【朗報】引退した元S級探索者、またF級からやり直すらしい



【朗報】引退した元S級探索者、またF級からやり直すらしい




14:とある探索者

烏丸、配信でライセンス見せてたわ

F級からやり直すらしいな

なんか悪魔殺してたし、普通にB以上からで

良いような気がするんだけどな


19:とある探索者

ぶっちゃけランクはどうでもいい

烏丸ゴロウが復活したことが嬉しい

レジェンドが戻ってくるの熱すぎる


27:とある探索者

あいつのダンジョン攻略マジでわくわくするからな

やっと戻ってきたかって感じだ


31:とある探索者

俺はまだ信じてねーけどな

また飽きたとかいって消えそうだし

そもそもやる気あるんか?あいつ


39:とある探索者

遊び感覚で戻ってきたんだろうなってのは同意

でもそんなのどうでもよくね

超有能なしごできが戻って来て嬉しくない職場ないから


46:とある探索者

やる気があればなお嬉しいけどね


49:とある探索者

いまは配信者だしなあ

あいつのダンジョン配信とか、やべえぞ

はやく見たいんだけど


52:とある探索者

雑談配信とゲームしかしてませんけどね


64:とある探索者

あいつがF級は普通に詐欺なんだけど?

ただ仙台支部は一枚岩じゃないし、

なんか裏側でドロドロしてるっぽいから、

しょうがないのかもしれないけど。


70:とある探索者

どうしょうがないんだよw

べつに仙台支部と烏丸のランクは関係なくね?


81:とある探索者

関係あるだろ。Bまでは支部で決めるんだから。

普通に仙台支部の陰謀っていうか、なんかある。

絶対にある。

間違いない。


87:とある探索者

仙台支部批判してる奴らはなんなんだよww

普通に日本だからでしょw

海外だったらBとかAとかSスタートもあり得た

日本は真面目だから飛び級ないです


95:とある探索者

元S級探索者もF級からですか

てか烏丸ぜんぜん衰えてなかったな

やっぱ化け物は化け物のまま


100:とある探索者

昔は日本の星だったしな

世界でも通用する唯一の探索者だった


115:とある探索者

いまもべつに世界には通用しそうだよな

あの蹂躙具合を見るに。

てか、なんかの記事が海外でも有名になってたっしょ

海外の掲示板でも騒がれてるはず


127:とある探索者

轟って人の記事な

海外でニュースにもなってた

やっぱ日本の星ですわ


133:とある探索者

日本の星がF級探索者とか日本終わってない?


140:とある探索者

てかなんで急に復活するんだろうな

辞めたときも突然だったし

やっぱ天才の感性ってよく分からねえわ


148:とある探索者

配信でゲームはまったって言ってたぞ

俺もそのゲームやってたけど、晒しスレの常連の奴だった

普通にチート疑われてたプレイヤー

あいつなんでも上手い疑惑


155:とある探索者

あと【十六夜の黒鳥ピース・バード】も復活か

仙台支部の黄金時代が戻ってくるな


161:とある探索者

東京とか大阪の奴らとタイムアタックしてほしいわー

競技とか出てほしーな


176:とある探索者

競技は出ないっしょ。なんか目的あるみたいだし。

直近の配信アーカイブ見れば分かるよ。

十六夜の黒鳥ピース・バード】の連中に話してる。

次は青森のダンジョン攻略じゃない?


187:とある探索者

青森遠征か。配信すんのかな


193:とある探索者

配信するっぽいよ

十六夜の黒鳥ピース・バード】の連中も来るんじゃね?

大々的なダンジョンアタック

悪魔が出たとこ


217:とある探索者

直近で立ち入り禁止になったところだろ

悪魔が出たって話で

その悪魔が烏丸の後輩?を呪ったんだって


229:とある探索者

その悪魔かわいそうだな


289:とある探索者

動画も撮るって話

『S級ダンジョン攻略してみた(笑)』ならぬ

『ダンジョン最速攻略してみた(笑)』じゃね


301:とある探索者

『悪魔殺すRTAしてみた(笑)』の方がはまってる感


311:とある探索者

マジ?

楽しみ増えたな

生きる理由が生まれたわ


324:とある探索者

いつ行くんだろ

てか立ち入り禁止で許可下りんのか?


369:とある探索者

十六夜の黒鳥ピース・バード】の再結成だし

前と同じように救助活動もするだろうからな

その一環として正式に立ち入る手筈なんじゃねえか


409:とある探索者

F級探索者って救助活動できんの?


412:とある探索者

登録は出来るぞ。仕事が来ないだけで。

だから烏丸からしてみたら関係ない。

依頼は殺到するはず


449:とある探索者

ともかく次は青森だろ

しかもタイムアタック!

配信&動画撮影!

全裸待機してるわ!


456:とある探索者

パンツははいとけよ




   0




 元【十六夜の黒鳥ピース・バード】の十三人との真面目な話し合いは三分で終わり、後は好き放題の飲み放題になった。俺はべつに酒に強いわけではなく、とはいえ楽しく飲むのは好きなので、わいわいどんちゃん騒いでいるうちに、気がついたら泥酔していて、駅だった。……駅?


 仙台駅のホームのベンチに腰掛けて、しかもなぜか隣にはテレサがいる。


 なんでだ?


 配信はいつの間にか終わっていて、記憶がないのは恐怖だが、まあ過去は振り返らない主義だ。


 踏切が鳴る。


「先輩、しこたま飲んでたっすね」

「……いつからいたの?」

「二時間くらい前っす。先輩が呼んだんすよ? いきなり電話してきて」


 まじ? という顔を見せると、テレサは読み取って頷く。


「まあ、ありがたいっすけどね」

「なんで? 急な呼び出しなのに。DV男とかに騙されんなよ。このメス豚が」

「私の呪いを解くためっすよね。【十六夜の黒鳥ピース・バード】の再結成の理由って。まあ、そもそも、先輩が動いてるのって、私が助けを求めたからなんすけど」

「貴様、自惚れるなよ? 絶対に助けてやるからな」

「配信に乗ってたっすよ。後輩を助けるために……みたいなの」


 秋を感じる夜風が吹きつけ、テレサの白い髪の毛が揺れる。その顔はどこかしゅに染まっており、あれ、いままで後輩としか見ていなかったはずのテレサに対する認識が、どこか、変わっていきそうな気がする。


 視線が、絡み合う。

 

「先輩は」

「ん?」

「……先輩は、誰にでもなんすか?」

「なにが?」

「誰にでも」


 見つめ合う、妙な間合い。お互いにじっと、ただ、見つめ合っていて。なにかを確かめ合うように……あれ、なんだこれ。なんかちょっと変な雰囲気じゃないか。ちょっと居心地が悪いかもしれない。と思うけれど、俺の身体は動かない。動けない。


 そして、きっと、動かない方が良い。



「私は。私は先輩のこと――」



 ――電車がホームに滑り込む。



 強い風が吹き込み、瞬間に身体は解放され、テレサと見つめ合ったままなのは変わらないけれど、どこか糸の切れたような、それまで続いていた連続性が失われるような、そんな感じがあって、やがて、テレサがベンチを立った。


 言葉の続きは、風の音に邪魔された。


「ほら。送って行くっすよ」

「……ああ」


 差し出された手を、俺は握った。




 後日、狐森さんから電話が鳴り止まなかったので出てみると、「ゴロウくん、配信活動を続けているみたいでありがたいんだけどさ。出来るならね、ほら、狐森さんとしてはー」と迂遠な言い回しをされた。要するに「くだらん配信ばっかしてないで、ダンジョン配信者として活動しろや!」という用件だった。もちろん俺は無視する。俺は雑談配信者でありゲーム配信者であり料理配信者であり外配信者なのである。


 ちなみに狸谷は現在、仙台支部ではなく東京にある探索者協会の本部に呼び出しを受けていて、帰る時期は未定のようだ。あいつの暗躍に関しては、あれから連絡先を交換してたまに喋る間柄になったシラズさんから聞いている。本来であれば問答無用で処分の対象だが――あいつはくせ者だ。いずれ戻ってきそうな気もする。


 シラズさんは実技試験に合格して晴れて俺と同じF級探索者である。学校帰りに仙台支部に立ち寄って受けられそうな依頼を確認しているらしい。たまに見かけることもある。同じF級探索者の人達とグループも組んだようで、なかなか楽しくエンジョイしているらしい。金銭面で困っているという話も聞いたが、彼女ならば自力でなんとかするに違いない。


 そういえば狸谷を殴ったらしい火島のおっさんであるが、もちろん試験そのものは不合格であるが、次回の受験資格は得られたらしい。しかも筆記試験は免除で。本人は受ける気がないと言っていたが、気が変わるのを俺は待とうと思う。火島のおっさんも、俺は好きだ。



 そして俺はといえば――まずは仲間集めからだった。



 青森の弘前ひろさき市にある、立ち入り禁止ダンジョン。


 テレサの容態はそこまで悪くはない。しかし微熱の温度は上がってきているようだった。さらに倦怠感も増しているらしい。QOLは大幅に下がっていることだろう。このままあと一ヶ月もすれば麻痺する場所も出てくるかもしれない。一年後には昏睡していることもあり得る。ゆえに――タイムアタック。


 俺はさっさとタイムアタックで蹴りを付ける気でいた。呪い手の悪魔を殺すつもりでいた。ただそのためには仲間が必要だ。なによりF級探索者である俺にはなんの権限もないのだ。もちろん個人では立ち入り禁止ダンジョンに足を踏み入れることも出来ない。ゆえに。


 【十六夜の黒鳥ピース・バード】の誰を誘うべきか。人数はどれくらいにするか。


 とにかく手順としては、


①仲間集め(【十六夜の黒鳥ピース・バード】の中から)。

②青森県の支部への申請。

③許可が下り次第、タイムアタック。


 という流れになるだろう。



 なんて、家でひとり、考えて。



 ふと、本当にふと。



 それこそまだ刺されていない蚊の存在に気がつくように、ふと、あれ、ちょっとお尻に違和感があるな、なんか腫れているような気がするな。



 と思ってお風呂場に行って鏡で見てみたら――尻尾が生えていた。




 黒い、尻尾が。




「ミダレエエエエエエエッッ! 俺のケツを見てくれえええええっ!」

「なにお兄ちゃん。ついに禁忌を犯すの?」

「俺のケツを見てくれっ!」

「見た。なんか生えてるよ? 尾てい骨から。かわいい」

「反応うすっ!」



 先端の尖った、黒い尻尾は、俺が散々に殺してきた悪魔達のものとまったく同一で――あれ。


 俺、悪魔になってないか?



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