第46話 もくひょう



「さて、と」


 コットンの上で、ステータス画面を操作する。

 スキルポイントは29に増えているが、今のところこれといった欲しいスキルはない。

 メノに相談してみようかな。


 ≪ゆきひめ:メノさんはどういうスキルを取っていますか?≫


 質問をすると、すぐさま返事が返ってくる。

 なんだかそういうAIと会話をしている気分だ。


 ≪meno:クラッシュの派生スキルとその派生スキルを取りました≫

 ≪ゆきひめ:派生スキルって必要ポイント多くないですか?≫

 ≪meno:はい≫

 ≪meno:三段目のスキルは8ポイントかかりました≫

 ≪meno:でもその分強いですよ≫

 ≪meno:それに≫

 ≪meno:どうせいずれはそういうスキルしか使わなくなるので≫


 そういうものなのか。


 ≪ゆきひめ:ありがとうございます≫

 ≪meno:大丈夫です≫


 さて、改めてスキルを確認していこう。

 メノはああ言っていたが、むしろああ言っていったからこそ氷双弾を取るのは憚られる。

 私は別に氷魔法を極めていきたいわけじゃないし、必要ポイントが跳ね上がっていくならむしろそこは慎重にならなければいけないところだ。


 幸いなのは、調合スキルに派生スキルがないことだろうか。

 スキルポイントはレベルアップで手に入るものなので、非戦闘系スキルは基本的に一段目で且つ一律2ポイントで取れるようだ。ポイントをある程度温存しておけば、何かがやりたくなった時にもすぐに手を出すことができる。


「んー……」


 改めて、今後のことを考えてみる。

 一旦非戦闘系のことは置いておいて、戦闘面でのことだ。

 ステータス的にはLUCとDEXを伸ばしており、戦闘系スキルを獲得するならここら辺が重要となってきそうなスキルを取るのが効率良いはずだ。


 VCSでは様々なスキルが用意されており、それらを全部覚えるだけでもこの量を暗記するなら何かの資格が取れるんじゃないかと思えるくらい大変だ。

 というか、一段階目でもロックされていて解放条件が設定されているものもあり、それらの名前は伏せられている。解放条件である程度どんなスキルかは予想はできるものの、その解放作業だけでもかなり大変そうだ。

 しかも各スキルの詳細な効果は記載がないので、実験を重ねて確かめるしかない。

 攻略記事を書いているような人は、さぞ大変な思いをしているのだろう。尤も、そういうことをしている人はそれが好きでやっている人が大半なのだろうが。


 なんて思いながら、めぼしいスキルをピックアップしていく。

 特に、LUCが関わってきそうなスキルは要注目だ。

 そして、軽く途中までスキル一覧を眺めた私の目に留まったスキルが、これらとなる。


 ・よくわからないけど役に立ちそうなスキル『鼓舞』『癒しの歌』『バリア』『聖域』

 ・DEXが関係しそうなスキル『スティール』『トラップ』『惑わす』

 ・LUCが関係しそうなスキル『ラッキーパンチ』『ギャンブルボム』『回避』


 それと、『怪異』というスキルも目に留まった。

 まあ、メンバーが藁人形に一反木綿だからね。なんかこっち系には目が行っちゃうよね。


 それで、問題はこれらのスキルがどう進化していくのかという話だ。

 私がピックアップしたスキルはどれも派生先があるスキルだが、一段階目取得前ではそこからいくつの二段階目に派生するかというところまでしかわからない。そしてその派生先のスキルは、当然???で詳細非表示となっている。


(うーん……29ポイントもあるから、少しは遊び心を出していってもいいかな)


 ≪スキルポイントを3使用して、スキル:怪異 を取得します。よろしいですか?≫


 というわけで、まずは『怪異』を取得してみた。

 どんなスキルか想像がつかない上での3ポイントと考えたら、少しお高い買い物だ。

 ……なんて思っていると。


 ≪妖怪系の騎乗ペット/テイムモンスターを入手済みのため、お化け屋敷がアンロックされました≫

 ≪呪物系の騎乗ペット/テイムモンスターを入手済みのため、呪言がアンロックされました≫


「おー」

「ぷぎ?」


 私の感嘆の声にべにいもが反応する。

「なんでもないよー」なんて言いながらべにいもをなでてやり、改めて意識をスキルの方に戻す。


 どうやら、派生スキルの解放条件はスキルレベルを上げることだけではないようだ。

 そしてどちらも三段階目へと続いているようで、取得に必要なポイントは『お化け屋敷』が10・『呪言』が5となっている。

 メノは三段階目で8と言っていたので、『お化け屋敷』はかなり割高なスキルだ。しかも、そこからの派生先が一つしかない。


「……」


 ≪スキルポイントを10使用して、スキル:お化け屋敷 を取得します。よろしいですか?≫


 いや、まだ表示させただけだよ?

 まだ押してない。押してないけど……10かぁ。


 派生先のスキルはどんななんだろう。

 お化け屋敷の進化……いや、まずお化け屋敷ってどんなスキルなの?

 まさか、テイムモンスター/騎乗ペットを使ってお化け屋敷を開店してお金を稼ぐとかじゃないよね?

 謎の10ポイントとかいう割高なのも気になるし、まさかのそっち系という可能性も考えられなくはない。


(いや……あえてここを行くっ!)


 勢いだけではいを選択する。

 これはきっと、一反木綿と出会えた縁が招いてきたスキルだ。

 そして取得したお化け屋敷から、次の派生先の解放条件を見てみる。


 ≪それぞれ異なるレベル10以上の鬼系/妖怪系のペット/テイムモンスターを十匹以上入手状態にする ※このスキルを取得後にペット/テイムモンスターを手放して条件を満たせなくなった場合、このスキルは一時的に使用不可になります≫


 きっつい条件だ。

 結局テイムの条件ははっきりしていないし、鬼系/妖怪系なら呪物系のどどは含まれないということになる。

 それに、騎乗ペットは移動することでレベルが上がると言っていたし、入手数は限られている。実質的にテイムモンスターで条件を満たしていかなければならなく、しかもそれぞれ異なるという条件が付けられているとなると、なかなか骨が折れそうだ。


 しかし、鬼系/妖怪系か。

 それに、レベル10以上が十匹。

 明らかに百鬼夜行のことだよね、これ。テイムモンスター/騎乗ペットは仕様的にも現実的にも百匹管理するのは不可能だし、百という数字は無理やり合わせてきた感はあるけど。


 せっかく取得したのだし、一応このスキルの解放を目指していこうかな。

 さて、残った16ポイントで狩りに貢献できそうなものも取得しないとね。


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