第3話 異世界について聞いてみた

「そういえば、俺の名前は須藤健。須藤が苗字で健が名前だ。君の名前は?どうしてこんなところにいるんだ?」


ついつい獣っ娘の事を聞いてしまったが、それよりも先に聞くべきことだった。


「私の名前はフロン。獣人族には苗字はありません。今日は薬草を探しに森に来たのですが、道中でジャイアントボアに出会ってしまい、何とか離れようとしているうちにここまで来ました。」


(ジャイアントボアとはおそらくあのデカイノシシのことだろう…。それにしても、薬草か。どんな効果があるのだろうか。)


「フロン、その薬草とはどんな見た目で何に使うんだ?」

「枝分かれした葉をしていて、表面に塩の結晶を作るそうです。それを私達はすり潰して液状にして、傷の消毒や、元気がない時の薬に使っています。一般的にはオロナ草と呼ばれていますね。」


(なるほど、塩分による消毒…。かなり民間療法的ではあるがあながち間違ってはいない。それに、元気のない時に飲むというのは、おそらく脱水症状か何かの事だろう…。というか、それヨモギモドキのことじゃないか…?)


「フロン、たぶんそのオロナ草だが、これのことじゃ無いか?」

「そうです!それがオロナ草です!こんなに沢山…。どこに生えていたのですか!?」


(やっぱりそうだったか…。でも、俺がこれを見つけたのは森の少し奥だし、今からそこまで戻る訳にはいかないな。)


「少し森の奥の方に生えていたんだけど、よかったら分けてあげるよ。その代わり、この世界のことを知っている限りでいい。教えてくれないだろうか?」

「この世界?もしかして、健さんは迷い人でしょうか。」

「なんだ、その迷い人とは?」

「迷い人とは、そのままの意味で、別の世界からやってきた人たちの事です。少ないですが、王都に行けば何人かはおられるそうです。」


(なるほど…異世界人は俺以外にもいるのか…。俺だけの特別設定じゃなくて少し残念だ…。)


「迷い人は異世界の知識をこの世界にもたらし、世界の繁栄に貢献すると言われています。ただ、中にはその異世界の知識を使って悪い事をしたりする事もあるそうで、今はそのほとんどの迷い人が王都で国の管理下にあると聞いています。」


(確かに。この世界にとって、俺が元いた世界の知識は国を発展させる希望にも、破滅させる脅威にもなり得るのかもしれない…。)


「健さん…?」


フロンの不安そうな声で自分が深刻な顔をしていたことに気づいた。


「あぁ、すまない。少し考え事をしていた。そうだ、フロン。この世界には魔法は存在するのか?」


(やはり異世界の醍醐味は魔法だ。俺は使えなかったが、もしかしたら鍛錬を積めば使えるようになるかもしれない。)


「魔法…?多分ですが、似たような物は存在すると思います。」

「と言うと?」

「先程、神獣には万物の理に干渉する力があると言いましたよね。おそらく、それのことだと思います。」

「うーん。その神獣の力とは、具体的にはどんな事ができる力なんだ?」

「例えばですけど、枯れた草木が神獣の吐息で生い茂るほどの成長をしたり。火を操り、森を焼き新たな生命を誕生させたりする。そんなお伽話を聞いたことがあります。」


(まさしく俺がイメージする魔法そのものだ。しかし、お伽話と言うくらいだから、魔法が普及しているなんて事はないのだろう…。残念だ。)


「わかった。とりあえず今聞きたかったことはこれぐらいだな。ところで、フロンはこれからどうするんだ?」

「村に戻ろうと思います。健さんもよかったら一緒に、私の村にお越しいただけませんか?何かお礼がしたいんです。」


(まあ、行くあてもないし、獣人族の村も気になるし。着いて行くことにするかな…。)


火の後始末を終えて、フロンの村に向かう準備をする。

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