第4話 すらいむ、つよい
「まず、STRっていうのは、簡単に言えばパワーのことだね」
そう言いながら、ジムが力こぶを作る。
「これが高い人は、とっても力持ちってことだよ。だいたいのMMOならこれが高いと力が上がったり、荷物をいっぱい持てるようになったりするんだけど、このゲームはその辺があいまいだから、とにかく力持ちになれるってことで大丈夫だと思う!」
「なるほど」
Strengthの略称ってことかな。
「INTはその逆で、これが高いと強い魔法が使えるよ!そして、いっぱい魔法を使えるようにもなる!」
「へー」
Intelligenceかなあ。なんか単語のイメージと内容がちょっと違うけど。
「次にVITっていうのは、体力のことだね。これが高いと、タフな人になれるんだ」
「ふんふん」
Vitalityね。
「次のDEXっていうのは少しややこしいんだけど、これが高いと手先が器用になったりするんだ。なんていうのかな、あやとりが上手くなったり、お裁縫が上手くなったり、みたいな感じかな?」
「ほー」
Dexterityかな。
説明が少女向け過ぎるけど、今更否定するのもあれなので黙っておこう。
「そしてAGI。これは足の速さだね。これが高いと、とっても速く走れるよ!」
「うん」
Agilityと。
まあ、薄々と予想はしてたけどおおむね予想通りだった。
とはいえ、ちゃんと確認できたのはありがたいことだ。
「ありがとうございます。助かりました」
「いやいや、このくらいなんてことないよ。むしろ、お兄さんの方が貴重な情報を貰っちゃったからね」
ぺこりと頭を下げ名がらお礼を言うと、むしろジムの方が頭を下げてくる。
そして他にも質問はないかと問うてきたが、正直何がわからないのかもわからないくらい何もわからないので、大丈夫ですと断りを入れて別れた。
「んー、ゲームなんだし、とりあえずモンスターを倒せばいいんだよね」
ひとまず、人気の少ないところへとやってきた。
街からはだいぶ離れてしまったが、問題はないだろう。
「んー、とりあえず、あれかな?」
古からの序盤の定番。スライムに狙いを定めた私は、特に警戒するわけでもなくスライムの方へと近づいて行った。
最序盤の街周辺だからか、モンスターの方から襲ってくることはない。
それは触れられる距離まで詰めても同じで、むしろこちら側から襲うことに抵抗感を覚えるほどだった。
「ていうか、武器とかないけど……まあいいや、えーい」
覚悟を決めて、スライムを蹴り上げる。
サッカーボールのようにコロコロと転がったスライムは、その頭上にあるカーソルを赤色に変化させた。
「ぷぎー!」
「おお、そんな声出すんだ」
スライムが一体どこから音を出しているのかについては、深く考えないのがお約束だろう。
「ぷー!ぎっ!」
「うわっ」
スライムが、身体を縮ませてからこちらへと飛び跳ねてくる。
誰かに攻撃されるなんていう現実でされたことのない体験に、私は足をもたつかせておしりからこけてしまった。
「いてて……って、きゃっ!」
当然、スライムがそんな隙だらけの私を見逃すようなわけもなく。
スライムの体当たりをもろに食らった私は、吹き飛ぶとまではいかなくともさらに倒されて頭を地面にぶつけてしまった。
「いったー……HPは……って、ないんだった」
とはいえ、ダメージを受けた感覚はある。
よく考えたらスライムにもHPゲージがないし、これはどうなったら戦闘終了となるのだろうか。
「さすがに、何度も攻撃されたら負けちゃうよね」
流石は序盤の敵とでもいうべきか、スライムは一度攻撃してからしばらくは追撃をする素振りを見せず、私が態勢を整えるのを待ってくれているようだった。
その間に、ゆっくりと立ち上がる。
私はせめて武器くらいは用意してくればよかったなーなんて思いながら、カーソルが赤いままのスライムと再び対峙した。
「うー、まだ痛い……」
だが、先ほどぶつけた頭に残った痛みが消えない。
確か痛覚設定とかもあったはずだし、確認を───
「とっ……あぶなっ」
しかし、流石にそこまで悠長に待ってくれはしないようで、スライムは再び身体を縮めてからこちらへ突っ込んできた。
それを、なんとか紙一重のところでかわす。
というか、かなり無理して飛び避けた。ので、その勢いのまま再び転んでしまう。
とはいえ自ら転ぶのと転ばされるのでは天と地の差があり、先に手を地につけることでなんとか衝撃を和らげることはできた。
「ふぃー、セーフセーフ」
今のがダメージの判定になっているのかはわからないが、スライムの攻撃は受けていないわけだし大丈夫だろう。
さて、そろそろこちらの反撃のターンといかせてもらおうか。
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