第4話 Home

 スノーホワイトに導かれるままに進んでいると、生徒指導室があった。俺はこんな狭い所が拠点だとは思わず通り過ぎようとしていた。しかし、スノーホワイトに「どこに行ってるの?ここが拠点よ!」と言われ、俺は足を止める。

 スノーホワイトはドアを開け誘導した。


「ようこそ、HOMEへ!!」


 どうやらこの拠点の事はここでは《HOME》と言うらしいな。

 俺はそのHOMEとやらに入る事になった。中には四人分が座れる椅子と机、ただそれだけの狭い部屋であった。まんま生徒指導室と変わらない。

 俺は取り敢えず椅子にすわり、肩の荷を下ろした。

「俺たちだけか?」

 そう尋ねるとスノーホワイトは首を振る。

「いえ、仲間は別クエストに行ってるわ。そろそろ戻ってくる頃だと思うけどね。」

「その、クエストとやらは何段階まであるんだ?」

「そうね....恐らくC.B.Aの三段階のクエストがあるわ。Cは簡単なんだけど問題はAなのよね。Aは私たちも正直なところ未知の領域。油断大敵ね。」

 それを聞き俺は大きなため息を漏らした。

 はぁ、なんで俺はこんな事に巻き込まれているんだろうか。ゲームってなんなんだよ。

 そんな風にただただ憂鬱としていた時、扉が開いた。

「ただいまぁー。ブレーメンちゃんのお帰りだ!!」

 扉を開け、早速目があった。可憐な少し俺よりも若い少女だ。白髪で、身長が小さかった。暫く見つめあったのちに、その女はスノーホワイトの方に視線を向けた。

「なんですか?敵が入り込んでますよ」

 そう淡々としな声で語る女。そして、コチラを見つめる視線は冷たかった。

「敵じゃないって......」

 俺はそう訂正した。

「なら、だれです?」

「俺も知らん」

 その問いに対してその女はキョトンとしていた。まあ、知らんだなんて言われたら、困るだろうな。でも、本当に分からない。俺の名前はなんなんだ。

「この子はブレーメンちゃん。私のHOMEのメンバーよ。」

「どうも」

 ブレーメンと言う女はペコリと頭を下げて挨拶をした。俺もすかさず会釈をした。

「で、この男はその辺で拾って来た産業廃棄物よ」

「ちょっと待てゴミ扱いかよ」

「冗談よ。」

 冗談きつい。ゴミ扱いは酷いぜ。

「お名前は?」

「覚えてないんだ。名前とか色々。そもそも、ここにくる前の記憶がないんだ。」

「そうですか。では、名前を名付けた方がいいですね。」

「そうね。確かに名前がいるわね」

 二人は真剣に考えていた。しかし、仮名なんてそんなに悩む程に大切なものかと、俺は思っていた。そうして、先にブレーメンが思いついたらしい。手をあげて自信満々にしている。

「はい、どうぞ。ブレーメンさん」

「ぽんぽこ!!」

 これは酷い。人の事を動物のぬいぐるみか何かと勘違いしているのではないか?頼むからもうちょいマシな名前を考えてくれ。

「却下」

「即答ね。貴方中々に酷いわ」

 スノーホワイトはコチラを軽蔑するかのような眼差しだった。俺が悪いのかこれ。ブレーメンは斜め下を見つめているし。

「じゃあ、へっぽこ丸とかどうかしら?」

 お前もか。

「それも却下」

「ええ!!わがままね。こんなにいい名前が他にあるって言うの?」

 だれが好き好んで、『ぽんぽこ』やら『へっぽこ丸』だなんて奇天烈な名前をつけるのだろうか。飼い犬にもあまりつけたいとは思えないネーミングだ。

「じゃあどうしましょうかね」

 そんな時、ブレーメンがもう一度手をあげた。

「では、『ハンス』というのはどうですか?」

「『ハンス』か、悪くないな」

 ようやくまともな案が出たなと、俺は少し感激した。少々、キザな名前かと思うが、贅沢など言うまい。

「えぇ、ハンスって感じに見えないけどね。まあ、めんどくさいからハンスでいいわね。」

 凄い投げやりだ。そんなに『ぽんぽこ丸』がお気に召したのだろうか。

「あぁ、構わないが」

「じゃあ改めてよろしくハンス!」

「よろしくお願いします。ハンス」

「あぁ、よろしく」

 俺は改めて、二人に握手した。

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アストラム・ゲーム Air @yachirigi

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