第5話 ウミガメのスープをしよう
「よ、よし!なんかゲームやろうよ!こんな雰囲気じゃ小説もイラストもかけないでしょ?この空気を変えるには、ゲームが一番!」
「そうだな…でも、ゲームって言っても…」
「あ、そうだ。ウミガメやろう」
ウミガメ。正式名称ウミガメのスープ。誰か一人が簡単な問題を作り、その問題に対する質問をする。出題者はYES、NOで答えるという、二人以上が揃えばできる謎解きゲームだ。頭を使うため、案外小説家の中では人気のゲーム…らしい。
「いいな。やろうか」
「じゃあ、先生からお願い」
「よし、じゃあ見本を見せてやろう」
かくして、ウミガメのスープがスタートした。初手を飾るのだ、とてもエクセントリックな問題を出してやろうじゃないか。
「同棲してる男女がいた。ある日、突如として女が家を出て行った。待てど暮らせど、一向に戻ってこない。数週間後、一通の手紙が来た。当日その手紙に記された場所に行くと、彼女は白装束を着ていた。周りが祝福する中、男の心中は穏やかではなかった。さて、なぜか?」
『妹が嫁に出たから』
「な、なんでわかったんだ!?」
「先生の問題はワンパターン」
「大方シスコンの兄だけに内緒で両親にご挨拶も済ませてたんだろうねー」
こ、ここまで見抜かれているとは…。この二人には類まれなる推理力があるらしい。
「じゃ、次は私から出すね」
今度は亜優が問題を出すようだ。ふむ、ここは受けて立とうではないか。俺の問題を難なく解いた以上、こちらも即答してやろう。
「ある作家がカンヅメにされていた。彼が無理やりそこから出ていくと、責められる事はおろか、周囲の人々から大いに賞賛され、賛美された。何故か」
ふむふむ…。ヤバい分かんねぇ。しかしここからがウミガメのスープだ。質問を考えなければ。
「その人の性別は関係ある?」
「NO」
彩さんが質問をし、亜優が答える。確かに、この問題において作家の性別についての言及はされていなかった。しかし、それはただこの問題においては特に関係の無いことだからということか。
「作者がカンヅメしてたのは、出版会社か?」
「NO」
なるほど。つまりホテルかどこか…。いや、発想を逆転させろ。カンヅメってのは、俺が想像しているものと全く別物だとしたら…?賭けてみるか。
「その作者は、自分から望んでカンヅメをしていたか?」
「NO」
なるほど、まぁ、自ら進んでカンヅメするような作家ってのも少ないだろうしな。
「カンヅメになってた場所は関係ある?」
「YES」
「やりー、手応えあり!」
彩さんがガッツポーズをする。波に乗ろうか。
「その作者はカンヅメにされた中で小説や漫画を書いていた?」
「NO」
ここまで来るともうほとんど分かったようなものだ。
「缶詰になる直前、作者は乗り物に乗っていた?」
「YES」
「なら、その作家は電車に乗ってた?」
「YES」
「その作者は事故にあっていた?」
「YES…というか、もうほとんど正解だね」
「彩さんは分かりました?」
「もちろん!」
「なら自分が思った正解をホワイトボードに書いてください」
「いいとも!」
俺たちは亜優に差し出されたホワイトボードとペンを受け取り、ペンを走らせる。そして、俺たちはペンをとめた。
「じゃ、二人とも正解をどうぞ」
亜優の合図で、俺たちはホワイトボードを見せる。
『その作者はトンネル内で電車で事故に遭い、そこから抜け出して脱出口を作った』
『その作者は電車で事故に遭っていた』
若干の誤差はあるが、彩さんよりも俺の方が場面は限定的だ。このような場合、より正確な場面を言い当てた回答者が勝ちとなる。
ふむ、と亜優が俺たちの回答を見比べながら頷く。そして一言。
「先生の方が正解に近いから、今回は先生の勝ち」
「しっ!」
「うー、負けた…」
小さくガッツポーズをする。なかなかにいい問題だったが、経験を積んだ俺の目は誤魔化せない。小説家の打ち上げなんかでも結構やるからなぁ。
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