第34話 ぽいずんまじしゃんとのげきとう
「ぷ……ぷぎっ!」
「べに!?」
今までは何もしていなかったのに、この窮地になって突然私の『アイススピア』と一緒になって毒弾を放つべにいも。
ピンチに現れたヒーローだと思えばいいのか、ずっとサボってた怠け者だと思えばいいのか、判断に困る参戦だ。
「べにいもちゃんナイス!」
「ぷ?」
エリーナの言葉を理解しているのかいないのか、べにいもは私の腕の中でぷるぷると振動する。
しかしすぐさま大人しくなると、今度はうとうとと目を瞑り始めた。
「おねむみたいです」
「さっきので力を使い果たしたのかしら」
テイムする前と比べて弱くなり過ぎではないだろうか。
なんて、今はべにいもに構っている場合ではない。
べにいものおかげで前のポイズンマジシャンを倒し、左のポイズンマジシャンもメノが無事に撃破。後ろのポイズンスライムもサクッとエリーナが倒したようだが、それでもまだまだ敵はいる。
「ポーション飲みます!」
「おっけ!右のはもう間に合わないと思うからメノは左の方狙って!スタン中はカバーする!」
「はい!」
エリーナが前線へと向かいながら改めて『ソウルショック』の準備をする間に、メノは器用にHP回復ポーションを飲みながらステッキに持ち替えて左の奥から来ているポイズンマジシャンに向かって『ホーリービーム』を放つ準備をした。
ちなみにメノがターゲットを取る時にせっかく取得したヘイトスキルの『咆哮』を使わないのは、ここで使うには範囲が広くてまだこちらに攻撃をしようとしていない相手まで巻き込んでヘイトを取ってしまうからだ。
「……うぇ」
MP回復ポーションなのだが、なんかケミカルな味がして私はあまり好みではない。
飲めない程ではないし、こういうのが好きだという人がいるのも理解している。だが、私は苦手なので戦闘中に飲むのに少し躊躇いが生まれてしまうから、もっと違う味のポーションとかが欲しい。というか、自分で作れたりするのかな、そういうのって。
なんて思いながら、MP回復ポーションを飲みこむ。
「ちょっ、エリーナさん、あれ!」
「うわ……でも、とりあえず左右の二匹を何とかしてからかな」
メノが示す先には、前方から来るポイズンマジシャンの影が三つ。
同時に三体なんて、とてもじゃないが今の私たちには処理しきれない。
なんて言っている間に、右のポイズンマジシャンが範囲魔法を放つ。
ちなみに、この魔法はまだスキルをアンロックした人がいないのでどんな名称なのかわかっていないらしい。
「ぎゃーっ!」
再び悲鳴を上げながら魔法をくらうメノ。
果たしてあれは、雰囲気で叫んでいるのか痛覚設定的にちゃんと痛くて叫んでいるのかどちらなのだろうか。
しかしメノはなんとか魔法の発動を間に合わせていたようで、叫び声をあげながらも飛んで行った光のレーザーが左のポイズンマジシャンに命中する。
魔法は発動から発射までの時間に若干のタイムラグがあるので、ポイズンマジシャンの魔法発動→メノの魔法発動→ポイズンマジシャンの魔法発射→メノが被弾→メノの魔法発射という流れが刹那の間に行われたというわけだ。
そしてそれに少し遅れて、エリーナの『ソウルショック』が左のポイズンマジシャンに命中した。
「ゆきひめちゃんは左にとどめを!」
「はい!」
メノとエリーナの魔法を集中放火されて死にかけのポイズンマジシャンに向かって『アイススピア』を構える。
エリーナはメノを庇うようにメノと右のポイズンマジシャンの間に入り込み、剣を抜く。
「てーいっ!」
「はっ!」
私が左のポイズンマジシャンを撃破すると同時に、エリーナが右のポイズンマジシャンを斬りつける。
「右からもう一体来てる!」
「左は倒しました!」
「メノは!?」
エリーナが振り返るが、メノはまだスタン中だ。
そして、前からやってきていたポイズンマジシャン三匹が二人を捉え、全員がほぼ同時に魔法の準備に入る。
「うへぇ……これは詰みかなぁ」
エリーナが諦めの声を上げると同時に、メノがスタンから解放される。
「右のやつだけでも倒しちゃいましょう!経験値がっ!」
「じゃあ前の三匹よろしく!」
「えっ」
右のポイズンマジシャンに攻撃してターゲットを奪ったエリーナが、そのまま右に離れてメノから距離を取る。
前方の三匹は二匹がメノ、もう一匹がエリーナを狙っていたようで、一匹がエリーナに合わせて移動を開始した。
「あーっ!こうすればいいんでしょー!」
半ばやけくそに叫びながら、メノがそのポイズンマジシャンに突っ込んで槍で突き刺した。
すると、魔法をキャンセルされたそのポイズンマジシャンが、今度はメノに狙いを定める。そしてそれと同時に、残りの二匹が魔法を放った。
「ぎゃーっ!」
叫ぶメノ。
ちなみにメノもエリーナもSTRは低めなので、物理防御力の方が低いと思われるポイズンマジシャンに対してもメインの火力は魔法攻撃で物理攻撃はほとんどターゲットを取るためのものだ。
「ゆきひめちゃん!」
「はい!」
エリーナが攻撃を繰り返し魔法が封じられてるポイズンマジシャンに対して、私が『アイススピア』を放つ。
だいたいポイズンマジシャンの撃破ラインは私たちが一発ずつ魔法を当てる、もしくは二発+メノの物理攻撃数回といった感じだ。
メノとエリーナの物理攻撃力の差がわからないので何とも言えないダメージ感覚だったが、最初のメノの『ホーリービーム』とエリーナの物理攻撃を何度か受けていた右のポイズンマジシャンは、私の『アイススピア』でなんとか倒しきることができた。
「くっ……さすがに!」
直後、メノを救うべくエリーナがワンテンポ魔法の発動が遅れたポイズンマジシャンに攻撃しようと突っ込んでいくが、既にほとんど魔法の準備を終えていたポイズンマジシャンを止めることはできず、スタン中のメノに容赦なくポイズンマジシャンの魔法攻撃が襲い掛かった。
「ぎえーっ!」
しかし、流石はVIT振りというべきか、メノは四発の魔法攻撃を受けてもなおHPが残っているようだった。
種族的にINTもそこそこ高いので、そのおかげなのだろう。
「ゆきひめちゃんは……」
エリーナがそこで言い淀む。
私たちとポイズンマジシャンの魔法のクールタイムは若干向こうの方が長いくらいで、二匹のポイズンマジシャンの魔法の後に『アイススピア』を放って右のポイズンマジシャンを撃破した私の魔法は、私の感覚でいえばおそらく彼らよりも先に撃つことはできない。
エリーナも咄嗟にそう思い、指示を中断したのだろう。
「ゆきひめちゃん、真ん中のに攻撃準───ぎゃーっ!」
突然繰り出されるポイズンマジシャンの魔法攻撃。
それは、誰もが忘れていた右の奥から更に来ていたもう一匹のポイズンマジシャンのものだった。
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