第27話 ていむもんすたー
あの後、騒いでいた私たちはポイズンスライムの襲撃にあってしまった。
なんとかエリーナとメノが対処したが、まだまだ確認したいこともあったので、私たちは一旦落ち着ける場所を探すべく歩き回ってみることにした。
そうしてしばらく歩き回っていると、ポイズンマジシャンもちらほらと見かけるようになったあたりで何やら遺跡のような場所を発見した。
「何か怪しげな場所ですね」
「お宝の匂いがします!」
「とりあえず、ここなら奇襲を受けることはないでしょ」
三者三様の感想を述べ、大きな壁に背後を任せる形で腰を落ち着かせる。
私は腕の中ですやすやと眠っているポイズンスライムを優しく撫でながら、改めてこの子についての確認を行うことにした。
「えっと、たしか『テイムモンスター』っていう機能が解放されたはずです」
「うんうん」
これには二人とも大方予想通りだといった感じで、特に話を遮るわけでもなく続きを促してきた。
「んー……とりあえず、この子のステータスとかが確認できますね。あ、名前も付けられます」
「せっかくだし、付けてあげたらどうかしら?」
「はい」
こういうのは、深い意味を考えるよりはわかりやすい名前を付けてあげる方が良いだろう。
ポイズンスライムという種族名とか、身体的特徴からわかりやすく付けるとして…………
「べにいも、とか?」
「……まあそこはゆきひめちゃんの自由だと思うけど、ポイズンスライムに食べ物の名前はちょっと抵抗感あるわね」
「そうですか?私は可愛いと思います!」
ポイズンスライムはその名の通り毒々しい綺麗な紫色をしているので、紫色で四文字くらいの響きが可愛いものとしてべにいもが浮かんだわけだが、エリーナとしてはあまりいい名前ではなかったようだ。
「花の名前とかどうかしら」
「私は花の名前の方が違和感ありますね。だってポイズンスライムですよ?」
「そう?でも花って毒とかあるものもあるじゃない?」
「そう言われればそうですけど……」
どこまでも意見が食い違うエリーナとメノ。
エリーナに言われて花の名前を思い浮かべてみたが、私は花に関する知識があまりないのでぱっと思い浮かぶものは特になかった。
「んー、やっぱりべにいもにします」
「そうね。私も一番最初にピンときたものが良いと思うわ。変な口を挟んでごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です」
エリーナの謝罪を受け取り、ポイズンスライムにべにいもと名付ける。
本人(?)はすやすやと眠っているのでなんとも締まらない命名の瞬間だったが、そこは深く考えないことにしよう。
「ステータスの方は……なんか私たちと似たような感じですね。レベルとかステータス振りとかもあって……」
レベルのところに補足説明があったので、表示させてみる。
≪テイムモンスターには獲得経験値の二割が自動分配されます。プレイヤーの獲得経験値は分配された分減少します≫
その説明文を、そのまま二人にも説明した。
「それって今後ずっと吸われ続けるのかしら?」
「だとすると、気軽にはテイムできないですね」
「まあ、嫌なら逃がせってことじゃない?」
「んー……」
確かに、逃がすというコマンドもある。
だが、そんな獲得経験値を吸われ続けるなんて大きなデメリットを強制的に押し付けられては、せっかくの機能があまり使われなくてもったいない気がする。
何か見逃していることがあるのではとテイムモンスターの機能を色々と確認していると、今度はコストという概念にたどり着いた。
≪コスト テイムモンスターの強さの基準。復活・再召喚に必要な時間や、レベルアップに必要な経験値・レベル上限はコストに左右される≫
再びその文章をそのまま説明すると、二人は意外だという反応を示した。
「現実に寄せてるところが多いゲームだし、そこら辺の仕様は死んだらロストかと思ってたわ」
「私もです!復活と再召喚というのは何が違うのですか?」
メノの疑問を受けて、その補足説明を表示させてみる。
≪テイムモンスターの復活 テイムモンスターのHPが0になり強制帰還した後、再び召喚可能になること。コストによって召喚可能になるまでの必要時間が異なる≫
≪テイムモンスターの再召喚 テイムモンスターを帰還させてから、再び召喚すること。コストによって召喚可能になるまでの必要時間が異なる≫
ついでに、どちらの説明にも出てきた帰還という用語の詳細も表示させる。
≪テイムモンスターの帰還 テイムモンスターの召喚状態を解除すること≫
国語辞典かな?というくらい用語の説明に用語が出てくる。こちらもまた詳細を表示だ。
≪召喚状態 テイムモンスターをフィールドに出現させること。また、その状態。テイムモンスターを五匹召喚状態にしている時に他のテイムモンスターを召喚状態にすることはできない≫
ちなみに、ここまで表示させた説明文は全て表示されっぱなしなので、どんどん画面上に溜まってうっとおしく画面を覆い始めている。
いったんそれらを全て消して、二人にはお硬い文章ではなくわかりやすく砕いた説明をした。
「なるほどね。それなら、召喚状態にしておかなければテイムモンスターに経験値を吸われることもないってことかしら」
「そうっぽいですね!経験値を二割吸われるのと、上限が五体っていうところがちょうどぴったりですし!」
「はい。それと、テイムモンスターのボックスみたいなのがあって、見た感じだと空いてるマスが十個なのでテイム可能数は今のところ十匹っぽいですけど、ロックされてるマスがもう十個あるので最大では二十匹っぽいです」
ちなみにべにいものコストは2で、毒ブレス・毒弾・毒状態無効のスキルを所持している。現在のレベルは6だ。
レベル8でスキルの機能が解放されるそうなので、その辺もプレイヤーのステータスと同じ仕様となっていた。
ステータスの方はというと、全体的に低いが、強いて言うならLUCが一番高く、次いでVITとINTが高めだ。INTが高めなのは、毒弾が魔法という判定だからだろう。
しかし、やはり毒状態無効というスキルがあるのに、私はそれを持たないにもかかわらず毒状態にはならないのか。
エリーナ曰く、基本スキルにはスキルとして存在するものだけが表示される(正確にはそう予想されている)ということで、私のように基本スキルには表示がないが明らかに種族の恩恵として何かしらの効果を与えられている人は他にもいるらしい。というか、現時点でほとんどの種族にそういった能力があることが確認されているので、ないと思われている種族もまだわかっていないだけで何かしらの効果はあり、全ての種族にそういったものはあると考えられているのだとか。
それは微々たる効果からとんでもない効果まであり、その強さは種族ごとにバラバラらしい。私の場合は、それが異常状態は全て無効みたいな効果なのかもしれない。
なんでも色んなプレイヤーがその効果の詳細くらいは明記してくれと運営に問い合わせているらしく、そのうちそういったものも確認できるようになるかもしれないとエリーナが言っていたので、私も暇があればそういった要望を出しておこうと思う。
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