我ら、カドショ常連三連星!
「じゃあ、俺は皆と紙しばきにいくから、その間は静かに頼むな」
『分かりました。この練習で自信がつくことを祈っていますね』
一通りデッキを組むと、交換用のパーツをいくつか持参しつつ宝屋のカードショップに赴く。
気付けばもう五時。時間的に角矢は退勤しているだろうけど、他の皆なら多分いるだろう。
余計な混乱を招かないよう、ラフラにはカードの状態でバッグの中で待ってもらう。昼間のようなことは控えたいからな。
「あ、やっぱり居た。おーい、やってる?」
「おぉ、そのまま帰ったのかと思ってたぞ」
「午前中は熱心にカード探してたから、こっちから声掛けようにも気付かなさそうだったからなぁ。旧枠のカード探しか?」
「おっす」
カードコーナーへ行くと、予想通りそいつらはいた。
挨拶をすると返事をしてくれる個性豊かな面々は、午前中に卓でファミスピをやっていた奴らだ。
この様子じゃ昼食後もここに戻って紙をしばいてたんだろう。
全く普段と変わらずで安心するな。
「
「どうした、そんな改まって。さてはまた何かのプロモを譲って欲しいとかか?」
早速俺は今回ここへやって来た理由を説明すると、年長である鳥場さんが反応してくれる。
一応紹介しておこう。今真っ先に反応してくれたこの人は
最年長で身長も180cm後半もあるカードゲーマーとは思えない恵まれた図体の持ち主。まぁ横にも大きいんだけど。
大型大会で優勝経験も何度もある実力者。ちなみに角矢の一番のファン……まぁつまりガチ恋勢だ。
「いや、今回はそうじゃなくて……俺の新作と勝負して欲しいんだ。出来れば環境クラスのデッキで」
「は? 束上がデッキを!? おいおいどうした急に? ファミスピの才能ないからプレイは専門外って言ってなかったっけ?」
デッキケースを取り出すと、それを見て大袈裟に反応をする奴は
大体同い年だけど、実家が太いために食事をよく奢ってくれる。見た目はカードゲーマー相応だな。
「どういう風の吹き回し?」
「まぁ、ちょっとな。来週開催される大会でどうしても勝たないといけなくてさ」
「来週……ってことは二つ隣の町のやつか」
理由を訊ねるのは
実を言うとこいつに関して知ってることは少ない。
小柄で口数も少なくて、いつもフード被ってボソボソしゃべるって印象。使うデッキもまぁ陰湿。
でも結構ノリが良いんだよな。あと頭も良くて、意外と頼りになる。
この三人が俺の友人だ。カードで繋がった仲である。
「大会か。というかどうしていきなり?」
「どうしても欲しいカードがあるんだけど、今の財布じゃそれが難しくて、そこの優勝賞品の全品半額券がどうしても必要なんだ。あれがないと買えないレベルでさ……」
「なるほど。そういう事情か。よほど欲しいカードなんだろうな」
今回の経緯に到った理由を話すと、穴唐はすぐに察してくれる。
収集専門の俺がここまで躍起になるほどの価値のある物なんだと皆は分かってくれるはず。
他の誰にも言えないことだけど、意志を持つカードであるエンバーニアを手に入れるため、この一週間で特訓しないといけないわけだ。
ただでさえ試合弱者である俺がどこまで行けるのか……今の自分自身を見直さないといけないんだ。
「ふっ、理由は何であれ束上が一時的でも復帰したのは良いことだ。どれ、まずは俺が手慣らしに軽めのデッキで戦ってやろう」
「あざっす。あと良かったらなんですけど、何試合かしたらデッキ見て調整とかの手伝いをしてもらっていいですか?」
「オッケー。ま、お前の作るデッキなら大丈夫だろ」
というわけで、まず最初の相手として名乗りを上げたのは鳥場さんだ。
大会優勝経験もあるこの人なら安心して本気でプレイできる。
胸を借りるつもりで挑むぜ。
「頑張れー。あ、その次僕ね」
「瀞磨はデッキが陰湿で何か嫌なんだけど……」
「失礼な。
「めちゃくちゃ陰湿だが?」
二番手が陰湿な奴に決まったところで、卓の上にカードが並べられる。
こうして自分の意志で組んだデッキを自分で広げるのはいつぶりだろうか。なんか緊張する。
まだ結果は分からないにしても、俺はもう一度プレイヤーとしてファミスピを始めるべきなのかな。
「準備は良いな? それじゃ、始めるぞ」
「はい。今の俺の実力、鳥場さんで確認させてもらいますよ」
そして、試合が始まる。俺の数年ぶりとなるファミスピの火蓋が切って落とされた──
†
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