第17話 ずかん


「んー……木の枝しかない」


 身体能力が低い私は、木に登ってみたり揺すってみたりすることができない。

 なので基本的には落ちているものを拾い上げることくらいしかできないのだが、森の中ではどこを見てもただの木の枝しか落ちていなかった。


「毒沼エリアの方に行ってみてもいいけど、うーん……」


 毒沼エリアの方で何も見つからなければ、それは無駄に回復アイテムだけを消費して結果的にはマイナスということになってしまう。

 森の中を探す限りは何も見つからなくてもプラマイゼロなので、もう少しこちらで粘ってみようか。


「……あれ、そういえば、大狼を倒したときに私も何かドロップしたのかな?」


 アイテムのことを考えていると、ふとそんなことを思い出した。

 全く戦闘に関わらなかった時は私の元にドロップアイテムが流れてくることはなかったが、多少なりとも貢献したならドロップする確率が少しくらいは発生していてもおかしくない。

 そう思って所持アイテムの一覧を改めて確認してみると、new表示のついているアイテムを発見した。


「大狼の毛皮……と、核?」


 アイテム名だけを見てもよくわからないので、タップして詳細を確認してみることにする。

 というか、二つ落ちているということは今のところドロップ率は100%ということになる。まあ、流石に運が良いだけだと思うが。


 ≪大狼の毛皮 大狼の毛皮。素材アイテム≫


「これはエリーナさんが言ってたやつかな。たしか、これで装備が作れるとかだったはず」


 続いて、核の方を確認する。


 ≪大狼の核 大狼の魂が刻まれた核。図鑑アイテム≫

 ≪大狼の核を使用しますか? はい/いいえ≫


「図鑑アイテム?」


 よくわからない単語が出てきたので、一旦いいえを選択しておく。

 そして一度メニュー画面まで戻ったのだが、その時ふと図鑑システムのことを思い出した。


「そういえば、図鑑とかいう機能があったっけ。たしか……」


 メニューの下の方にあるそのコマンドを選ぶと、こちらもまた情報が更新されていた。


「スライムと大狼の情報が載ってる。あ、あとポイズンスライムもだ」


 どうやらこちらは自分で倒さずとも情報が増えていくようで、遠くから眺めていただけのポイズンスライムの情報も増えていた。

 そしてその詳細を表示させると、簡単なモンスターの説明と理解度という項目が現れる。


 ≪スライム 水色のスライム状のモンスター。比較的温和で、弾性が強い。グリーシャの街周辺に生息する。 理解度18%≫


 試しに開いてみたスライムの図鑑では、理解度の欄がそのように表示されていた。

 さらに詳細を開いてみると、その内訳が出てくる。


 ≪スライム理解度 討伐数0% 生態理解度60% 核0% 生息域13%  合計18%≫

 ≪理解度ボーナス 体力上昇≫


「理解度ボーナス……?」


 描かれていることをそのまま素直に理解するのなら、理解度が上がると体力上昇のボーナスがもらえるということになる。


 そしてその内訳は四つに分かれており、先ほどの核アイテムを使えばこの核のところのパーセンテージが上がるのだろうと推察できる。

 だとすると、あのアイテムはガンガン使っていった方がいいはずだ。


「エリーナさんは特にそんな話してなかったけど……とりあえず使ってみよっかな」


 言ってもゲームのアイテムだしなくなって困るようなものでもないのですぐさま大狼の核を使用して図鑑を確認すると、考え通り大狼の核のパーセンテージが上昇していた。


 ≪大狼理解度 討伐数1% 生態理解度12% 核5% 生息域10% 合計7%≫

 ≪理解度ボーナス 筋力上昇≫


「一個で5%……」


 つまり、核の項目を100%にするには単純計算で二十個必要ということになる。

 ドロップ率がわからないのでそれがどれほど大変なのかはわからないが、ずっと一緒に狩りをしていたエリーナは、どういった素材アイテムが落ちたとかいう話をしてきたことはあったが核が落ちたなんて話をしてきたことはなかった。

 もしかしたら、エリーナはこれまで一度も核をドロップしていないのではないだろうか。


「だとすると、LUCの影響で……?いや、でもドロップ率は他の人の報告に比べて明らかに高いらしいし……」


 うーん、初心者の私がいくら考えても答えは出なそうだ。次に落ち着いて話ができる時になったら聞いてみればいいだろう。

 そんなことよりも、今はトレジャーハントを楽しむことにした。


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