可愛さとかないの?そしたら300くらいあると思うんだけど。


「ぷぎぎ……」


 ほら、なでてあげるとこんなに可愛い顔でとろけるんだよ?

 なんて冗談はともかく。


「真面目に考えるなら、今のところ私もどどもメリアもSTRが実質的にないようなものだから、STRかな?」

「ぷー?」

「STRを上げて物理攻撃と荷物運び……でも、それはコットンで事足りそうだよね。そこまで考えたら、VITを上げて盾役をしてもらうとか?」

「ぷぎっ?」


 どちらにせよ、真面目に運用を考えるならその二択だろう。

 他のステータスに振るのは……まあ、なしとまでは言わないけど。


「べにいもはどうしたい?」

「ぷ……」


 当然伝わらないが、めげずに話しかけていこう。


「べにいもは、戦いたい……か、守りたい……の、どっち?」


 パンチやガードのジェスチャーを交えて説明してみたが、そもそもべにいもの中にパンチやガードという概念はあるのだろうか。手足ないし。


「ぷっ……ぷ!」


 ぼよんぼよんと体を揺らすべにいも。

 だめだ、べにいものジェスチャーの意味がわからない……


「戦いたい?」


 パンチする仕草をしながら問う。


「ぷぎぎ……」


 あまりいい反応ではないな。


「それじゃあ、守りたい?」


 ガードする仕草をしながら問う。


「ぷぎぎ……」


 どっちでもないんかい!


「もー、それじゃ全然わかんないよー!」

「ぷぎぎーっ」


 わしゃわしゃとべにいもの体を揺さぶると、べにいもがご機嫌な声を上げる。楽しそうで何よりだ。


 結局べにいもの言いたいことはよくわからなかったので、とりあえずSTRとVITに5ポイントずつ割り振っておくことにした。


 ≪STRにステータスポイントを5割り振ると、STR2(2+0)→STR7(7+0)となります。よろしいですか?≫

 ≪VITにステータスポイントを5割り振ると、VIT5(4+1)→VIT10(9+1)となります。よろしいですか?≫


 順当に5ずつ増えました。

 一応全部表記しておくと、こんな感じになる。


 ≪STR7(7+0)≫

 ≪INT6(4+2)≫

 ≪VIT10(9+1)≫

 ≪DEX3(3+0)≫

 ≪AGI1(1+0)≫

 ≪LUC8(4+4)≫


 この感じだと、べにいもの補正には基礎値の倍率は含まれてなさそうだ。どどやコットンはプラス値のキリが良いので固定値だと思うが、メリアは私のように基礎値の倍率がかかっているように思われる。テイムモンスターによって、その辺りは様々なのだろう。

 それか、メリアのようなユニークボスだけが特別という説もあるけど。


「次はスキル……って、なんか少ないね」


 テイムモンスターによって取得できるスキルに制限があるのか、べにいもが取得可能なスキルはプレイヤーに比べて二十分の一もないくらいだった。しかし、中には明らかにスライム限定のスキルなんかもあるので、一概に下位互換とは言えなさそうだ。

 その中で、物理攻撃スキルかガードスキル、バフスキルみたいな支援系のスキルを取ろうと思うと……


「『ポイズンタックル』、『跳ね返し』、『スライムソング』……あたりかな?」


『ポイズンタックル』以外は効果が読めないスキルだが、それほど変なスキルではない……はずだ。

 しかし、まだスキルポイントが8しかないので全部は取得できない。取得に必要なポイントは、それぞれ3、4、5だ。


「『スライムソング』が気になるし、それと『ポイズンタックル』でいいかな」


 効果のほどはともかく、べにいもが歌うところを見てみたいという一心でそう決定する。

 だって、べにいものお歌だよ?


 ≪スキルポイントを5使用して、スキル:スライムソング を取得します。よろしいですか?≫

 ≪スキルポイントを3使用して、スキル:ポイズンタックル を取得します。よろしいですか?≫


 よし、これでべにいもの強化は終わりかな。

 ちなみに、『スライムソング』は強化画面で範囲味方回復スキルと表記されていた。はやくべにいものお歌に癒されたい。


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