梁山泊への誘い――水滸伝の英雄たち
鄭成功(ていせいこう)との同盟を結び、モンゴル帝国の調査を進めるため大陸に向かう湊たち。彼らは次の目的地である遼東へ向かうための航路を探っていたが、道中で遭遇した海賊・林鳳との激しい戦闘の余韻がまだ残っていた。
数日後、船団は穏やかな海を進む中、湊は戦いを振り返っていた。
「林鳳の船団……あれほどの強力な敵に勝利できたのは幸運だったが、彼が再び立ちはだかる可能性もある。油断はできない。」湊は甲板で海を見つめながら呟いた。
「確かに。林鳳は簡単に引き下がる男ではないだろう。」時宗が湊の隣に立ち、同じく海を見つめていた。「お前の『丁字戦法』は見事だったが、次はもっと大きな戦力で襲ってくるかもしれないな。」
紅蓮もまた、戦闘を振り返りながら口を開いた。「林鳳の船団を撃退できたのは確かに私たちの力だけど、油断するべきではないわ。彼は執念深いし、次はより大きな報復が待っているかもしれない。」
湊はその言葉に同意し、戦術を考えながら言った。「次に彼と会う時は、さらに周到な策を用意しなければならないな。」
すると、鄭成功がふと思いついたように地図を指差し、提案した。
「結城殿、遼東へ向かう途中で、梁山泊に立ち寄ることを考えてはどうだろう?」
「梁山泊?」湊は疑問の表情を浮かべた。梁山泊、その名に心当たりがあったからだ。
「梁山泊――『水滸伝』で有名な英雄たちが集まる場所だ。」鄭成功が説明を続けた。「梁山泊の住人たちは、蒙古にも明朝にも属していない。彼らは独立を守り、自由を重んじる。もし、彼らが味方になれば強力な助っ人となる。」
「水滸伝……?」湊は反射的に呟いた。彼の頭に浮かんだのは、かつて読んだ中国の古典、『水滸伝』の英雄たちだった。
「梁山泊って……あの物語の水滸伝に出てくる梁山泊のことか?」時宗が不思議そうに湊を見た。時宗は、この時代で目覚め、さまざまな書物に目を通した時の一冊が『水滸伝』だった。
湊はしばらく沈黙したが、やがてゆっくりと答えた。「そうだと思います。『水滸伝』は、宋の時代を舞台に、悪政に立ち向かう108人の豪傑たちが梁山泊に集い、戦う物語です。しかし、実際に存在したのはその指導者である宋江だけのはず、他の多くの英雄たちは架空の存在……。」
その瞬間、湊の脳裏にある確信が強まった。林鳳との戦いを経て、歴史とフィクションが混在するこの世界の異常さを薄々感じていたが、梁山泊にいるという「水滸伝」の英雄たちが実際にこの世界に存在するとなれば、それは決定的な証拠となる。
「やはり、この世界は……ゲームの中にいるのと同じなのか?」湊は内心、自分の疑念が現実になったことに驚きを隠せなかった。
鄭成功はその様子に気づかず、続けた。「梁山泊の者たちは、誇り高く、外部の者を簡単には信用しない。彼らは独立を守り抜き、自由を重んじる。彼らを味方につけるのは容易ではないが、協力を得られれば、蒙古に対抗する上で大きな力となるだろう。」
湊は、梁山泊の英雄たちを味方につけることができれば、確かに戦局は大きく変わることを理解していた。しかし、同時にその異常な状況に対する戸惑いが拭えなかった。「もし本当に彼らが実在するならば、どうやって彼らの信頼を得るかが問題だな……」
紅蓮が険しい表情で口を開いた。「彼らが本当に自由を重んじるならば、外部の人間には警戒心を抱くだろう。簡単にこちらを受け入れるとは思えないわ。」
「その通りだ。」鄭成功は頷きながら続けた。「梁山泊の者たちは、どの勢力とも結びつかず、常に独自の戦い方で生き延びている。彼らに力を示し、覚悟を見せなければ、話を聞いてもらうことも難しいだろう。」
湊は思案し、歴史上の宋江と、フィクションで描かれる他の英雄たちの違いに頭を巡らせた。この世界の異常さを感じながらも、彼はこう決断した。
「もし彼らの信頼を得ることができれば、大きな力になるでしょう。行ってみるしかない……。」
時宗もその決断に同意し、「梁山泊の者たちがこちらをどう見るかは分からないが、もし彼らの力を借りられれば、蒙古に対抗する強力な戦力になるだろう」と言った。
「しかし、彼らが敵に回れば、非常に危険な存在になるのも事実だ。」紅蓮は冷静に付け加えた。
湊は頷き、「梁山泊の英雄たちは、それぞれが非常に強力な戦士です。彼らと対等に話すためには、我々も力を示さねばならないでしょう」と覚悟を固めた。
「梁山泊に向かおう。彼らとの接触が遼東への道を切り開く鍵になるかもしれない。」鄭成功も同意し、船団の準備を進めるよう指示を出した。
「まずは梁山泊に向けて出発ですね。彼らが味方になれば、我々の旅はさらに有利に進むでしょう。」湊は再び海へと目を向け、新たな仲間を求め、航海を続けた。
しかし、湊たちはまだ知らない。梁山泊に待ち受けているのは、英雄たちの協力か、それとも厳しい試練か――そして、この世界に潜むさらなる謎が、彼らを待っているのだった。
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