第33話 ぽいずんまじしゃんとのたたかい
「メノ、右!」
「はい!」
「ぷぎー」
「ゆきひめさん!」
「やっ!」
「ぷぎっ」
エリーナが状況を見ながら一人で前線に立つメノに指示を出し、メノが削ったポイズンマジシャンを私が『アイススピア』で倒していく。
そしてべにいもが私の腕の中で楽しそうに鳴く。
その間に私たちを狙ってきたポイズンマジシャンに対しては、魔法は発動中に攻撃されると発動がキャンセルされるという仕様があるので、エリーナが『ソウルショック』で攻撃し魔法を撃たせないように管理する。
そしてべにいもが私の腕の中で楽しそうに鳴く。
という流れで序盤は上手くポイズンマジシャンを次々と狩っていた私たちだったが、戦況というものは常に移りゆくものなわけで。
「メノ、また右!」
「はい!」
「そしたら……あ」
「あ?」
突然呆けた声を出したエリーナの方を見てみると、どうやら魔法が不発に終わってポイズンマジシャンの攻撃キャンセルに失敗していたようだった。
「ごめん、MP切れたっぽい!多分メノが狙われてる!」
「どっちからですか!?」
「後ろっ!」
「うし……ぎゃーっ!」
回避行動を取ろうとするも、間に合わずに相手の範囲魔法をくらってしまったメノが軽く吹き飛ばされた。
そして、メノの頭上に星が回るエフェクトが表示される。
「スタン効果まであるの!?」
「ぷぎ?」
「ゆきひめちゃん!」
「右ですか!?」
おそらくメノが相手できなくなったポイズンマジシャンの対処の指示だろうと思い、右のポイズンマジシャンを狙って『アイススピア』の発動準備を始める。
「ん……右で!」
エリーナがMP回復ポーションを飲みながら私の予想通りの指示を出す。
「たーっ!」
「ぷ?」
私も魔法を使うのにはだいぶ慣れてきたもので、無事に『アイススピア』がポイズンマジシャンに命中する。
……が、先ほどのイレギュラーでメノの攻撃が中途半端に中断されてしまったポイズンマジシャンのHPを削りきるほどの火力が私の『アイススピア』にはなかったようで、ポイズンマジシャンは鬱陶しそうにこちらに振り向き、狙いを私に変えた。
「させません!」
しかし、その間にスタンから解放されたメノがポイズンマジシャンを倒す。
「ぷぎっ?」
「メノさんありがとうございます!」
「いえ!」
「ごめんメノ!左のがまた魔法撃ちそうなのと前からも一体きてる!」
「うぇっ!?」
元々、迫りくるポイズンマジシャンの処理が若干追いついていないくらいのペースだったのだ。
それがエリーナのMP切れで更に処理が停滞してしまい、その隙を狙ったかのようにポイズンマジシャンが次々とこちらにやってきた。
「ちょ、まだ一歩も進めてないんですけど!」
そう叫ぶメノの言う通り、私たちは柵を乗り越えてから一歩も前に進めておらず、私とエリーナはその柵に背中を預ける形で戦っている。
そのおかげで、柵の外から攻撃される可能性があるとはいえ柵の中よりは外の方が圧倒的にモンスターが少ないので、背後からの奇襲をあまり警戒しなくても良い状況ではある。が、逆にいえばその状況ですら押されているわけだ。
「とりえあず左行きます!」
「待ってメノ!右から私たちをタゲってるのが来てる!」
「なぬっ!?」
メノが振りかざした槍を止め、さっとステッキに持ち替える。
そして、私はそれと交差するように元々メノが狙っていたポイズンマジシャンに狙いを定めた。
「左は私が止めます!」
「任せました!」
「ぷぎぎー」
「私は前ね!」
三人で、ほとんど同時に魔法を放つ。
ちなみに、私の『アイススピア』は私の目前から氷の棘を一本飛ばして相手を攻撃する魔法、エリーナの『ソウルショック』は物理的な物体の移動はなしで直接狙った相手に衝撃を与えて攻撃する魔法、メノの『ホーリービーム』はレーザーのようなものを発射して相手を攻撃する魔法だ。
「タゲ取れました!」
「りょーかい!」
右から来ているまだ少し距離のあるポイズンマジシャンのターゲットを取れたことを確認したメノは、再び左のポイズンマジシャンを狙うべく槍を構える。
「左行きます!」
「ゆきひめちゃんは私と同時に前倒すよ!左の奥からもう一体来てるから気を付けて!」
「わかりました!」
「はい!」
私のMPはまだ大丈夫だろうか。
MPの記載がないこのゲームでは、その不安が常に頭から離れない。
「ふっ!せい!」
私たちが魔法のクールダウンを待っている間、メノが左のポイズンマジシャンに攻撃を仕掛ける。
メノがターゲットを取った右のポイズンマジシャンもどんどん近づいてきており、どんどん状況が悪くなっていく。
だが、できるところまでは死力を尽くしてたあ戦おう。クールダウンの終わった魔法を再び発動すべく───
「───っ!」
「エリーナさん!?」
前のポイズンマジシャンを狙って私とエリーナが魔法を準備する中、エリーナは突然それをキャンセルして剣に持ち替えて後ろに向かって振り回した。
「後ろからスライム!」
「えっ」
「ゆきひめちゃんはそのまま前の狙って!」
「わかりました!」
「ぷ!」
まさに四面楚歌という状況の中、いつも通り呑気に鳴き声を出すべにいも。
……と思ったら、ずっと私の腕の中でじっとしていたべにいもが、突然もぞもぞと身動きを取り始めた。
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