第41話 りあるらっくでかいけつしました
まさか、ボスモンスターもテイムできるということなのだろうか。
しかし、確かに思い返してみれば、べにいもと同様に途中から私に対する反応が変わっていた。具体的に大きな変化があったのは、やーめたの辺りからだ。
モンスターの行動に変化が生まれるのが、テイム可能の合図ということだろうか。
いや、今はそんなことよりも、どうカースドドールをテイムするかという話だ。
べにいもの時は、たしか泥を摂取させたんだったか。今も足元に泥はあるが、藁人形に泥を飲めというのはなんだか違う気がする。
「んー」
しかし、ボスモンスターのテイムか。多分、とんでもなくレアなのだろう。
まあ、レアなものに恵まれるのは慣れていることなのだが。
「あ」
何かを食べさせるという路線で考えていた時、ふと私の中であるアイテムが思い浮かんだ。
それは、毒蜥蜴の卵だ。せっかく手に入れたものだから孵化させたいという気持ちもあるが、手元にあるものでは唯一食べ物とといえるものである。
(でも、これで失敗したらショックだなあ)
私の足元は泥の沼なので、まともに移動することができない。
なので、こちらをじっと見つめるカースドドールに近づくことすらままならく、毒蜥蜴の卵を投げつけて食べさせる必要がある。
それ以前にも、そもそもカースドドールは何かを食べるのか。何かを食べるとして、毒蜥蜴の卵は食べられるのか。毒蜥蜴の卵を食べったとして、投げつけただけで食べてくれるのか。食べてくれたところで、テイムの条件を満たすことはできるのか。といった不安要素も尽きない。
それに、もし失敗したらこの卵は潰れてなくなってしまうだろう。まあ、それに関しては欲しくなった時にまた探せば見つかると思うけど。
「……」
「ケケケ」
まずは、卵を見せて相手の反応を窺ってみる。
無反応というわけではなかったが、特に興味を示すようん反応もなかった。
(まあ、そうだよね。藁人形が何かを食べるとも思えないし)
それでも、可能性を感じることは全部試していきたい。
というか、テイムを成功させないと永遠にここから出られなくなってしまう。
「……ほっ!」
「キキ……」
投げる直前に少し躊躇ったものの、そんな気持ちを押し殺して卵を投げつける。
卵の軌道は悪くないが、カースドドールに届いたとして果たしてカースドドールは卵を食べてくれるのか。
ごくりと唾を飲み込む。
時の流れが遅く感じられる。
卵がゆっくりとカースドドールへと近づいていき、やがて目の前まで到達する。
しかし、元からコントロールに自信があるというわけでもなく、その手のステータスと思えるDEXもまだ1だ。更には足元もおぼつかない状態となると正確に投げられる道理もなく、卵はカースドドールの目の前で力なく落下し始める。
「あ……や、いけるっ!」
落ちてはいくが、突然九十度曲がって真っ逆さまに落ちたというわけではない。
頭の部分を通過し、胸の部分も通過していくが、この軌道ならばなんとか足の先くらいには当たってもおかしくはない。
「いっ……た!」
なんとかギリギリのところで、卵がカースドドールの左足の部分に当たる。
すると、どんな力が加わっているのかはわからないが、卵はぴたりとその動きを止めた。
「キキケケケケッ」
カースドドールの笑い声と共に、ずももももと卵が藁の中に吸い込まれていく。
これは、食べてくれたという認識で合ってい───
≪カースドドールのテイムに成功しました≫
≪レベルが14になりました≫
≪レベルが15になりました≫
≪機能:騎乗ペット が解放されました≫
≪レベルが16になりました≫
≪レベルが17になりました≫
≪レベルが18になりました≫
≪レベルが19になりました≫
≪称号:大将 を獲得しました≫
≪称号:ボス討伐 を獲得しました≫
≪レベルが20になりました≫
≪称号:英雄 を獲得しました≫
≪レベルが21になりました≫
≪レベルが22になりました≫
≪称号:伝説のプレイヤー を獲得しました≫
≪レベルが23になりました≫
≪機能:出店 が解放されました≫
「あっ」
