第2話 実験室、魔法

僕がいるのは魔法陣の描かれたベットの上。

僕は真っ白い布に包まれて、ネグリジェを着せられていた。

部屋には何台もの作業台が乱雑に並べられ、その上には怪しい薬品が適当に置かれている。

これは、実験室のような場所みたいだ。

僕は別の場所に呼び寄せられたということなのだろうか。

思考をぐるぐる回転させる。

その時、ドアが開いた。


「おう、起きたか、実験第一号。」


そう声をかけたのは、気だるげに白衣を羽織った男性だった。

如何にも、研究者といった風貌をしているが、どこか不真面目そうだ。


「実験体ってどうゆうことですか?」


「実験は実験だ。お前は俺が学会で評価されるためのかわいいモルモットちゃんだってわけ。」


男は今1番知りたいことを教えてくれた。

だが、それは僕が聞きたいことじゃない。

まだ知りたいことがたくさんある。

もう一つ質問をする。


「……あなたは誰ですか?僕をどうするつもりですか?」


震える声で聞くと、男はキョトンとした。


「んー、まぁ、いっか。俺は、アイザック・フォン・キリエール。お前を作った。」


アイザックと名乗る男は、気だるげに自己紹介をした。


「作ったって?どうゆうこと?」


「そのまんまの意味だよ。俺がお前をこの世に作り上げた。実験のためにな。」


「実験って…、何?」


「そりゃぁ、なぁ」


白衣にのポケットに手を突っ込みながら、ニヤニヤと笑みを浮かべた。

嫌な予感がする。

本能で、危険が僕に迫っているこを察知した

僕はベットから、飛び起き後ずさる。

でも、すぐに壁が背中に当たって仕舞う。

逃げ道がない。

そんな、袋のネズミの僕を見てアイザックさんはクックックと不気味な笑いをこぼす。

そして、僕の方に近づいてきた。

そして、僕にゆっくりと近づく。


「いや、やだっ…来ないでっ…」


アイザックさんはポケットから手を出す。

手に握られていたのもの注射器だった。


(いやだ!こんなところで注射なんかされたらやばい!!)


僕は必死に抵抗するが、体がうまく動かない。

アイザックさんは目の前までくると、僕の左腕を掴んだ。


「やだ!放して!」


僕が暴れようともアイザックさんには効かない。


「は〜い!小さなモルモットちゃ〜ん、お注射の時間ですよ〜」


「っ!やだっ!!誰か助けて!!」


僕は注射を刺されないように必死で顔を背ける。

アイザックさんが気持ちの悪い口調で近寄ってくることも気にせずに抵抗を続けた。

でも、アイザックさんに掴まれた腕は一向に動かない。

彼にガッチリと固定されてしまっている。

そして、注射針は僕の皮膚に近づいてきた。


「いやっ…やめっ………」


もうダメだ。

僕は目を瞑った。

左腕にチクリとした痛みが走る。


「はい、採血終わり。ふむ、血の色はちゃんと赤なんだな。」


アイザックさんは僕の腕に綿のようなものを当てた。

僕は恐る恐る目を開ける。

注射器の中には濃厚な赤色の液体が詰まっている。

どうやら、彼は採血をしただけらしい。

何か、悪い液体を注射されたわけではないらしい。


「驚かせて悪いな。注射って言った方が怖がりそうで面白いから」


「なんですか!!」


アイザックさんは作業台に僕の血を持って行った。


「ええっと?被験者の血液15m l、タンパク質分解酵素10m l、試薬1から5を0.5mlずつ…」


「何してるんですか?」


「お前の血を調べてるんだよ。お前名前は?」


「篠塚サツキです…」


「サツキかぁ…、」


アイザックさんはペンで小さな紙に知らない文字でサツキと書いた。


「さ〜てと、準備は終わりだ。あとは、五分待つだけだ。」


白衣を脱ぎながら、グィいと伸びをする。


「あの、何を調べているんですか?」


「ああ、魔力検査。お前の血を調べてお前がなんの魔法を持ってるか調べるんだ。」


「魔力…ですか?」


「ああ、まぁ、どこまで知ってるかわからんがこの世界じゃ魔法ってのが使えるやつが一定数いる。不思議に聞こえる?」


「はいとっても。」と答えると、アイザックさんは本棚から一枚の紙を取った。


「これでも見ろ」


そこには、人の血管の絵が描かれている。


「お前がどんな場所から来たのかは知らん。だが、ざっくり説明すると、魔法ってのは、血管の中を血液と一緒に流れてる魔力を使って事象を起こすことだ。」


そういうとアイザックさんは机の中にあったからの瓶を取り出した。

彼が小声で何かを呟くと、瓶の中が何か透明な液体で満たされ始めた。


「すごい…、何これ…」


「こんな感じに、魔法は何かしらを起こす。そして、それは生まれた時から、使える種類が決まっている。」


「魔法には種類があるんですか?」


「ああ、だいたい気体か、液体、個体、どれかを出現させるか変化させるかによって分類されている。だいたい6分類とその他で分ければいい。まぁ、分類ってのは雑だから気にしなくていい。俺の場合は液体を出せる。大体毒だ。」


「なるほど」と、頷きながら聞く。


「うんやっぱりだ……お前はその他の回復……」


その時、ドギャーンと音がした。


「おおっと…、まずいな。」


「なんです??」


「ああ、とりあえず、これやるよ。自分の身は自分で守れ。」


アイザックさんから手渡されたのは、一本の剣だ。


「え、えっと…」


「逃げるぞ…!」


アイザックさんに手を引かれて、実験室を出る。

その時声が響く。

小さな女の子の声が威勢良く張り上げられる。


「吾輩は盗賊のミカ!!回復能力持ちの男児は我々が拐う!!今すぐ身柄をこっちに送れぃ!!!」

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