いざ征かん、遊園地!

「とーちゃーく! 遊園地ー!」


「ここが遊園地! すごい、人が沢山います! 公園の超絶バージョンアップ版……なるほど、確かにそんな感じがします!」



 電車で移動すること数分、到着した駅から歩きで更に十数分。俺たちは目的の場所へと到着する。


 入場口にて騒ぐ二人。はしゃぐ気持ちは分かるが、もうちょっと人目を気にしろよ。特に角矢。


 にしても遊園地か……。本当に久しぶりに来たな。

 久しぶりすぎてもうほとんど初めて来たって言っても過言じゃないくらいだ。


 中はどんなもんだったか。人混みだって得意なわけじゃない。早いとこ入ろう。


「角矢、チケット」

「あいよ。はい、これ」


 渡されたチケットを確認。うん、こいつは鳥場さんが贈ったチケットで間違いない。


 何故そう断言できるのかと言うと、プレゼントの相談に乗ったのは何を隠そうこの俺だぜ?

 実物の写真とかをSNSCERDENで見てるんだし、それくらいのことは覚えている。


 角矢に悪気はない上に、鳥場さん本人が自由に使っても良いと日和った発言をしたが故の結果とはいえ、何だか罪悪感が……。


「このチケットをどうするんですか?」

「入場口のスタッフに見せて、入場許可証を貰う……で合ってるんだっけ?」

「そうだよー。それじゃあ行こー!」


 チケットの使い方をレクチャーしてもらいつつ、早速入場。

 スタッフから歓迎の定型文お言葉をいただいてから中の世界へ足を踏み入れる。


「おお──!! これが遊園地……色んな物がありますよ! 空中を走る長い線に大きな輪っか! 全部初めて見ます!」


 入り口を越えると、ラフラは驚きの声を上げる。


 入場口を越えた先には広々とした空間に沢山の人々の姿。さらに奥にはアトラクション、長い行列、マスコットキャラがファンサ中だ。


 ここが遊園地か……。いざ中に入ってみれば、俺も少しだけワクワク感を覚えるな。

 ラフラも実際の遊園地に大興奮の模様。喜んでいるようで何よりだ。


「うーし、それじゃ前もって言った通りまずはジェットコースターからにしよっ!」

「え、それマジで言ってたの? いきなりそれはちょっと……」

「じぇっとこーすたー! 先ほど言っていた物ですね。気になります! 行ってみませんか!?」


 角矢は早々に有言実行を果たそうとする。

 本当にジェットコースターを最初にするつもりらしい。まさか本気とは思わなんだ。


 何もかもが興味の対象でしかないラフラも、ジェットコースターがどんな物か知らないために角矢の意見に同意を示す。

 意思疎通できないくせに意見が一致するとは。奇妙すぎるぞ。


「あーもう、分かったよ。角矢の言うこと聞くって約束だもんな。最初はそれでいいよ」

「へへーん、やったね。じゃあ行こう!」


 とはいえ今日は角矢が主役。付き添いである俺が駄々をこねるわけにはいかない。


 この後は大会で優勝してもらわなきゃいけないんだ。

 当人の精神的なコンディションを支えるという意味でも、俺はイエスマンになってやらなければ。


 そんなわけでジェットコースターのあるエリアへと移動をする……のだが。


「あっ、見てください! あそこに丸くて大きな生き物が! あんな生き物が遊園地の中にいるなんて……ちょっと見てきま──」

「ストップストップ! あれは中に人が入ってる着ぐるみだ。まずジェットコースターが先だろ」

「もー、何してんの? 置いてくよー?」

「ああ、待て! ほらラフラ、後で行くから今はこっち!」

「あーん、シュージさんのいじわるぅー……」


 その間、周囲に溢れる未知に興味津々なラフラが明後日の方向へ消えそうになるのを止めつつ、そんな隠れた苦労を知る由も無い角矢は先へ行こうとする。


 苦労が……苦労が絶えない。なんか、俺だけ楽しめてないぞ!?

 角矢とラフラ、どっちにも気を使わないと誰かが迷子になってしまう!


 遊園地って誰か一人に負担が集中するような場所だっけ?

 俺の記憶ではそんな代償を払う所じゃない気がするんだが。ちょっと不服だ。


 ともあれ遊園地で一人思い悩むなど場違いなこと。

 初っぱなから絶叫系にはなってしまったが楽しまないとな。……まぁ、楽しめる自信はあんまりないけど。

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