四話 侍従は騎士団で!④
昼後の授業が終わる頃合い、校舎内をツカツカ進んでいくのはシェオの姿。騎士団で色々と言われて思うところもあるのだが、それはそれとして職務を果たすべくチマの許へと向かっていく。
「あれ、グミー様じゃありませんか」
「シェオ殿、時間に遅れるとのない登場ですね。第六での修練は如何でしたか?」
「お嬢様を守る為に必要な力と出来たと思います」
「それはなにより」
「グミー様はデュロ
「ええ、昼後からですけどね」
「それはお手数をお掛けしました、ありがとうございます。感謝の意をデュロ殿下にお伝え頂けますか?」
「承知しました。では私は失礼します」
慇懃な礼をするラチェに、二人も礼を返して授業の終わりを待つ。
「何か問題は有りましたか?」
「ありません」
「それは良かった。…そうです、今度はビャスも第六へ行って修練に揉まれて来るように。いい経験になるはずですから」
「、っ!」
「それじゃあね、リン。…仕方ないから明日も来てあげるわ」
「え、はい。それじゃあお待ちしてますね!」
「明日は雨が降りそうだから待ってなくていいわ、濡れて風邪を引かれたら困るのよ」
ひらひらと手を振ってチマは下校していく。
「ねえシェオ」
「なんですかお嬢様」
「騎士団では結構な熱量で修練を積んできたみたいだけど、それほどのことでもあったのかしら?」
「慣らしが必要だと思い修練に参加したのですが、“新しいスキル”はどうにも
「なるほど、スキル持ちはスキル持ちで大変なのね」
「そういうことになります。ところで、どうして私がそれほど修練に打ち込んだと分かったのですか?」
「
「捜査犬みたいですね…」
「私を犬扱い?!心外だわぁ」
「長年仕えている私だから、…なんとも思わないわけではありませんが、許容出来ているんです。匂い云々は他の方に言ってはいけませんよ」
「流石に言わないわよ。ただ、頑張っているシェオを労いたかっただけ。いつもお疲れ様って、ね」
「あ、はい。ありがとうございます」
やや紅潮したシェオを見たビャスは、この二人の関係を羨ましく思い。そして少しばかり焦れったくも思い始めた。
帰宅したチマは夕餉までの間に、体力を培おうと庭で準備運動を行っており、シェオとビャスも合流し共に身体を動かす。
「私は走り込みをする予定だけど、二人も一緒にやるの?」
「基礎体力は鍛えて損がないと騎士たちも言ってましたから」
「……僕も身体を慣らしたくて」
「そう、それじゃあゆっくりやっていくわよ」
前回のレベル上げで得た反省は、身体能力強化や武器スキル持ちよりも持久力が劣るという点だ。こういった場合、関連スキルへポイントを振り分けることで軽減か解消するのだが、残念ながらチマにはそういった手法が取れるだけのスキルが存在しないので、地道に汗水…は多く流れないので、泥臭く頑張っていく必要がある。
現在の身の
三〇分走り、軽い水分補給と休息。これらを三回繰り返していけば、チマはへとへとになって座り込み、二人もいい汗を流していた。
「はぁはぁはっ、三回が、限度っね、はぁはっ、わたくしは、」
「はぁー、すぅ、はぁー、三回もできていれば十分だと思いますよ。チマ様はスキルによる補助がありませんし」
「僕は、もう一回やってきます」
「無理そうなら、途中でも休憩するのよー…」
「は、はい!」
高い身体能力強化により溢れ出る体力のあるビャスを眺めつつ、シェオは口を開いく。
「未だ、スキルは欲しいですか?」
「ほしいわ。スキルが一つしかない限り永劫に希い続ける筈よ」
即答。
「お嬢様が私とビャスへスキルポイントを分け与えられたように、こちらからもスキルをお渡しできれば良かったのですが…」
「なら試しに必要のないスキルで試してほしいわ」
「わかりました。私キャラメ・シェオのスキル、その全てをアゲセンベ・チマ様に譲渡します」
「ぜ、全部って…。重いと逃げる心算はないけれども、随分と思い切ったわね」
「お嬢様が笑顔で暮らせるのなら安いものですよ」
「…駄目ね。シェオの覚悟は無駄になってしまった。ただ、気持ちだけは受け取ってあげる、
夕焼け空を見上げているチマは、一度口を開いてから閉じて、意を決したように言葉を吐き出す。
「私ってシェオに何か…したかしら?」
「
「今の
「うっ、そうですね。えーっと、ちょっと自分自身でもよくわからなくて、まあ…人徳ということで」
「ふぅーん。分かったら教えて頂戴。どんな小さな理由でもしっかりと聞いてあげるから」
(流石に一目惚れなんて言えませんよねぇ。お嬢様が
身悶えしたくなる衝動を抑え込み、シェオは真面目顔で考えるふりをし。
(もし…私の想いを打ち明けたのなら、お嬢様は…どんな反応をするのでしょうか)
一歩踏み出せない自分自身に少しばかりの嫌気が差す。
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