第2話 recovery

「ゲームだと?ゲームって、あのゲームの事か?」

「まあ、そうね。思っている通りのゲームの世界だと説明した方が早いわね。」

 そんなバカな。俺は確かに昨日までは現実の世界に居た。

 何故俺はゲームの世界に飛んでいるんだ?なんなら昨日直前まで何をしていたのかも思い出せないし、分からないことばかりだ。

「はっきり言うわ、このゲームはクリアするまで現実世界に帰ることは出来ない。つまり、エンディングを迎えない限り、私たちは永久的にここに囚われたままよ。」

「マジかよ。で、そのエンディングとやらはどうやれば迎える事が出来るんだ?」

「このゲームにおけるエンディングは、全敵を倒す事。最初はそこまで強くは無いんだけど、段階ごとに敵が強くなったりする。そして、今のは初級ミッションC。初級ミッションの最終ステージって訳ね。」

「うーん、俺が今いるこの世界がゲームだなんて、にわかにも信じがたい話だな。」

「ふーん。」

 すると、スノーホワイトは俺の腹部指差す。

「疑いが張れないのならば、見てみなさい。傷。」

 指摘された所を見てみると、驚くべき事にナイフで刺された傷が綺麗に消えていたのだ。それも、一切の跡を残すことも無く、そもそもの痕跡さえも修復されていた。

「驚天動地だ.......」

「ここはゲームの世界だから現実の世界とは違ってこの包帯さえ巻けば治るのよ。まあ、私にはどういう原理なんだとかは一切わからないけどね。」

 これは確かに、まるでFPSゲームみたいなシステムだな。このすぐに傷やダメージが消えるのはゲーム独特のシステム。なるほど、これは本物みたいだな。

「......俺は、この世界でどうすればいいんだ?」

「まあ、現実の世界に戻りたいと願うのならば、敵を全て倒してゲームをクリアする必要があるわね。勿論、ここにとどまり続ける事も出来るであろうけど、こんな閉鎖的な空間でずっーといるものならば、間違いなく精神が蝕まれるわ。どちらにしても貴方は。波乱の道を歩むことになるわ。まぁ、勿論選択権はあなたにあるけどね」

 選択ですらない選択。こんなの現実世界に戻る為にゲームをクリアするしか無いじゃないか。こんな退屈な世界で死んでたまるかよ。

 俺は現実の世界に帰りたい。

 日常をもう一度見たい。

 仲間と会いたい。

「俺はこのゲームをクリアする。そして、元の世界に帰る。」

 スノーホワイトは物珍しそうな顔でこちらをじっと見つめる。

「ほぉ、肝が据わっているね。並大抵の度胸じゃ無いね。」

 そして、スノーホワイトは俺に顔を近づける。

 俺は思わず少し目を逸らしてしまった?

「......ねぇ、なら私と組まない?」

 囁くように言っていた。

「俺が君と?」

「そう、ソロプレイからマルチプレイにした方が難易度も下がるし、クリア率もかなり上がる事になると思うの。メリット99デメリット1の完璧なる作戦よ」

「まあ、確かに君と俺が組むのはいいんだが、この先俺が役に立つかどうか分からないぞ。」

「まあ、戦闘に不向きだった場合は荷物持ちの役割でも担わせるから安心して。」

「荷物持ちかよ!」

「当たり前でしょ、戦闘に不向きなら荷物をただただ運ぶだけのお仕事しかさせてあげられないの。」

 役に立たなければ荷物持ちか......まあ、それもそうだ。どちらにしろ今の俺に選択権など存在しない。一人では生きていけない、赤ん坊の状態なのだ。わがままなど言っている暇なんてない。

「分かった。君に迷惑をかけるような事にならない様に頑張る。」

「うん、おっけ!!決まりだね!!」

 俺とスノーホワイトは誓いの握手を交わした。


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