一四話 河畔で釣りを!③
列車は王都を抜け直轄地を走り、マフィ領へと向かって突き進んでいく。車窓から見えるのは、町や村といった居住地域と農耕地、そして色を失った穢遺地。
数千年もの昔に神々に負けたことで大地へ封じられ、染み出た力が魔物となり、それを人々が狩っては
この地から昇り、大戦の傷を癒す神々が何時に戻ってくるか、若しくは戻ってこないかは不明だが、穢遺地を浄化するすべを持たいない
「こうみると穢遺地って結構数が多いのね。そのお陰で現在の蒸機文明が発達して、快適な生活を送れているのだけど」
「基本的に厄介な魔物が出てくる、騎士団が定期掃討するような場所はほんの一握りで、町や村で子どもがちょっとした小遣い稼ぎに行ける場所なんてのも多いんですよ」
「確かリンはその口よね」
「はい、随分とレベルが上がりました」
「穢遺地へ頻繁に足を運び残響炭を集める人を、『炭鉱夫』なんて言ったりもするんすよ。騎士団の存在から王都だとあんまり見られないようですが、地方だと結構な稼ぎになることと、治安維持に貢献していることもあり人気の職なんす」
「故郷のルドロ村とその周辺では、人が集まって自警団を構成してましたね。私もその一員で、王都へ出る時は団長さんから泣きつかれました」
「レベル高いものねぇ。実際のところ、騎士団のない地方は無理なく対処できているの?」
「ルドロ村周辺は私が居たので安定していましたし、ブルード領内も大きな事故が起きたとかは聞いたことがありませんね。そういった事態が起こった場合は、各村への有志招集がかかる手筈なので」
「マシュマーロン領もこれといって大きな騒動はなかったと思います。父が私に心配させないよう隠していた可能性は否定しませんが」
「結構上手くやっているのね」
チマは感心しながら頷いて、「ドゥルッチェの民は優秀だわ」を誇らし気な表情を露わにしていた。
「お話しに割り込んでしまうのをお許し頂けますか?」
「どうしたのラチェ騎士」
「各地の穢遺地で魔物討伐が安定してきたのは、お嬢様方がお産まれになる前後からだということをお伝えしたく思いましてね」
「そうなの、何か機転が合ったとか?」
ラチェはピシッと姿勢を決めては、口を開きロォワとレィエが行った政策の一端を説明していく。簡単な話、魔物被害を軽減するために助成金を撒いたり、医院の普及と炭鉱夫への医療費負担等の予算を組んだのだ。
とはいえ国が傾きかけていた状況でよくもまあ金子を捻り出せたというものだが、それ以上に地方の魔物被害が異常なまでに膨れ上がって、国の基盤が崩れかけていた状況は無視出来ず、多くの国財を売り払って金策をしたのだという。
それから
「流石、伯父様とお父様、そして優秀な政務官!」
「次代たる我々で積み上げられた力を崩さないよう、発展させていかないと」
「そうね、そうよねっ」
チマは意気込み新たに、一号客車の面々を見回していった。
歓談に花を咲かせて過ごしていればマフィ領へと列車は突入し、そろそろ到着かと一同は胸を躍らせる。
マフィ領はドゥルッチェ王都より南下した場所に位置する大きな領地で、穏やかな気候帯と東西へと伸びる背のプッケキ山山間部を利用した茶畑が有名な領地だ。
ドゥルッチェで使用されている茶葉の多くはマフィ領産であり、「茶葉といえばマフィ領産!」という者も多い、それほどの一大産地ということ。
そして、領都近くにはプーレット湖が存在し、湖周辺を自然公園として開発されており、豊かな大自然の下で貴族たちが羽根を伸ばす観光地としても有名である。
自然公園での野営や散策に野鳥観察、プーレット湖での舟遊びや釣り、運動場や乗馬施設まで備えており、王都から列車で三時間前後で辿り着ける立地ということもあって、旅行に行くならマフィ領とまで言われるほど。
「プーレット駅に到着したら、そのまま宿に向かって荷物を下ろし昼食、昼後は幾つかの班ごとに別れて夕刻まで過ごす。私たちとチマたち、そしてバァナたちを加えた班で行動を共にする。単独行動はしないように」
「わかっているわ。今日は自然公園の散歩と川遊びでしょ?」
「ああ」
「やってみたかったのよね釣りっ!どんな魚が釣れるのかしら」
「川釣りなら
「なるほど、リンは結構準備と下調べをしっかりとやっているようね」
「え、まあやはり学校に在籍でき、友達と過ごせる瞬間は今しかありませんので」
(学校で友達と過ごせる時間って…当事者にはわかり難いものだからね~。卒業してから実感したよ)
「そうですよね、私達は周年式典の影響で一回分夏の催しが少なくなってしまいます。あっ、式典を悪様に言っているわけではないのですが、少ない分は満喫したい、ですよね」
「うんうんっ、しっかりと楽しまないとね!」
「そうっすね!」
チマたち四人娘は
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