才能なんて無いと嘆く
「か、勝てねぇ……」
友人たちに頼んで練習相手になってもらって小一時間が経過。
鳥場さん、穴唐、瀞磨との各三回勝負の三連戦を行った結果、俺は一勝を収めることなく全敗してしまった。
マジかよ……! 確かに相手が使うデッキは環境級でって頼んだけれど、それは俺も同じこと。
オリジナルの調整はしているが、デッキとしての強さだけ見ればTear1相当の内容なんだが……。
「こりゃ想像以上だな。いや知らないわけじゃなかったけどさ」
「本当に引き悪いよな、お前。三戦連続で初手全部8コスト以上とか天文学的確率だろ」
「トリガーも一回も引けてない。運に見放されてる」
「ボロクソ言ってくれるな、心が痛い」
この通り友人三人も引くくらい俺はプレイヤーの才能が無い。
もはや調子悪いとかのレベルじゃない。マジで何が原因でこんなに運に恵まれないのか俺自身分からないんだわ。
「デッキ貸して。こういうのはそもそもデッキに問題があるパターンかも。初手高コス五枚は普通あり得ない。僕が回してみる」
「そうかもな。うん、瀞磨は一番デッキビルディング力あるし、本人がそう言うんだから間違いねぇって。だからそう落ち込むなよ」
「悪ぃ、二人とも。そうだと信じるよ」
流石に異常と思ったのか、瀞磨は俺のデッキを使ってみるとのこと。
穴唐から励ましの言葉を貰うけど、正直嫌な予感がするんだ。
だって、こういうのって大体……。
「……勝った。すごい強い、このデッキ」
「負けた……。マジで同じデッキ? 手応えが全然違うんだが?」
ほら見ろ。完全に予想通りだった。
瀞磨の相手は鳥場さん。その人は先ほどまで同じデッキを使っていたはずなのに、ここまで反応が変わるのか。
それが俺の傷付いた心にダイレクトアタックを決める。
これじゃ本当に俺がただ下手くそみたいじゃん……。実際そうかもしれないけどさ。
「集児、このデッキの構築、真似していい? ちょっと気に入った」
「好きにしろよ……」
俺の苦悩なんてまるで関係ない──というか実際他人事──様子の瀞磨は、暢気にもデッキがお気に召した模様。
いいよな、さも平然とデッキを回せる奴は。俺のような弱小とすら呼べない奴の気持ちなど分かるまい。
はぁ~……、と大きくため息を吐かざるを得ない。
だってこれじゃあ優勝どころか初戦敗退濃厚だ。エンバーニア購入が遠のく……。
「こう言うのも悪いが、束上が自力で優勝するのは率直に言って厳しいな。うむ、無理だ」
「ぐっ、自覚はあるとはいえ、そうはっきり言われるとより傷付く……」
この状況を目の当たりにした鳥場さんから厳しい一言を貰う。
うう、分かってるさ。もしかしたらって思ってここに来たけど、結果は決まってるって知っていたよ。
でも、それを理解した上で言われると精神的にきつい。
最も人を殺すのはナイフではなく真実。ファミスピのフレテキにそんな名句があった気がしたな。ふと思い出してしまった。
「この不運な体質を一週間で改善する方法は現状ない。こんなにファミスピが弱いのは昔っからなんだろ? 尚更難しいだろう」
「毎日みっちり勝負して無理矢理叩き直す方法はどうだ? あー、でも時間取れないと厳しいか」
「初心者でも優勝できた構築でやるのは? でもキーパーツが禁止になってるからリペアが難しいか」
真面目に俺の特異体質について考えてくれているようだが、出るアイデアは微妙なものばかり。
やはり優勝は諦めるしかないのか……?
でもラフラやエンバーニア本人のためにも簡単に折れるのは男として納得は出来ないだろう。
何か良い方法……。俺が確実に半額券を手に入れる、犯罪以外の方法は無いのか……!?
「ん? あ、なんかみんな集まってる。おーい、なんでそんなみんなして暗い顔してるの~?」
男四人でうーんと頭を悩ませていると、この場に似合わない気の抜けた声がかかる。
全員が振り返ると、そこにはすでに退勤したはずの角矢がいたのだった。
†
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