第13話 異世界でストーカー被害にあってみた

――――「結構人で賑わってるな。それに、街の外からでも見えてたが、この水車、かなり大きいな…」


なんとか『ウルシア』の街に入れた俺たちの目には、水車と水路と、そして多くの人々で溢れかえる街並みが映る。



「ウルシアはその豊かな水源のおかげで、昔から多くの商人達が休憩のために立ち寄るんです。そしてその商人たちのおかげで、多くの買い物客が集まるようになり、商業都市として栄えて行ったみたいです。」

「なるほどな…。人が集まるところに物が集まり、その物にまた人が集まるわけか。それにしても、見たことのない種族が結構いるみたいだな……」

「はい、このウルシアの街は獣人族にも人気な街ですね。ここの主民族である、『水牛族』が穏やかな種族であることもあり、争いが少ないんです。」


「争いの少ない街ねぇ……。まぁ、これだけ栄えてたら裏の顔の一つや二つあるか。」

「何か気になることでもありましたか?」

「いや、ちょっとな。それより、フロン。財布とかバッグは肌身離さず持っておくようにしとこうな。荷車の荷物は…まぁ、最悪なんとかなるか。」

「?…………貴重品の管理はわかりましたけど、本当にどうされたのですか?」

「ひとまず宿を取ろう。そこで話すよ」





「お客さん達、旅のもんかい?部屋はどうする?」

「王都まで行く途中なんだ。部屋は一緒で構わない。代金はこれで足りるか?」


「えっ!?私も健さんと一緒の部屋ですか!?」

「嫌なのか?無理にとは言わんが…」

「いえ、嫌という訳では無いのですが…」


フロンが赤くなっている。

可愛いな、チクショー!



「なんだい、そちらの嬢ちゃんはあんたの彼女じゃないのかい?てっきり彼女かなんかだと思っちまったよ。」

「まぁ、今はまだ、ただの旅の仲間だ。」

「そうかい、そうかい。部屋は2階の1番奥だよ。荷物はこっちで預かろうか?」

「荷車だけ預かってくれ。荷物は全て部屋に運び込むよ。」

「はいよ、まいどあり。そうだ、食堂は1階だ。他に何かあれば声をかけてくれ。」

「ありがとう。とりあえずは大丈夫そうだ。」







―――「それで、健さん。何をそこまで警戒されているのですか?」


どうやら俺の心の機微から、何かに俺が警戒している事をフロンに気づかれたらしい。



「この街に入ってからずっと、俺たちの後を着いて来ている奴がいる…。おそらくは門の外で、俺たちが商売をしていたのを見たんだろうな。」


(目的は金か?あるいは迷い人である、俺の知識か…。どちらにせよ、油断はできないな。)


「そうなんですね。私は全然気づきませんでした…。すみません…」

「いや、フロンが謝る必要はないよ。これだけ人の多い街だ。いくら獣人族の勘が鋭くても気付くのは困難だと思うぞ。しかし、向こうもそれが狙いだろな。フロンがいるのをわかってて、付かず離れずの距離を保ったまま尾行してきていた。」


「流石、健さんですね。」

「まあ、前に探偵の仕事をしてた時があってな…。尾行なら、こっちもプロだ。相手の考えてることが手に取るようにわかるぞ。とはいえ警戒をしなくていい訳じゃないからな…。フロンもできるだけ俺から離れないようにしてくれ。」

「わかりました。」

「ひとまず直ぐに襲ってくる事は無いだろうし。今日は疲れた。早めに休んで、明日は朝から市場に行こう。」



異世界の市場…きっと見たこともない商品が沢山あるはずだ。

ストーカーがいるのは残念だが、それでもフロンと買い物か……可愛い服、たくさん買ってやろう。



「またエッチなこと考えてますね……変態。」

「あはは…そうだフロン腹減っただろう?1階に降りて飯でも食わないか?」

「確かにお腹空きましたね。行きましょうか。」

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