第6話 獣人族の身体についてと禁忌について聞いてみた
「俺からも一つ聞いていいか?」
「なんでございましょう。」
(彼女は妖狐族の長。おそらくフロンは知らない事も知っているはず。いろいろ聞きたいことはある。しかし、その中で俺が最も聞いたいことはただ一つ)
「獣人族と人族は、SEXしたら子供はつくれるのか?――ぐっふっ………。」
そう尋ねた瞬間、横にいたフロンに思いっ切り殴られた。
「健さん!なんて事を聞いてるんですか!?馬鹿なんですか!?もっと他に聞くべきこと無かったんですか!?」
一見大人しそうな見た目の彼女がこうも動揺するとは思わなかった。
「いや、肉体構造は人族と同じなのかと思って。」
「じゃあ、そう聞いてくださいよ!何ですかそんな……、健さんの変態!」
(赤面する美少女獣っ娘からの罵倒……ご馳走様です。)
「あっはははは。ひぃー。お腹痛い…。クッ…クッ…ククク…」
「お母さん、そんなに笑ってないで怒ってよ!」
さっきまでの畏まったフロンではなく、ただの母と娘の会話のようで微笑ましかった。
「はぁー…失礼しました。健殿、獣人族は人族とほとんど構造は同じみたいなものでごさいます。もちろん、性行為で子を孕むこともできるでしょう。」
美人の口から聞く、性行為という言葉はとても刺激的だった。
「そうですね…、例えばフロンと試してみるとかはどうでしょう?フロンは私の可愛い1人娘。しかし私はなかなかに健殿を気に入りました。本当は私が相手をしたいところですが、私は妖狐族の長。そう易々と多種族に嫁ぐわけにはいきませんから。それに引き換えフロンは自由です。健殿になら、可愛い娘を差し上げてもよいかもしれませんね。」
「お母さん!!!」
(いや、フロンはどう見ても未成年だろう…。それはいただけないな。)
「そんな心配する事もありませんよ。この世界では15の歳で結婚することは珍しく無いですから。そもそもフロンは既に20を超えております。」
また、心を読まれてしまったようだ。
「え!?フロンって何歳なの?」
「変態さんには教えてあげません!」
(どうやら、妖狐族は合法ロリ種族らしい…。素晴らしいではないか異世界!!!)
フローラはまた笑っている。
おそらく俺の心を読んでいるのだろう。
―――その日はそのままフローラの屋敷に泊めてもらった。
翌日、俺はフロンに妖狐族の村を案内してもらっていた。
「私達妖狐族は比較的、人族と友好な関係をまた種族です。私達が人族に狩りで得た獲物を提供して人族から衣服や食器なんかと交換するんです。」
「なるほど、だから服装があちらの世界風な物が多いのか。」
今日のフロンは、長袖パーカーに短パンという、いかにも活動的な女の子の服装をしている。
「獲物を狩るという事は、道具や罠を使うのか?」
「そうですね。主に罠を使っています。獣人族の身体能力がいかに高いと言えど、それはあくまで人族に比べてです。野生動物には太刀打ちできないですからね。」
妖狐族の村に来てから、俺は小さな違和感を持っていた。
所々に近代的な物は存在するが、家は竪穴式住居風な作りが多い事、電気などを使っている様子がないこと。民間療法的な治療がメインであることなど、不可解な点を上げればキリがない。
つまり、文明が発達していないのだ。
(おかしくないか?迷い人は、現代の知識をこの世界に持ち込んでいないのか?いや、ワンピースやパーカーの様な服があると言うことはそこまで古い時代の人しかいない訳では無いだろう…)
「フロン、迷い人がこちらの世界に持ち込んだ物で、魔法のような物は無いのか?」
「あるにはあります……。」
急に彼女の表情が曇った。
「この世界では、万物の理に干渉するような力を神や神獣以外が使うことを禁忌としています。実際に、数十年前に隣国に現れた迷い人が燃える水を動力に自由に動く鉄の塊を作る研究をしていたそうです。」
(………燃える水。おそらくガソリンのことだろう。それに動く鉄とは多分、自動車かその類の物だろう。)
「その国は今、どうなっている?」
「滅びました…。」
(やっぱりか…。おそらくこの世界における神というものは、文明が高度に発展する事を良しとしていない。そうでなければ、わざわざ神獣を作り、それによって種族を導く巫女を生み出す必要はない。直接その種族に干渉すればいいだけのことだ。しかし、文明が発展し過ぎないのも良く無い。そこで、俺のような迷い人をこの世界に招き、適度に文明レベルを維持しているのだろう。)
「禁忌を犯すと何が起こるんだ?」
「その滅んだ隣国では、大量の魔物と呼ばれる異形の生物が大量に国に押し寄せ、生きとし生けるものを皆殺しにしたと言われています。その国以外にも、禁忌に触れた国は自然災害や病気の蔓延により滅んでいます。その為、今は迷い人を王都で保護し、禁忌を犯さないように国が管理しているそうです。」
「そうか……。」
「健さんは、そんなことしませんよね…?」
彼女がとても不安そうな顔をする。
自分が連れてきた人間が、自分の村を滅ぼす。
そんな最悪なシナリオは、想像するだけで心苦しくなる。
「安心しろ。俺はこの村に来たばかりだが、この村を気に入っている。そんなくだらないことで、この村を滅ぼすような事はしない。それに、そんな禁忌の研究ができるほど賢く無いからな〜。」
「ありがとうございます。」
彼女を安心させるために思い付いただけの言葉では無い。
俺は本当にこの村が、何より彼女のことが気に入っているのだ。
―――「おーい!村のすぐ近くにジャイアントボアが現れたらしい!直ぐに避難しろ!」
遠くから、若い獣人族の男が駆け寄ってくる。
「どうして!?ジャイアントボアは森の奥に住む動物のはずなのに……!」
「落ち着けフロン、見つかったのはジャイアントボアの足跡だけだ。でも、村のすぐ近くまで来ている。巫女様のところに一先ず避難するんだ!おい、健!お前も一緒に行くぞ!」
慌ててフローラの所に向かう獣人族の男と、恐怖からだろう一言も話せないフロンを見て事の重大さを理解する。
「おぉ、わかった!……けれど、たまたまジャイアントボアが近くを通っただけの可能性は無いのか?」
「ジャイアントボアは警戒心の強い生き物だ。村の作物が目当てなんだろうが、そういう風に村を襲う時は数日前から村の近くを偵察する習性があるんだ!」
(これは、近々戦闘シーンに入るパターンだな……)
異世界ものの王道ルートを突き進んでいるような、そんな感覚だった。
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