第10話 娘さんを貰ってみた

「さて、健殿。此度の活躍、誠に感謝申し上げます。私どもにできるせめて物お礼として、何か感謝の印を用意したいと思います。何なりとご希望のものをおっしゃってください。」

「俺は、フロンがほしい!」


(俺はまだまだこの世界を見て回りたい。しかしそれにはこの世界の知識が足りない。フランが着いて来てくれたら、とても助かる。)


「もちろん、フロンの意思を優先する。俺はまだこの世界を見て回りたい。フロンとなら、絶対楽しくなると思うんだ……どうかな?フロン。俺と一緒に来てくれないだろうか?」


(ただ、ちょっと異世界の知識を貸しただけで、族長の娘を貰っていくのは貰いすぎかもしれない…。それでも、フロンとならきっと楽しくなるはずだ。)



「………。」


フロンは悩んでいるようだ。


(まぁ、フロンは妖狐族の巫女の娘。そう簡単に種族を捨てるような決断はできないだろうな…。)


「健さん。一つだけ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「私、まだ…その……子供ができちゃうようなことしたことないんですけど……それで、その…。本当に私でいいんですか?」

「なんの話だ?」

「え?私と婚姻したいという事ですよね?」


(確かに、フロンが欲しいなんて言い方をしたらそう捉えられても仕方ない。ここはちゃんと誤解を解いとくべきだよな……?)


「あのな、フロン。結婚はとりあえず置いといて、俺はフロンに旅の案内役を頼みたいんだ…。だからその、処女とか気にしなくていいぞ?」


フロンの顔がみるみる赤くなっていく。


「健さんのばかー!!!」


フロンが『長の間』から走って飛び出していってしまった。


「あのー…この場合、俺はどうしたらいいですか?」

「健殿は本当に面白いお方ですね。多分フロンはビックリしてしまっただけだと思いますよ。追いかけてあげていただけませんか?これは、族長としてではなく、あの子の母としてのお願いです。」








――――「あのー…フロンさん?怒ってる?」


屋敷の中や、村の中、いろいろな所を探して、村の外れの小川の近くでようやくフロンを見つけた。

体操座りで身体を丸めている彼女はとても小さく見える。


(これでも、フロンは20歳を超えてるんだよな…。あんまり子供扱いした接し方は良くないよな。てか、可愛い。モフモフしたい!)



「怒ってますよ。そうやって直ぐに、えっちな目で見てくる健さんなんて知りませんからね!」


(流石は妖狐族の長の娘。フローラほどではないが俺の心も読めるか……。つまり、妄想の中でなら、あんな事やこんな事が!?)


「もうっ!なんでこんな時にそんな事考えてるんですか!?健さんは本当に変態さんですね!」

「すまんすまん。ちょっと調子に乗り過ぎたな。」

「ちょっとじゃありません!あんな…私の尻尾にあんな事をするなんて…!?」


フロンとのこういう会話が何となく心地よく、とても楽しい。


「それで、フロンさっきの話なんだけどさ。どうかな?俺と一緒に旅に出ないか?」

「いや…では無いですけど…。私は妖狐族の長の娘です。村の皆さんを置いて出て行くなんて……」


「行きなさいフロン。あなたは自由なのよ。自分の好きなように生きて、世界を知って、幸せを見つけなさい。」

「お母さん……でも…」


フロンの目には今にも流れ落ちそうなほど、涙が溜まっていた。


「ほんとに、大きくなってもフロンは甘えん坊さんね。……健さん、フロンをよろしくお願いします。それに、気が向いたらいつでも帰ってきてくださいね?」

「はい。ありがとうございます。」


翌朝、俺とフロンは妖狐族の村を旅立った。

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