第29話 らっきーぷりんせすの、しゅぞくほせい



「うーん……ある程度の推測はできましたけど……」

「なかなか鬼畜ね」

「私だったら間違いなく転生案件です」


 増えた28ポイントと溜めておいた6ポイントを足して、合計34のステータスポイントが私の手元にある。

 ひとまずは種族補正の仕様を判明させようということで全ポイントを各ステータスに割り振ろうとして確認してみたところ、その結果はこんな感じだった。



 ≪STRにステータスポイントを34割り振ると、STR1(1+0+0)→STR1(35+0-34)となります。よろしいですか?≫


 ≪INTにステータスポイントを34割り振ると、INT1(1+0+0)→INT35(35+0+0)となります。よろしいですか?≫


 ≪VITにステータスポイントを34割り振ると、VIT1(1+0+0)→VIT8(35+0-27)となります。よろしいですか?≫


 ≪DEXにステータスポイントを34割り振ると、DEX1(1+0+0)→DEX23(35+0-12)となります。よろしいですか?≫


 ≪AGIにステータスポイントを34割り振ると、AGI1(1+0+0)→AGI16(35+0-19)となります。よろしいですか?≫


 かなりばらつきがある結果だ。

 最初はINT以外は一律で1も増えなかったので同じように見えていたが、その内情はどれも違っていたらしい。


「うーん……マイナス補正の数字のキリが悪いから、固定値って感じじゃなさそうね」

「そうですね。LUCのプラス補正も基礎値に対しての倍率がありましたし、このマイナス補正もそういう感じな気がします」

「それなら、ここでポイントを使っちゃうとSTRの計算式は二度と判明できなそうですねー」

「ていうか、34振ってもSTR1って……」


 34振っても1ならどうせもう振ることはないと思うが、計算式が気にならないと言えば嘘になる。

 いや、そんなことよりも、STRを増やしたいという話だったのにこの結果はなかなかに鬼畜で涙が出てきてしまいそうだ。


「だけど、この感じだとDEX→AGI→VIT→STRの順にマイナス補正が大きくて、VITまで増え始めてるならもう少しポイントがあればSTRも増え始めそうね」

「そうですけど、次にレベルが上がるのなんていつになるか……」

「それもそうねぇ」

「でも、もしそれぞれの計算式に法則性があるとすれば、STRの計算式もその法則性で計算式がわかるかもしれません」


 いったんSTRのことは忘れておいて、他のステータスの計算式を判明させてみよう。

 というわけで、まずは変化の大きそうなDEXに10、20、30を振るパターンを確認してみた。


 ≪DEXにステータスポイントを10割り振ると、DEX1(1+0+0)→DEX3(11+0-8)となります。よろしいですか?≫


 ≪DEXにステータスポイントを20割り振ると、DEX1(1+0+0)→DEX11(21+0-10)となります。よろしいですか?≫


 ≪DEXにステータスポイントを30割り振ると、DEX1(1+0+0)→DEX19(31+0-12)となります。よろしいですか?≫


「ふむ……」


 割り振ろうとするステータスポイントを10増やす度に、マイナス値が2ずつ増えている。

 ということは、基礎値*1/5というのが計算式に含まれていそうだ。そして基礎値が31の時と35の時で変わらないということは、小数点以下切り上げという可能性が高い。

 そして、ステータスポイントを10割り振る時を例にすると、基礎値*1/5のマイナス補正は11*1/5の小数点以下切り上げで3となる。だが実際は8引かれているので、ここに固定値の5が加算されているのだろう。

 こう考えると、3レベの時に6割り振ろうとした時も、基礎値が7でマイナス値も7なので結局1から変わらなかったということになり、矛盾がない。


 この予想を二人に披露すると、二人も納得したように頷いた。


「うんうん……流石にそれ以上複雑な計算式はしてないと思うし、それで正しそうね」

「固定値分は一旦超えちゃえば問題ないので度外視するにしても、2割減算されるということですか……でも、もらえるステータスポイントが通常の1.5倍なことを考えると、DEXに振るのは損ではなさそうですね!」


 減算されるというだけでなんだかもったいない気がするが、たしかにメノの言うような捉え方をすることもできる。

 まあそこはひとまず今後改めて考えていくとして、とりあえず今は他のステータスの計算式を確かめることが先決である。


 次は、DEXの次に変化の大きいAGIだ。


 ≪AGIにステータスポイントを10割り振ると、AGI1(1+0+0)→AGI1(11+0-10)となります。よろしいですか?≫


 ≪AGIにステータスポイントを20割り振ると、AGI1(1+0+0)→AGI5(21+0-16)となります。よろしいですか?≫


 ≪AGIにステータスポイントを30割り振ると、AGI1(1+0+0)→AGI13(31+0-18)となります。よろしいですか?≫


「んー?」


 10の時はおそらくマイナス値が10オーバーということなので参考にならないが、20の時と30の時ではマイナス値の差が2である。

 すると先ほどのように基礎値*1/5かと判断しそうになるが、DEXの時とは違う点が一つあった。

 それは、基礎値が31の時と35の時でマイナス値が違うということだ。35の時の方が1増えている。


「DEXとは違って少しマイナス補正の増え方が大きいので、基礎値*1/4ってところでしょうか?」

「んー……それなら21の時は6で、31の時は8、35の時は9ってことになるわね」

「明らかにそれですよ!10足せばマイナス値とぴったりです!」


 まとめると、AGIのマイナス値は10+基礎値*1/4ということになる。


「これ、VITは15+基礎値*1/3じゃないですか?」

「それだと35の時は……27?」

「合ってますね!」


 一応、念のために30のパターンを試してみる。基礎値が31なら、マイナス値は15+11で26になるはずだ。


 ≪VITにステータスポイントを30割り振ると、VIT1(1+0+0)→VIT5(31+0-26)となります。よろしいですか?≫


「うん、ちゃんと合ってますね」

「なら、STRは20+基礎値*1/2かしら」

「35だと38になるので、ちゃんとオーバーしてます!」


 STRは確認できないといえど、まず間違いなくそれで合っているだろう。

 となると、メノの理論では25%カットされるAGIまでは振るのが得、33%カットされるVITはトントン(とはいえ、固定値の15分は損になる)、50%カットされるSTRは損ということになる。


 この理論はどこまで鵜吞みにしていいものなのかは悩むが、どの道STRの1はもう受け入れるしかないのだろう。

 STRを伸ばすなら絶対的に転生した方が良いし、ラッキープリンセスなんていう私のために存在しているような種族を手放すつもりなど毛頭ない。


 それに、まだジョブ補正が残っている。種族補正が基礎値にしかかからないものなら、ジョブ次第ではSTRを少しくらいなら伸ばせるはずだ。

 ……種族補正がジョブ補正にも関係してくるものだとしたら、もう知らない。


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