第16話 めののれべるあげ
「よっ!ほっ!」
メノの使う武器は槍で、その槍で器用にポイズンスライムを転がしながら相手を翻弄していた。
そんな状態では狙いが定まるはずもなく、ポイズンスライムは明後日の方向へと毒の弾を飛ばす。
ポイズンスライムが毒の弾を飛ばしたことを確認すると、メノは槍でエリーナの方へとスライムを投げ飛ばした。
「エリーナさん!」
「りょーかい!」
宙を舞うポイズンスライムに、エリーナが発動準備の整った魔法を向ける。
魔法の発動準備とは、例の五×五の点の指定個所を結ぶ作業のことで、発動準備が整ったというのはそれを終えた状態のことだ。
つまり、あとは魔法を飛ばすだけというわけである。
「『ソウルショック』!」
ポイズンスライムが空中で回避行動をとれるわけもなく、エリーナの魔法をもろにくらったポイズンスライムはその姿を塵へと変えた。
そんな二人の華麗なコンビネーションで、ポイズンスライムを次々と狩っていく。
私はそれを森の方から眺めており、完全に見ているだけの存在になっていた。
「うーん、トレジャーハントでもしてようかな。でも、ここを離れすぎてもだめだしなー」
何故そんな状況になっているのかというと、毒沼エリアの仕様の影響だ。
毒沼エリアは常に毒素が空気中を漂っており、そこに居続けると毒状態となってしまう。どういう判定かの詳しいところまではまだわかっていないが、一定期間ごとに毒状態に侵されるか否の判定があるという感じだろうとエリーナが言っていた。
もちろんそれは事前に知っていた情報なので、毒を治すアイテムは持ってきてある。だが実際に戦えない私が毒沼エリアに入って無駄に毒に侵され、HPを削られるなんてことになったら毒を治すアイテムHPを回復するアイテムももったいないので、私は森の方で待機ということになったのだ。
無論、一人で取り残されるとそれはそれで危険である。
ということで、最初はエリーナと私が森の方で待機。メノがポイズンスライムを見つけてはこちらへと誘導し、それをエリーナと共に狩るという形で狩りをするということに決まったのだ。
私は完全にお荷物である。
「お、また落ちた!」
「私も。やっぱり恩恵ありそうよね。ポイズンスライムのドロップ率が高いだけという説も捨てきれないけど」
だが、どうやら私のLUCによる(LUCによると思われる)ドロップ率の増加の恩恵は二人とも感じているようで、邪魔者扱いはされていない。
むしろ、感謝されているくらいだ。
そういえば、大狼を二匹も自分で倒したからか、メノが8レベに上がる前に私の方が3レベに上がっていた。
なので、今はステータスポイントを6余らせている。が、それらを全部振ったとしてもやはりSTR、VIT、DEX、AGIは1のままという判定だった。
まあそこは最初からあまり期待していなかったので問題ない。それよりも、このステータスポイントを使ってできることが一つある。
「ふー、毒状態だとなんか少し気持ち悪くて嫌ね」
そんなことを言いながら、エリーナがこちらに戻ってくる
私はそんなエリーナに、その提案をしてみた。
「ドロップ率のことなんですけど、ポイズンスライムのドロップ率がわからないから正しいことがわからないということなら、今からLUCを上げてみましょうか?」
「……いいの?確かにそうしてもらえると、今までの分との比較でわかりやすくなるけど」
「大丈夫です。なんか、LUC以外に振ってもいいことがある気がしないので……」
むしろ、LUCを伸ばし続けるのが私の価値につながる気がする。
かっこよく戦うのも憧れるけど、別により強い敵と戦って最強を目指したいとかそういう願望はなくて、自分の実力に見合った相手と楽しく戦えれば私はそれでいいからね。
「それじゃ、もう少し今のLUCでデータ取れたらお願いしようかな。今は28なんだっけ?」
「はい」
「それで、種族補正が基礎値の二倍つくんだっけ。てことは6振ると……46になるんだ。3レベで46……」
遠い目をするエリーナ。
実はまだラッキープリンセスの神髄は発揮されていないのだが、それでも破格といえるその数値にちょっとした沈黙が流れた。
「そういえば、少しくらいならここを離れても大丈夫ですか?」
「ん?まあ目視できる範囲なら問題ないけど……何かあるの?」
「トレジャーハントでもしようかなと」
暇なので、という部分は言わないでおく。
まあ、まず間違いなく伝わってるとは思うけど。
「それなら全然平気よ。アイテムがもったいないとはいえ、入りたかったら毒沼エリアの方に入っても平気だからね?そこはゆきひめちゃんの出費なわけだし」
「わかりました」
毒状態を回復するアイテムは、HPを回復するアイテムの四倍くらいのお値段がした。ちょっと高すぎる気がする。
それを経験値のためだと躊躇いなくがぶがぶと飲むメノは、大物の器なのかもしれない。
「エリーナさーん!」
「っと、呼ばれたから行くわね。……って、二匹連れてきてるし」
一匹一匹狩るのが想像以上に上手くいっていたからか、メノは意図的に二匹連れてきたようだ。
しかしエリーナも二匹くらいなら問題ないと判断したのか、文句を言うでもなくメノとの合流を図る。
私は、どうせ見ていても仕方がないので、狩りのことはもう完全に二人に任せてトレジャーハントを勤しむことにしたのだった。
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