第3話 終焉
俺は大臣と副大臣を招集し、自分たちで青い首輪をつけさせた。
抵抗すれば赤い服従の首輪をつけると脅したのだから従うしかなかったのだろう。
俺を襲ってきた暗殺者には、赤い首輪をつけて指示を出した者を白状させ、黒幕まで明確にしていく。
そして、赤い首輪の者同士で、一階の大広間で愛し合うように指示を出した。
勿論、男女関係なくだ。
「なぜ、こんな酷いことをする。」
「では聞くが、お前たちはなぜ、獣人国を攻めるんだ?」
「それは、反逆者達から国を取り戻すためだ。」
「いやいや、東には人間族はいないよ。亜人国は完全に独立した国家だろ。」
「亜人は人ではない!亜人は穢れた血を持った奴隷だ!」
「穢れた血をもつとどうなるんだ?」
「劣等種なのだから、人に尽くすのは当然の事!」
「となると、俺よりも弱いお前らは、俺に尽くして当然だよなぁ。」
「くっ、何故スライムごときに……」
「だろっ、亜人だって何故人間ごときにって思うよな。」
「ふざけるな!亜人にそんな権利はない!」
「そうか、なら、俺もお前らの権利を認めない。」
「なに!」
「お前らの気持ちを聞けて良かったよ。これで、俺も躊躇なくやっていける。」
俺はその場の全員に隷属の首輪を付け、指示を出した。
「国中の亜人を解放し、馬車と食料を与えて亜人国に向かわせろ。反抗したらこうなる。」
調教のワードを唱えると、全員に神経系の激痛が走る。
「こ、こんな痛みで、我らの尊厳は……ぐわっ!」
5回繰り返すと、反抗的な目をしなくなった。
「それから、貴族制度を廃止し、国を運営するためのリーダーを国民の中から選べ。貴族の資産を90%没収し、国の運営費にあてるんだ。」
「しょ、承知いたしました……」
解放された亜人は俺が隷属の首輪を外して東に送り出してやる。
そんな中、俺の前に立ちふさがった奴らがいた。
「そこのスライム!もう勝手な真似はさせないぞ!」
そいつらは、一目で勇者と分かる姿をしていた。
黄金の鎧・兜に、黄金の剣を持った剣士。
緑基調の帽子と衣に十字をあしらった、神官。
紫の長いローブと杖を持った魔法使いの少女。
全員が一目で東洋人と分かる、黒髪・黒瞳をしている。
そして、どう見ても中坊だった。
「おいおい、ゲームのやりすぎじゃね?」
「煩い、いくぞ!」
神官が剣士に身体強化をかけ、魔法使いが火球を放ってきて、その後ろから剣士が斬りかかってくる。
それなりに訓練で身につけた連携なのだろう……が、火球は簡単に切り落とせる威力で、剣士の斬撃も力不足だ。
「この程度では、ドラゴン1匹にも苦戦するだろう。」
「う、煩い!勇者スキル、サンダー!」
雷撃はメタル化した俺には利かない。
「発動までに時間がかかりすぎだ。」
俺は3人の首に、カチャッと青い首輪をつけてやる。
「うっ、どうやった……」
「キンタマケッタライタイダロウ!」
うわっ! キャッ! ギャウ!
そして、3人の装備を無限収納で奪ってやると、3人は下着姿になった。
「おう、お姉ちゃんは、花柄のブラとパンティーか。中坊らしさ満載だな。」
「お、お前はいったい……」
「お前らは、召喚術で連れてこられたのか?」
「そ、そうだ……」
「帰れるかどうか、聞いたか?」
「魔王を倒したら返してやると……」
「返還術ってのは、召喚した時の座標に送り返す術だ。座標ってのは、どうやら太陽を起点にしてるらしい。」
「どういう事?」
「召喚時と同じ場所に地球がある確率は?」
「??」
「公転周期……一年に1回……」
「さらに、土の中に戻される可能性とか考えると、生存できるのは地表から5mくらいだろ。」
「……両側で考えれば、10mの範囲ですか……」
「地球の直径は1270万メートルだ。」
「じゃあ、生還できる確率は……」
「ざっと計算して、4.5億分の1ってところかな。」
「それって……」
「ムリって事じゃないですか!」
「他の方法はないんですか!」
「例えば、地表とここを直接結ぶトンネルを作ったとする。」
「ノラえもんの秘密道具ですね!」
「だが、地球は絶えずうごいてるからな。」
「そんなの、タイミングを図ってピョンって!」
「時速10万キロで動いてるんだぞ。」
「ダメじゃない……」
「資料によると、召喚術ってのは、3km四方を座標として指定できるんだが、これが成功したのは、奇蹟に近い。」
「どういう事?」
「地球の公転軌道上に3キロの網を張って術者の魔力が切れるまで待ち続けるんだ。」
「12時間維持できれば、700分の1って事か……」
「じゃあ、私たちはどうしたらいいのよ!」
「まあ、ここで暮らすのが無難だろうな。」
「あ、あんたは何者なんだ……」
「俺の場合は、魂だけが召喚されちまったパターンだな。」
「じゃあ、あんたも地球人……」
「まあな。」
「俺たちはどうしたらいい、教えてくれ!」
「この国は、バリバリの差別主義国家だ。」
「ああ、それは俺も感じている。」
「ここよりは、亜人国の方が住みやすいかもしれねえな。」
「だが、魔王がいるんだろ?」
「ああ。だが、鬼人族の可愛いお姉ちゃんだぞ。」
「マジかよ!」
「人族って事で、白い目で見られるかもしれねえぞ。」
「そん時には、また考えるさ。」
こうして、勇者達は亜人国に移住した。
俺も、全ての亜人を解放して亜人国に戻った。
「まさか、本当に亜人を解放してくるとはな。」
「大した事じゃねえよ。」
「それで、勇者たちはどうしてる?」
「冒険者で金を貯めて、牧場でもやりたいと話しておったな。」
「そうか、あいつらも神人国の被害者なんだ。面倒をみてやってくれ。」
「サエモンの頼みでは断れんからな。」
「安心したよ。じゃあ、俺は行くとするか。」
「行く?」
「ああ。まだ世界を見てねえからな。」
「お前、花嫁を放置して行くつもりか?」
「何だよ、それ。」
「ふざけるなよ!お前が言い出した事だろ!」
「えっ……いや、キスされたら人間に戻るとかねえし、スライムと結婚するヤツなんている訳ねえだろ。」
「最初の馬車が到着してから、私がどれだけ悩んだか、お前に分かるか?スライムの嫁だぞ!」
「い、いや、ゴメン……本気にしてたとは思わなかった。」
「子供が欲しければ、養子を迎えればいい。そうなると、お前という個性を受け入れるかどうかだ。」
「……」
「バハムートを狩れる強さと、神人国を相手に一人で立ち向かえる胆力。私が魔王なら、お前は大魔王だ。」
「リーチェ……」
「よもや、私にここまでの決心をさせておいて、反故にはしまいな。」
「……なら、約束の期限まで3か月ある。」
「そうだな。」
「俺は、世界を回って、亜人の奴隷がいないか見て来よう。」
「……逃げるんじゃあるまいな。」
「それに、この国の脅威となるモノが潜んでいるかもしれん。」
「ああ。」
こうして、俺は世界に飛び立った。
3か月後にどうなるか、今はまだ、何も確定していない。
【あとがき】
ふう、終わりました。
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