ゲーム壊れちゃった。
というか、視界が通知で埋め尽くされてちょっと鬱陶しい。
あと、テイムが成功した瞬間に何やら鐘の音が鳴り響き、このゲームを始めた時に聞いたアナウンスの声も聞こえてきている。
そのアナウンスの内容は、こんなものだ。
≪ゆきひめ により、イレギュラーボス『カースドドール』が撃破されました。これにより、双翼の森に発生していた異常事態が収束し、一部生態が元に戻ります。双翼の森に滞在するプレイヤーは、一分後に近くの街へ自動転送されます。繰り返します───≫
めちゃくちゃ思いっきり公式的に名前を晒された件について。
と、それもそうだが、他に気になることもある。
(イレギュラーボス)
だから、赤い光ではなく青白い光だったのだろうか。
異常事態というのは、明らかにあのおびただしい数のポイズンマジシャンのことだろう。あれはあの遺跡の何かではなく、たまたま遺跡の中に発生しただけの異常事態とやらだったらしい。
ボス部屋の中はいつの間にか最初の台座がポツンとある空間に戻っており、台座のあるところの床が青白く光り輝いていた。
あそこに座れば、元の場所に戻るのだろう。しかし、アナウンスで双翼の森にいるプレイヤーは街に自動転送されるということを言っていた。
歩いて帰るのは面倒なので転送されるのは有難いという気持ちもあるが、おそらくこのアナウンスは少なくとも双翼の森にいるプレイヤー全員には聞こえているはずだ。だとすると、彼らと共に街に戻されるのは面倒なっことになりそうな気がする。
なんて思っていると、メノからメッセージが送られてきた。
≪meno:ゆきひめさん≫
≪meno:ワールドアナウンスが流れてます≫
≪ゆきひめ:ワールド?≫
≪meno:全プレイヤーに聞こえるアナウンスです≫
あらら。双翼の森にいるプレイヤーどころか全プレイヤーだったらしい。
≪meno:街に戻ってきますか?≫
≪ゆきひめ:いえ、面倒事になりそうなので、しばらくボス部屋に残ろうかと≫
≪meno:そうした方が良いと思います≫
目立ちたがりのメノでも、そこの判断は私と同じらしい。
≪meno:レベルがおかしくなってませんか?≫
うーん。
イレギュラーボスとやらをテイムしたというのは、話してしまってもいいことなのだろうか。
≪ゆきひめ:ボスを倒したら上がりました。あと称号で色々と≫
悩んで返信が遅れても怪しまれるかもしれないので、咄嗟にそう嘘をついた。
いや、アナウンスでも撃破されたと言っていたし、嘘ではないか。公式的にはテイムも撃破の内の一種らしいし。
≪meno:何か機能とかは解放されましたか?≫
≪ゆきひめ:騎乗ペットと出店というのが解放されました≫
まあ、このくらいは問題ないだろう。
≪meno:騎乗ペットは聞いたことあります≫
≪meno:というか≫
≪meno:たしか今最高レベルのプレイヤーが18と言われているのですが≫
≪meno:あ≫
≪meno:10レベの時は普通ボーナスが乗って5もらえるらしいです≫
……。
まあ、間違いなく私が一番になったってことだよね、これ。
10の時のボーナスに関してはもう触れない方が良い気がする。
≪ゆきひめ:もう名前を晒されてしまったので、私のことは好きに話していただいても構いません≫
≪meno:いいんですか?≫
≪ゆきひめ:ですが、メノさんから私への繋がりがあると知られるとそちらも面倒な事になると思うので、気を付けてください≫
人から変な注目を浴びるのは、宝くじの件で慣れている。
そしてその際に、色々と紗音に迷惑をかけてしまったことも良く覚えている。私は得たものがあったので仕方ないと受け入れることもできたが、完全に巻き込まれただけの紗音には本当に申し訳なかった。
≪meno:わかりました≫
≪meno:また明日色々と聞かせてください≫
≪ゆきひめ:はい≫
さて。
メノとのメッセージも終わったので、ボス部屋に入った時の称号とかも含めて色々と確認していこう。
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