怪しい噂と怪しい気配
「はい到着。いやー懐かしいな、しばらく来ないうちに外装も変わってら」
「ここが例の怪奇現象が起きるお店ですか……。すごい興味ありますね! 早く入りましょう!」
電車を使って数分。俺たちは昼食休憩を挟んでから例のリサイクルショップへと足を運ぶ。
ここは午前中に行った宝屋と同じ看板を掲げる店で、取り扱うのも大体同じ。
でも外観は大きく違う。
あっちが黒などの無難な色合いなのに対し、ここは赤や青といった派手なカラーリングで異様に目を引きつけている。
前に来た時はそんな違いなんてなかったのにな。
時代の流れを感じるぜ。でも相方が急かす以上感慨に浸る暇は無い。
早速入店する……のだが、向こうとの違いは外観だけではなかった。
「──ッ! うっ、これは……!?」
「どうした、また店の音にビビったとか?」
自動ドアを通った瞬間、何かに反応するように突如としてラフラは立ち止まってしまった。
それに驚いた俺は、咄嗟に先ほどのことを思い出してしまう。
確かにここも音量は結構大きいけど、さっきの店で二時間近くも居てまだ慣れてないのか?
そう俺は思ったのだが、今度はそうじゃないらしい。
「いえ……。何だか今までに無い気配を察知しました。こんなの初めてです」
「なっ……!? そ、それって角矢が言ってた噂の類いか!?」
ラフラは俺の問いに対し、今まで感じたことのない何かを感じ取ったという。
おいおい。あの話を聞いた上でそんなこと言われたら、自ずと例の怪奇現象のことを思い出してしまうだろ?
季節関係なく鳴り続ける鳥の声。店内で鳥につつかれたという実害まで出ているという噂話。
それらと今の現象をつなぎ合わせてしまうのも無理はない。シンプルにこえーよ。
「もしかして、幽霊の気配とか感じ取れたりする系?」
「どうなんでしょう……。これが本当にお化けの気配なのかは断定出来ませんが、少なくとも悪い感じの物ではないかと」
まさかとは思いつつも詳しく訊いてみると、ちょっとだけほっとする答えが返る。
入店時に察知した気配には害意はないとのこと。
なら安心だ。ま、仮に幽霊だったとしてもそれは鳥って話だし、そこまで警戒するような物でもないか。
「取りあえず店の中を見て回ろう。もしこれで何も無ければここでカード探しの続きだ。今度はあると願おう」
というわけでまずは店内をぐるぐると回って、噂を確かめてみることに。
まさか四六時中鳴いているわけではあるまい。
かの有名な霊現象であるポルターガイストだって、ずっと動き続けているわけじゃないしな。
耳に集中して店内BGMとそれ以外を聞き分けながら、古書、衣服類、雑貨などなど、様々なコーナーを巡ってみる。
……しかし。
「全然聞こえないな。もしかして音にかき消されてるとか?」
「でも依然として気配はするんですよね。単に今は鳴いていないだけかと」
噂に聞く鳥の鳴き声とやらは聞こえなかった。うむ、影も形もない。
あーあ、やっぱり噂は噂か。
ラフラの感じ取る気配ってやつも、もしかしたら別の何かかもしれん。
「ま、ただの興味本位だし別に見つかんなくてもいっか。カードの捜索に戻ろう」
「そうですね……。うーん、それにしてもこの気配は一体どこから……?」
噂話が噂に過ぎなかった以上は無闇やたらに追及はしない。
最初の予定通りこの店のカードを漁って意志持つカードの捜索を再開するべきだ。
ということで方針を切り替えてカードコーナーへ俺たちは行く。
だがラフラは件の気配が気になって仕方が無いようだ。
ラフラというセンサーが反応している以上はそれくらい存在感のある物なんだろうけど、俺にはそれを感じ取れないからなぁ。
多分ここには確実に何かがあるんだろうけど、起こらなければ無いも同然。
残念半分の気持ちでカードコーナーへ到着する。
流石にここの品揃えは普通……ノーマルカードの棚も向こうより随分小さいな。
そういえば、ここに中々来なくなったのって品揃えが中々更新されないからだった気が。
流石に数年経った今なら多少は変わっているとは思う。
角矢も仕事でたまに来てるんだし、今なら多少はマシになって──
「……あれ? シュージさん、何か聞こえませんか?」
「え、何が? 別に店の放送だけだと思うけど……?」
不意にラフラは何かを捉えた。
それにちょっとだけ驚きつつも、俺も試しに耳を澄ませてみる。すると……。
──チュン、チュン、チュゥ~ゥン。
──ピーピチ、パーパチ。ピュゥゥゥン。
「何か変な鳴き声聞こえるー!?」
ほ、本当だ。確かに鳥っぽい鳴き声が店内放送に紛れて鳴いている!
聴いた感じはスズメとかひよこっぽい鳴き方だけど、聴いたことがない鳴き声だってのも頷ける。
何というか、まるで人がしゃべっているかのような、そんな違和感……異質さを感じるんだ。
というか鳴き声の終わりが特に変。そこだけは明らかに鳥っぽくない。
「ラフラ! これって……」
「噂は本当だったみたいですね!」
店の噂は
束上集児、生まれて初めての現象に遭遇す。
これを心霊体験としてカウントしていいのかは分からんが、まぁいいだろう。しかし不思議なこともあるもんだ。
そして────これが新たな出会いの切っ掛けになることを、この時はまだ思っていなかったんだ。
†
お読みいただきありがとうございます。
次のエピソードに進むorブラウザバックする前に当作品のフォローと各エピソードの応援、そして★の投稿、余力がありましたら応援コメントやレビューの方をお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます