第31話 わたしのけってい
「ステータス振りで悩んだ時は、今後どういう風にこのゲームを遊びたいかって考えればいいわ」
「どういう風に、ですか」
「そう。私たち経験者から見たらこれは将来的に必要なステータスだとかはあるけど、そういうのはゆきひめちゃんにはピンと来ないかもしれないし、いざ必要性を感じた後から上げることもできるから」
「なるほど」
「将来的に必要なステータスって二種類あって、一つは活動していくために最低限必要なステータス、もう一つは自分がやりたいことのために必要なステータスよ。私たちみたいな経験者は前者から上げていって、このゲームの仕様とかが解明され始めてから後者を考えて振っていくっていうやり方の方が失敗が少ないけど、ゆきひめちゃんにとっては前者のことが今はよくわからないかもしれないから、後者から考えて振っていくっていうのでも大丈夫」
「ふむ……」
つまり、二人は私の今後のことを思ってINTとかVITとかAGIを上げるべきだと最初にアドバイスしてくれたが、それがピンと来ないのなら自分のしたいことを考えて好きに振ってしまってもいいのだということだろう。
「結局は、ゆきひめちゃんはどうしてこのゲームを始めたのかっていう話になるわね」
「うーん」
このゲームは奇妙な縁があって始めただけなので、そういった目的は未だに私の中で定まっていない。
強いて言うのなら、せっかくだし何か変なことをしてみたいというのが一番強い気持ちだろうか。他の人はほとんどが本気でやっているらしいので、あえてその人たちが行かない道を行く方が面白そうだ。
「……決めました」
決意を固め、ステータスポイントを割り振っていく。
私が選んだのは、この二つだ。
≪INTにステータスポイントを6割り振ると、INT1(1+0+0)→INT7(7+0+0)となります。よろしいですか?≫
≪DEXにステータスポイントを4割り振ると、DEX1(1+0+0)→DEX1(5+0-4)となります。よろしいですか?≫
≪LUCにステータスポイントを24割り振ると、LUC28(6+0+22)→LUC100(30+0+70)となります。よろしいですか?≫
≪称号:豪運 を獲得しました≫
とりあえずはこんなものでいいだろう。ほとんどLUCに振ってしまったが、せっかくだからLUCを三桁にしたかっただけだ。今後は他のところをメインに伸ばしていこうと思う。
INTはエリーナさんの感覚を参考に、それなりに戦えるようになるラインまで振ったという感じだ。
DEXはポイントを割いたくせに全く伸びていないが、固定値分のマイナスは乗り越えそうなので今後に期待ということで。というか、今回の無駄な振りはDEXを上げていこうという意思表示である。
「結局ほとんどLUCに振ったのね。というか、100って……」
「これならドロップ率もわかりやすく変わるかなと」
「四倍ですからね!LUCがドロップ率に影響してるなら、流石に気づけそうです!」
「ついでに、称号もゲットしました」
もうその理由は察しているが、一応確認しておく。
≪豪運 LUC100を達成した人に贈られる称号≫
「流石にレベルアップはなかったのね」
「10から先は更に必要経験値が伸びそうですからね!」
「ですね」
「それじゃ、最後にスキルの方かしら」
「はい」
スキルは、とりあえず攻撃魔法系のスキルを一つ取って残りは様子見で行こうと思っている。
そんなわけで、ぱっぱと終わらせるべくスキルの画面を開く。
私が所持しているスキルポイントは6で、これはレベル8以降レベルが1上がるごとに2ずつもらえるという仕様だそうだ。
スキルポイントはスキルの解放の際に使うもので、強化の方には必要ないらしい。ただスキルポイントが6あるからスキルを六つ獲得できるというわけではなく、スキルによって獲得に必要なスキルポイントは変わっていくそうだ。
「とりあえず私とメノがそれぞれ闇と光の属性の魔法を使っているから、バランスを考えるならゆきひめちゃんには他の属性の魔法を取ってもらえるとありがたいかしら」
「わかりました」
特にその辺りのこだわりはないので、素直に頷く。
ちなみに、べにいもの毒ブレスと毒弾は闇属性という判定のようだ。なので、べにいもとの相性を考えても闇属性は避けた方が良い。
「ちなみに種族ごとに得意属性とか苦手属性みたいなのもあるって言われてるわ。まあ、例によって詳細の記載はないわけだけど」
「うーん、私の場合はなんなんでしょうか」
「プリンセスというくらいですし、イメージ的には光ですかね?」
「そう?私は光と闇は対になってて、それぞれ空想上の存在ってイメージだからプリンセスが光ってイメージは抱かないかしら。ほら、私の魂もメノの天使も空想上の話だし。むしろ、現実の存在がモチーフの種族は光も闇も苦手そうってイメージがあるわ」
「そう言われればそんな気もしますね……」
結局のところ、その得意不得意の話も予想の域を超えることはないわけだ。
それなら、私が一番ピンときたものにしてしまおう。
「この『アイススピア』ていうのにします。寒いのが好きなので」
「うん。いいんじゃない?」
「私は寒いのは苦手です!」
たしかにメノにはなんかそんなイメージがある。
なんてことを喋っていると、丁度良いタイミングでべにいもが目を覚ました。
「ぷぎ……」
「おはよう。よく眠れた?」
「ぷ?」
言葉の意味を理解しているのかいないのか、べにいもは可愛らしく身体を傾けた。
私は、そんなべにいもを両手で持って顔の前まで持ち上げる。すると、先ほどまで私と同じ向きにあった紅芋の目と口が、体内を移動してこちら側へとやってきた。
「……べにいもには身体の向きとかないんだね?」
「ぷぎっ」
「あ、そうそう。今日から君の名前はべにいもになったから。大丈夫?」
「ぷぎ?」
「べにいも。べにいもだよ?」
「ぷ!」
果たしてちゃんとわかっているのだろうか。
まあ、可愛いからよしとしよう。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
「ですね!ポーションの残量的にそろそろ探索を開始しないと帰れなくなっちゃいます!」
「はい。お待たせしました」
目が覚めたべにいもには、しっかり運動もさせたいという思いのついでにモンスターと遭遇したときにどういう行動をとるのかも確認しておきたいので、自分で歩いてもらうことにした。
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