鄭成功との合流――日本への報告を託す者
湊は、再び鄭成功(ていせいこう)の艦隊に合流していた。海上では、林鳳との緊迫した状況が続く中、湊はこれまでの大陸での成果を鄭成功に報告するため、艦の甲板に立った。
「結城殿、無事に戻ったようだな。それで、どうだ?何か進展はあったか?」鄭成功は湊を迎え、真剣な表情で問いかけた。
湊は深く礼をして、報告を始めた。「はい、鄭成功殿。梁山泊との連携に成功しました。この同盟によって、蒙古に対抗するための強力な勢力を作り上げることができました。」
鄭成功は満足げに頷きつつ、次の話を促した。「よくやった。しかし、蒙古の脅威は増すばかりだ。しかも、林鳳も衰えてない中で、我々も海上の守りをさらに強固にせねばならん。それに、中原の状況がどうなっているか気になる。」
湊は、重く深刻な表情で次の報告を口にした。「実は、梁山泊の軍師である呉用殿から聞いた情報によれば、すでに中原のほとんどが蒙古の支配下にあるそうです。洛陽、開封といった要衝はすでに陥落しており、明朝は南京に追いやられ、有名無実化しているとのことです。」
この報告を聞いた瞬間、鄭成功の表情が一変した。「……明朝が滅びたも同然だと?!」
その声には驚きと怒りが混ざり合っていた。鄭成功は一度大きく息を吐き、遠くを見つめた。明朝はかつて彼が忠誠を誓った国であり、その崩壊は彼にとって耐え難い現実だった。
「蒙古がこれほどまでに力をつけていたとは……。中原を支配するだけでなく、草原から沿岸部まで一気に飲み込もうとしているのか……。我々はまだ戦えるが、このままでは……」鄭成功は苦々しく呟きながら拳を握り締めた。
湊は静かに続けた。「はい、彼らは騎馬軍団を使って急速に都市を陥落させています。各地での抵抗はあるものの、蒙古の圧倒的な軍事力の前に苦戦を強いられています。しかし、梁山泊や三別抄のような独立勢力は他にもあり、それぞれが各地で抵抗しています。これらの連携を図ること、そして現段階で連携できている勢力があることを日本に報告すれば、攻勢に転じることも可能でしょう。」
鄭成功は湊の言葉に頷き、重く言葉を返した。「そうか……。日本に知らせて、対策を練らねばならないな。」
湊はさらに続けた。「日本の信長公や朝廷に、我々が築いたこの同盟の強さを伝え、日本側からの支援を求めることが急務です。」
鄭成功は深く考え込みながら頷き、湊に尋ねた。「だが、誰を日本に送るつもりだ?その任務は大事だぞ。」
その瞬間、紅蓮が前に進み出た。彼女の目には強い決意が宿っていた。「私がその任務を担います。宗助国の娘として、時宗様の代わりにこの同盟の重要性を信長公に直接伝えなければなりません。」
湊は紅蓮を見つめ、少し驚いた。「紅蓮、君の立場は重要だが、こちらの戦いでも君の力が必要だ。これから大陸での戦況が厳しさを増している今、君が日本に戻るのは……」
紅蓮は湊の言葉を遮り、毅然とした声で言った。「湊、分かっているわ。けれど、私には対馬の代表として、蒙古に対抗する意志を日本に伝える責務がある。私が信長公に三別抄や梁山泊、鄭成功様との同盟が成ったことの重要性を伝えることで、日本側が積極的に協力するはずよ。」
湊はしばらく考え込み、紅蓮の決意の強さを感じ取った。「分かった。紅蓮、君に日本への任務を託そう。」
その時、片倉正行が前に進み出た。「湊様、私もこの任務に志願します!これまでの戦いで貴殿のおそばに仕えてきたこの身で、同盟の成功を日本に報告することが私の使命です。どうか、この任務を私にお任せください!」
湊は片倉の熱意を感じ取り、彼の目を見つめて頷いた。「わかった、正行。君にも日本への報告を任せる。」
湊は懐から一通の書状を取り出し、紅蓮と片倉に手渡した。「この書状を信長公に届け、三別抄、梁山泊、そして鄭成功殿との同盟を伝えてくれ。この同盟が日本にとってどれほど重要かをすべて報告してほしい。」
片倉正行と紅蓮は書状を慎重に受け取り、深く礼をした。「必ずや、この書状を信長公に届けます!」と二人は力強く誓った。
鄭成功も二人を見つめ、彼らの熱意に頷きながら「お前たちには、我が艦隊の信頼できる船を用意する。だが気をつけろ、林鳳の艦隊が活発に動いている。以前の戦いで我々を脅かした海賊だ。航路を監視し、敵意を抱いている。お前たちが無事に日本へたどり着くには、最大限の注意が必要だ」と警告した。
林鳳との戦いを思い出した湊は、その言葉に真剣に耳を傾けた。「分かりました、鄭成功殿。林鳳の動きには常に警戒を怠りません。」
紅蓮と片倉は再度礼をし、船に乗り込んだ。湊は彼らを見送りながら、紅蓮の背中をじっと見つめた。彼女をこの戦場から送り出すことに、少しの不安を感じていたが、その決意を尊重せざるを得なかった。
「気をつけて行け、正行、紅蓮。林鳳の艦隊が動いているが、必ず無事に戻ってきてほしい。我々の同盟が日本の防衛にとっていかに重要か、信長公にすべてを伝えてくれ。」
船がゆっくりと出航し、二人の姿が遠ざかっていくのを見守る湊の胸には、これからの戦いに対する強い覚悟が宿っていた。
「紅蓮、正行、どうか無事に戻ってきてくれ……。これからが本当の戦いだ。」
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