第12話 お金を稼いでみた

「私がお支払いしましょうか…?お母さんから村を出る時に幾らかお金を頂いてますし。」



通行料が払えない俺は、街の城壁から少し離れた場所で項垂れていた。


「いや、ここでフロンに払ってもらうのは申し訳ないからな。よし、なんとかしてみせるか!」

「わかりました。健さんを信じますね!……それで、何とかするって、何をどうするんですか?」



いや。そうだよね。そうなるよね…。


(どうしたものか…。定番でいくなら、モンスターとかを倒してそれをギルドに持ち込んでとかだが…)



「なあ、フロン?この世界に倒したらお金が貰える生き物とかいないのか?」


――ここまで来る道中も、一応警戒はしていたがモンスターらしき物には出会わなかったし。

森でもジャイアントボアには出会ったが、あれはモンスターとは少し違うイメージだったし…。

ただのデカいイノシシみたいな感じだな。


そうなると、そもそもモンスターというものが存在するのかどうかさえ怪しくなってくる。


「もちろん、ギルドから討伐依頼のある生き物もいますよ?」

「おぉ!!!モンスターがいるのか!」

「もんすたぁー?

「そうだよそう!緑色をした小さな人型のモンスター『ゴブリン』とか!ゼリーみたいな見た目の『スライム』とか!火を吐く『ドラゴン』とかだよ!やっぱり、そういうのを倒してお金に変えるんだろ?」

「いえ、食べ物として売買するのが普通ですね。その、『ゴブリン』とか『スライム』と言うのも聞いたイメージからして、そのような生き物はいないと思います。」


(おぉ……それ、猟師じゃね……?それに、そうなるとモンスターを倒しまくる、俺の冒険者としての異世界無双はあり得ないのかよ…)


「あ、でも、ドラゴンは居ますよ!神獣『イグニス』様ですね。獣人族の一種である『龍人族』の祖先であり、太古の昔に人々に火を与え、文明を発展させたそうです。」

「また、『神獣』か……それじゃあ、倒すことなんて不可能だろうな。」

「神獣を倒す!? 健さん、なんて事言うんですか!?  神獣は神の使いなんです!倒すなんて、それこそ神の怒りに触れる行為ですよ!?」

「いや、例えばの話だよ。もし仮にその神獣とやらが人間種と敵対したらこわいなーって思ってさ。」

「確かに、もし仮に神獣様と戦うことになんてなれば……間違いなく滅ぼされてしまうでしょうね…」



この世界の神獣とやらは文字通り、神様くらい強いのだろう…

そんなものと戦えば滅ぼされるのは明白か。



「それで、結局お金の方はどうしますか?」

「おぉ、そうだな。フロン、まだジャイアントボアの肉は残っているか?」

「はい、多めに分けて頂いたので残っていますが……コレをどうするのですか?」

「屋台をするのさ」

「やたい?ってなんですか?」



どうやら食べ物を調理する文化はあるらしいが、調理後の食べ物を売るという文化は馴染みないらしい。

王都や街中に行けばあるそうだが、ここは塀の外。

そんないつ、動物に襲われるかわからないところで料理するなんて思いつきもしないのだろう。



「――………なるほど。ジャイアントボアの肉を串にさして、味付けしてから燒く。それを売ってお金をいただく訳ですね。」

「そうだ。俺が焼いていくから、フロンはそれを売ってくれ。」



フロンの可愛さがあれば、さほど味の良さ悪しは関係なく売れるだろう。

味付けにはオロナ草から取った塩を使えばいい。


つまり、原価0円で販売できるのだ。


それにここは検問所の近くだ。

商売をするには正に打って付けだろう。


「流石は健さん。面白い事を思い付きますね。」

「あぁ、昔、祭りの屋台の仕事をしてた事があるからな。任せとけ、余裕で2人分の通行料くらい稼いでやるよ。」








―――「よし、2人分の通行料だな。これが通行許可証だ。街を出る時にも必要になるから無くすなよ。それと、あの娘が持って来た肉だがなかなか美味かったぞ。礼を言っておいてくれ。」



昼前から始めたにも関わらず、夕方には通行料が十分に払えるくらい稼げていた。

それに、門の近くで商売させて貰ったお礼に、門番にも焼き串を渡しておいた。


大成功だ。

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