第11話 次の街を目指してみた

「なあ、フロン。この世界にはどれ位の種族が存在してるんだ?」



妖狐族の村を出てから数日、俺はずっとフロンにこの世界の事を聞いていた。



「そうですねー……。主な人間種で言えば――」



この世界では、普通の人間達である『人族』、フロン達のような神獣を祖先に持つ『獣人族』、人族の中で神に見出され進化した『聖霊族』というものが大まかな人間の種類らしい。

それらをまとめて『人間種』と呼ぶとのことだ。



(哺乳類のなかに人や豚や牛が含まれている感じで、人間種といえど各種族は別物らしいな……)



「その、『聖霊族』とはどんな特徴があるんだ?人族から進化したっていうのはどういうことだ?」

「『聖霊族』とは、人族の中で神の加護を授かった者達の末裔のことです。神の加護により大変、長寿出そうです。」

「フローラも言っていたが、獣人族も人族よりは長寿なんだろ?それ以上ってことか?」

「はい。私達『獣人族』も人族の寿命に比べれば、その寿命は3倍ほどでしょうか?しかし、『聖霊族』には寿命という概念が無いんです。」



(寿命が無い種族の末裔……?どういうことだ?)



「個体としては死んでしまう事はあるそうですが、その個体の記憶を引き継いだ個体として、この世界に転生するそうです。そうじゃ無いにしても、個体としての寿命も数千年ととても長いですが…。」


(なるほど…輪廻転生の加護とでも言うべきか。)



現代医学において、人の寿命とは細胞分裂の限界数に達した時のことだと聞いた事がある。

細胞が死んで、また再生する。

これを繰り返して行くことが生命活動だと考えて。

『聖霊族』の進化というのは、この細胞分裂の回数がとんでもなく多いか、あるいは一回の細胞分裂にかかる時間がとてもゆっくりなのか。

あるいはそのどちらもか…?



「その『聖霊族』はどんな見た目をしているんだ?」

「うーん。健さんがイメージし易い言い方をするなら、昔の迷い人によって『エルフ』とか『ドライアド』とか呼ばれるようになった種族がいますね。」



―――エルフに、ドライアドだと!?

是非ともお近づきになりたいものだ…。

きっと、さぞかし美しい姿をしていることだろう………




「もーっ!また健さんがえっちなこと考えてます!本当に変態さんですね!」

「あぁ、すまん!ついな。やっぱりお姉さん系は異世界には欠かせないんだよ…。」

「意味がわかりません!……それに…健さんには私がいるじゃないですか………。」

「何か言ったか?最後の方が聞こえにくくて。」

「なんでもありません!―――それに、見えて来ましたよ!水の街『ウルシア』次の目的地です。」




俺たちは妖狐族の村を出てから王都を目指しつつ、道中にある街や都市を散策する予定でいる。

ここ、『ウルシア』もその一つだ。


―――『ウルシア』。水の街と呼ばれる通り、遠くからでも見える水車や水道が街中にあるな。

昔から大きな川の側で文明は発達すると言うが、この街もそんな所だろう。



そして何よりも、この街には『水牛族』と呼ばれる種族が多くいる!

水牛族の多くは、人間よりも高い身長を待ち、牛のようなツノを持つとフロンから教わった。


おそらく、この世界の種族名は俺と同じ迷い人が考えたものだろう。

つまり、牛と名前につくからにはさぞかし豊満な身体をもつお姉さんがいるばずだ!


「急ぐぞフロン!楽しみだなぁ!」

「またエッチなこと考えてるでしょ!?――って、待ってくださいよー!」



俺の足取りはとても軽い。

元いた世界では仕事ばかりで、ろくに女の子からモテなかったかったからな……


ここは異世界。

俺の迷い人としての特別生でモテまくってやる!







――――と、決意して走り出したは所まではよかった。

しかし、俺たちは街に入る所で門番に止められてしまったのだ……。


「止まれ!ここで、通行料を支払ってからじゃ無いと街には入れないぞ。通行料が確認されてから、通行許可証を発行するから。」




俺、この世界のお金なんて持ってないんですが…!?

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