現れし第二のカード!

「……それで、どうするんですか?」

「え、何を?」

「え、このお店に来たのって、この現象を解決するために来たのではないんですか?」



 人生で初めてとなる心霊現象との遭遇に感動していると、不意にラフラが意味不明なことを口走る。


 解決するって……え、そんなこと俺言ったっけ? 言った覚えないんだけど?


「どうもしないけど? 店側が調べても原因不明みたいなこと言ってたんだから、俺が出しゃばっても解決しなくない?」

「ええ──!? こんな興味深いことをスルーしちゃうんですか!? 勿体ないですよ!」


 この発言が予想外というか、期待を大きく外れたものだったせいか、ラフラがなんかわめき始めた。


 そんなこと言われても……。俺は名探偵でもなければ呪術師でもない、ただの一般カードコレクターだぞ?


 噂を確かめにここへ来たのは事実だが、だからといってどうもするつもりはない。

 角矢から依頼を受けたわけでもないんだからさ。そういう副業してないから。


「う~~、納得いきません! せっかくここまで来たんですから一緒に原因を探しましょう!? ほら、気配はこの辺りが一番色濃く感じますし、鳥さんだって私たちを監視している旨を発言しているんですから、絶対に近くに何かあるはずです!」

「うお力強ぉ……って、え? ラフラ、もしかして鳥の鳴き声の意味が分かるの?」


 不服なご様子のラフラ。乗り気じゃ無い俺の服を引っ張って意見を押し通そうとする。


 だが思わぬタイミングで認識の相違の発生に気付いてしまう。

 今ラフラが言ってた言葉……鳥が俺たちを監視するという言葉を発したって?


 ちょっと待て、そんな会話は俺の耳に届いてないんだが?


「あれ、もしかしてシュージさんは聞こえませんでした? 普通に私たちが会話するように言ってましたけど」

「俺にはただの鳥の鳴き声しか聞こえてないよ。いや喋っているように鳴くなとは思ってたけど」


 服を引っ張るのを止め、俺とラフラは一度状況を整理。


 俺は先の通り変なさえずりにしか聞こえてない。

 その一方で、ラフラには鳥が言葉で会話しているように聞こえているという。


 普通の人には知覚できないラフラにしか聞こえない会話って何? それはどういう原理で……?


「──ん!? あれ、ちょっと待ってください」

「今度はどうした!?」

「鳥さんが……私たちを案内するって言ってます。行ってみましょう!」


 今度は何を感じたか、鳥の幽霊は明確にこちらへ意思疎通を図ってきたと証言する。


 ラフラにしか聞こえない声とやらは俺たちをどこかへと案内したいらしい。俺にはまるで分からんぞ!?


 先走るラフラを追うように俺も後ろを着いていく。

 一体何が起こっているのか理解が追いつかないが……とにかくラフラの好奇心を満たす何かがあるのは間違いない。


 とにもかくにも──真相を解明せざるを得ない状況になったことだけは理解したけどな!



「こっちです!」

「店の中を走るなよ……って、ここは……」



 謎のさえずりによる案内で、俺とラフラが導かれた先は関係者以外立ち入り禁止と書かれた暖簾の前。


 ここはスタッフルーム。文字通り店のスタッフとその関係者だけが入れる部屋になる。


「え、ここの奥? ど、どうするんですか? 関係者以外立ち入り禁止って書いてあるということは、少なくともシュージさんは入れませんよね?」

「ああ。俺が入れないってことは、ラフラもあまり奥まで入れないってことだ。つまり、ここが終着点になる」


 曰くたどり着いた場所の奥が鳥たちが案内したい場所らしい。

 だがしかし、それは現実的に難しい話だ。


 ラフラを向かわせることは可能だが、カードからあまり離れることが出来ない。そしてそのカードは俺が持っている。


 つまり、ラフラも奥まで侵入することが出来ないんだ。

 俺が入ったら当然不法侵入。だからといってラフラによる捜索範囲を少しでも広げるためにギリギリまで近付けば不審者。


 ふむ……うん、俺の体裁を保つためにも無理ゲー判定するしかないな。

 何かを伝えたいであろう鳥の幽霊たちには悪いが、これ以上は無理だって伝え────




『……来たわね。この時をずっと待っていたわ』




「んなッ……!?」


 諦めかけたその時、不意に女の人の声が聞こえる。

 これはテレパシーか? ラフラがカードになっている時と同じ聞こえ方だ。


 あまりにもいきなりだったから驚くのもわけないこと。

 慌てて周囲を見るも、今の声を出したであろう人物はいない。


「今何か声聞こえなかったか!?」

「はい。聞こえました。それに、今の声からお店に入ってから感じていた気配そのものを感じます!」

「何っ!?」


 ラフラに訊ねてみたところ、案の定こっちも今の声が聞こえていたらしい。


 それだけに留まらず、あろうことかこの店に感じる気配と同じ物をさっきの声から感じ取ったという。

 それってつまり────鳥の幽霊ってコト!?



『何驚いてんのよ。当たり前でしょ、アンタはカードに認められた存在なんだから。まさかそれを理解してないわけ?』



「また喋った。というか今カードって言った? もしかしてこの店の幽霊騒ぎってまさか……」



『ご名答。そこの実体と同じ、あたしも意志を持つカードよ。初めまして、シュージさん? フフフ……』











お読みいただきありがとうございます。


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