望みは潰えど希望はある
「み、見つかんねー……」
「あんなにカードがあるのに一枚も無いなんて……」
意気揚々とカード漁りを始めてから五時間。
目標を掲げたのはいいものの、得られた結果は案の定ゼロという始末に終わる。
カード探しだけで息切らしたのいつぶりだ? 結構疲れたわ。
自慢じゃないが俺の家に置いてあるカードの枚数は下手なショップより多いし、質だって保証できる物も多い。
これでも一介のコレクター。今まで手に入れたカードは大事なコレクションだから大切に扱っているつもりだ。
なのにそれらを全部ひっくり返して確認したにも関わらず、一切の反応を確認できないまま全部見終えてしまった。
ううむ、少しくらいは期待できるんじゃないかって思っていただけに、コレクターとして自信無くすわ。
「まぁ意志を持ってるなんて明らかに特異で稀少そうなモンが千枚程度漁ったところで見つかるわけないよな……」
とはいえ冷静に考えてみるとその通りで、ラフラに出会えたのだって俺がファミスピに最初に触れた小学生から数えて大体十年だ。
十年で一枚出会えた物を、連続して発掘できるはずない。
それにもし仮にあったとしても、手に入れた時点でラフラのように実体化してるだろう。こりゃ探し損だったかも。
「ああ……ちょっと
「お疲れ。俺も寝るわ……って、うわもう一時か。早いとこ寝ないと明日に響くな」
ラフラもお疲れのようだ。溶けるようにカードへ身体が吸い込まれていくのを見送ってやる。
一応睡眠みたいなことはするんだってさ。そこは生き物っぽい。
ちなみに物体に触れられない彼女の仕事は、カードを一枚一枚
目視だけで判別できるとも限らないからな。まぁそれも結局骨折り損の無駄遣いだったけど。
何はともあれカード漁りで日付を跨いでしまったし、寝る準備をしなくては。
『結局どうするんですか? お家のカードは全滅でしたけど……』
パパパッと準備を済ませて布団に潜り込むと、ラフラがカード状態のまま話しかけてきた。
この状態だとテレパシーみたいに聞こえるんだよな。最初はビビったが今はもう慣れた。
それはそれとして、ラフラの素朴な疑問に対する回答はすでに頭の中にある。
「大丈夫だ。確証こそないが他にもアテはある。明日っつーか、今日そこへ行ってみよう」
『本当ですか!? 私も連れて行ってくれますよね?』
「勿論だ。というかお前がいなかったら多分見つけられないだろうしな」
そう、俺はカードコレクターである前に一人のカードゲーマー。
家のストレージが駄目なら、他所のストレージを当たればいい。
先週は普段行かない場所へ遠出したから行かなかったが、今週は行ってみようと思う。
これまで何百回と通ってきてる場所だから正直望み薄。
でもラフラがいるといないでは結果が大きく変わる可能性を期待しているからな。
『それで、どこに行くんです? まさかマダガスカル!?』
「そうそう、パスポート持って飛行機を乗り継いで30時間……って、なわけあるか! 何しに国外へ行くんだよ」
無駄に期待させてしまったせいか、声からワクワクを隠せないラフラ。さっきの番組のことまだ引きずってんのかよ。
思わずノリツッコミしてしまった。無論きちんと訂正しておく。
「カードゲーマーが集まるって言ったらあそこしかないだろ? まぁラフラからしてみれば、この街の店は初めてだろうけどさ」
行く先はマダガスカルなんかじゃあない。
……まぁ見方によってはそういう風な場所に捉える人も少なからずいるとは思うけど。
「近所のリサイクルショップに併設された行きつけのカードショップがあるんだ。ラフラも同じような店で見つけたから、俺のストレージよりかは可能性があると思うぜ」
行くのはカードゲーマーの溜まり場、カードショップ。
あそこなら──多くのカードが流入しては売買されていく場所であれば、一縷の望みをかけられると思っている。
当たればラッキー、外れてもトントン。
意志持ちカード発見器(実績はまだ無し)がある今、発見出来る確立は一番高いと言えよう!
ふふ、待ってろ未知なる意志を持つカードよ! 必ず見つけ出してやるぜ!
……出来れば安価なお値段でお迎え出来ればいいな、なんて。
俺の財布だって無限に出せるわけじゃないから……ネ?
†
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