第62話 なぞのちかつうろ
「んー……」
ボス部屋を出た私は、コットンの上から遺跡の様子を眺めていた。
しかしどこに大きなものを隠せるような場所はなく、モンスターも蔓延っているので、途方に暮れてしまう。
遺跡の中なら、どこかそう言うような場所があると思ったのだが。
「どど、この遺跡の中に隠し部屋みたいなところはないの?」
「キキ?」
「こう……これを、隠せる……部屋、みたいな」
ジェスチャーでなんとか意思を伝えようと、身振り手振りを交えながらどどに語りかける。
何度かパターンを変えながら試してみたところ、地下に降りるような仕草をしたところで、どどが初めて反応を示した。
「ケケッ!」
「こっち?」
どどが指し示す方へ向けて、コットンを飛ばす。
と思ったらどどの指示でコットンが急に止まり、どどは何やら魔法の準備をし始めた。
「え、ちょっと……何するの?」
「キケケケケッ」
「ぷぎー!」
困惑する私を他所に、胸を張る仕草を見せるどどと興奮した様子のべにいも。
私はべにいもを静めるようにギュッと抱きしめると、どどの様子を固唾を飲んで見守った。
「キケケ……キケーッ!」
ズガーンという爆音とともに、大地に裂け目ができる。
するとその地下には何やら道のようなものが続いており、コットンがそこを目指して急降下する。
「え、ちょっと、これって、私には……ぶっ!」
「ケ?」
「ぷ?」
見えない壁に阻まれて、私だけが地下に入れずに身体を見えない壁に叩きつけられる。
残りのコットン、べにいも、どど、メリア、そして持ち出した家具たちはそのままするりと地下の道へと入っていって、そのまま地面が元に戻ってしまった。
(うぅ……痛かった……けど、ダメージは受けてないのかな)
痛覚設定が10%でも、今のは結構衝撃が来た。
どうやら、私にフィールド攻撃が効かないというのは確定的なようだ。もはや攻撃の意図を持っていなかった先ほどのどどのような使い方ですら、私には弾かれてしまうらしい。
(まさか、こんな形ではぐれちゃうとはね……)
コットンは戻してから再召喚すればこの場に出せるが、テイムモンスター組の三匹はそうもいかない。
家具に関してはどうしようもないが、コットンとどどに協力してもらえれば地下に置いてきてしまっても回収は可能だろう。
(そもそも、あの地下って安全なのかな?どどがあの地下通路を知ってたのは……どどもここで暮らしてたから?)
だとすると、あの地下通路に繋がる道も知っているのだろうか。それならそっちを案内してくれれば済む話だが……
(とりあえず、『地割れ』のクールタイムが終わったらまた帰ってくるのかな?ここで待ってた方が安全……だよね)
周辺のモンスターは先ほどの『地割れ』で倒されたようで、辺りは静寂に包まれている。
どどたちの帰りを待ちつつ、先にべにいものごはんを用意しておこうかな。毒泥が入った小瓶はいくつか用意しておくとして、その辺に生えている草花も採取しておこう。
そんな感じで五分ほどごはん集めに勤しんでいると、突然轟音を鳴らしながら足元の地面が裂けていった。
「お」
「キキーッ!」
「ぷぎーっ!」
当然のように宙に浮く私と、地下から浮き上がって帰ってくるみんな。
コットンの上には、まだ家具たちが置かれているままだった。
「キキ……」
「大丈夫大丈夫。ありがとね」
私の元までやってきて申し訳なさそうにするどどを、安心させるようになでまわす。
そして、地下の安全性を確認すべく今度はコットンに話しかけた。
「コットン、地下にモンスターはいなかった?」
「(大きな丸の形)」
「それじゃあ、またどどと行ってきて家具を隠してきてもらうことはできる?」
「(サムズアップの形)」
よし、家具のこともなんとかなりそうだ。
にしても、あんな地下通路……普通にこの森の中で暮らしていただけなら、必要ないと思うんだけど。
「そうだ。どど、あの地下に続く道がどこにあるのかはわからない?」
「キキー?」
「こう、地下に、降りる……道」
「ケ?」
うーん……上手く伝わらないのか、それとも知らないのか。何度か試してみるも、どどが反応を示すことはなかった。
仕方ないので、家具のことは『地割れ』とコットンのコンボで強引に解決するとしよう。
最後は、べにいもとどどのごはんのことかな。
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