第28話 すらいむのしょくせい
引き続きテイムモンスターの仕様を確認していく私たち。
エリーナもメノもいつの間にか宙に向かって文字を打ち込む仕草を見せており、二人ともそれぞれ私から聞いた情報をまとめているようだった。
「そういえば、テイムモンスターってことは一緒に戦ってくれるってことよね?その辺はどういう仕様なのかしら」
「うーん、そういう説明はどこにもなかったような……あ」
そういえば、テイムモンスターという用語自体にも補足説明があったことを思い出した私は、改めてそれを表示してみた。
流石にその意味はわかると思って今まで見てこなかったのだが、もしかしたらそういったことが詳しく書かれているのかもしれない。
≪テイムモンスター プレイヤーの活動をサポートしてくれるモンスターのこと≫
うん。書かれてないね。
流石はそういったところを明記せずに闇に隠したがる運営だ。用語やプレイヤーが操作する必要のある仕様の説明は細かくても、そうではないところの説明はとことんうやむやである。
しかい、逆説的にいえば、テイムモンスターの行動はプレイヤーに関わるところではないということだろう。
「どう?説明はあった?」
「いえ、なかったのでテイムモンスター自体が自動で判断しているって感じかと」
「そうねー。この運営が説明しないってことはそういうことっぽいわね」
エリーナも概ねそういった考えをしているようで、私の言葉に納得を示す。
「あとは……そうだ、さっきゆきひめちゃんが心配してた餌とかの話はどうなの?何を食べるとか……それ以前にも、そもそも食事は必要なのかとか」
「それも確認してるんですけど、ぱっと見だと特に記載がないんですよね。ちゃんと食べさせてあげたいんですけど」
私の腕の中ですやすやと眠るべにいもは、すやすやと眠っているのだ。
それはつまり睡眠をするということであり、それは生命活動を行う必要があるということ……いや、ただ癒しのためにそういう風なこともすると設定されているだけかもしれないが、私は生命活動をする必要があると思うことにしている。
正直、最悪の場合しなくても平気なんだろうなというのはわかってるけどね。うん。この運営なら必要なら説明するだろうし。
ただ、説明が必要だと運営が判断する基準に全く信用がないので、そういうことをしなくてもロストはしないので説明はしないが、した方が良いことがあるとかそういう可能性は否定できない。なので、どの道私はべにいもの世話をするつもりだ。
というわけで、べにいものごはんを用意しなければならない。
そもそもスライムって基本的には何を食べているのだろうか。通常のスライムは草原で生きているわけだし、あれは草を食べているということだろうか。草食動物なのかな。
一応この毒沼エリアにも植物はちらほらと生えているが、なんというかそういう湿っぽい場所に生えてそうで毒とかがありそうな植物しか生えていない。種類も少なく、ぱっと見では三種類くらいだ。
それらを食すのなら定期的に採取しにくる必要があるが、先ほどは毒泥を飲んでいた。それならば毒泥が……いや、こっちは人間でいうところの水って感じなのかもしれない。
なんて私が複雑に考えていると、メノは私とは全く違う見解を披露した。
「まあ、スライムですし何でも食べるのではないでしょうか?」
「……そうなんですか?」
スライムの食性について一般的な認識があるのだろうか。
メノの言葉に疑問を浮かべたのは私だけで、エリーナもメノ側の意見だった。
「スライムといえばとにかく何でも食べるみたいなイメージがあるわね。それこそ、ゴミとかでもなんでも」
「ゴミ!?」
「ええ。ゴミ処理道具として使われてたりしない?」
「何の話ですか!?」
「ゆきひめちゃんはそういうアニメとかは見ないの?」
「アニメ!?……ああ、アニメの話でしたか」
ゴミ処理とかいうから、てっきり現実でそういうことがあるのかと思ってしまった。
というか、アニメってゴミ処理問題の話とかもするのだろうか。しかも、スライムが出てくるようなアニメなら異世界とかが舞台なのだろう。そんなものでまでゴミ処理の話とか……世知辛すぎる。
「アニメはあまり見ませんね」
「そうなんですか!?せっかく面白いのに、もったいないです!今度面白いものを教えてあげます!」
「ありがとうございます」
せっかくの縁なので、何か面白そうなものをおすすめされたら見てみよう。
「でも、それってやっぱり空想上の話ってことですよね。まあ、ここもゲームの世界ですけど」
「そうねー。結局はべにいもちゃんが嫌がるものじゃなければなんでもいいんじゃない?」
「意思疎通が図れるわけでもありませんからねー」
「そうですね……」
ひとまずは毒泥の入った小瓶をいくつか用意するのと、その辺の植物をいくつか採取していくことにしよう。
……と、そういえば。
「レベルがいっぱい上がったので、STRを増やせば持てるアイテムの量も増えますよね」
「そうね。テイムモンスターのことはこの辺にしておいて、そっちの確認する?」
「はい」
べにいものためというのもあるが、私個人としてもSTRの低さは何とかしたい。
それに、ステータス振りに関してはもう一つの議題もある。
「LUCを上げてドロップ率の検証を進めるという話はどうしますか?」
「んー、現段階でのドロップ率もある程度定まってきたし、お願いしようかしら」
「わかりました」
というわけで、今度は自分のステータス画面へと移った。
そこには予想通りレベルが7上がった分のステータスポイント21が……
「……なんか、28ポイント増えてますね」
「28!?バグですか!?」
メノが声を荒げる。
そういえば、メノには私の獲得ステータスポイントがなんか多いという話をしたことがなかった。
「なるほど、1レベにつき3ももらえるんですか……ずるいです!」
「まあ、ゆきひめちゃんは初期値も低かったし種族補正もちょっと可哀想なくらいマイナスが大きいからね」
「でも、1レベにつき3でも21のはずなんですけど」
「多分、10レベに上がった時にもらえる量が多かったってことじゃない?こういうゲームではキリの良い数字の時にボーナスがあるとかはありがちな話だし」
「なるほど」
そう考えると、3から9の6レベ分でステータスポイント18、10レベに上がった時の分がボーナスでステータスポイント10だとすると数字が合うし、10レベの時にステータスポイント10というのもキリが良くて頷ける。
こんなにステータスポイントがあれば、振り方も色々と悩みが尽きなさそうだ。
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