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「……彼女が三宅絵里奈だ」


双葉を残して家を後にした俺達は、渥美さんの運転で郊外へ。

コンビニの前に車を止めて、店内の様子をうかがう。

レジの前には、高校生位の女の子がいた。

「彼女は哲馬と同じ高校の夜間部に通ってて、昼間はここでバイトしている」

渥美さんの話の途中で、棗は車を降りる。

「待って、棗……」

呼び止めようとしたが、棗はそのままコンビニの店内へ入って行ってしまった。

慌てて車を降りた俺と渥美さんは、棗の後を追う。


「棗っ!!」


店に入るやいなや、棗は右手でレジの向こう側の絵里奈の腕をつかんだ。


「どんなひどいことをしたか、わかってるよね?」


「いやっ……私のせいじゃない。哲馬が勝手に……」


「言え。おまえは、誰に仕返しされた?」


棗がレジ台に左手を思い切り叩きつける。


彼女は、ガタガタ震えながら答える。


「私は、弥生に……でも、私が悪いんじゃない………」


それを聞くと、棗は絵里奈を離して店を後にし、車へ戻っていった。

俺は棗を追い掛け、車に乗り込む。

「落ち着け、棗」

「わかってる。でも、落ち着いてなんかいられないよ」

遅れて運転席へ戻って来た渥美さんが、こちらへ振り向いて話をする。

「倍返しのことなんだが。渉が哲馬に32発殴られたってことは、哲馬が絵里奈に16発殴られたってことだよな? 絵里奈が弥生に8発殴られて、弥生は誰かに4発殴られた。ということは……」

このゲームは、『仕返しは倍返し』というのが決まりだ。




初美が64発殴られて


愛里を殺す



渉が32発殴られて


倍の64発初美を殴る



哲馬が16発殴られて


倍の32発渉を殴る



絵里奈が8発殴られて


倍の16発哲馬を殴る



弥生が4発殴られて


倍の8発絵里奈を殴る



誰かが2発殴られて


倍の4発弥生を殴る



最初の誰かが1発誰かを殴る




「弥生の2つ前の人が、呪いを始めたってことだ」

この呪い遊びを始めた人に会えば、呪いを止められるかもしれない。

でも、おかしなことが1つある。

「渥美さん、俺の部屋の隣の人は?」

渥美さんが、手帳のページをめくる。

「宗方瑞穂か?」

瑞穂……彼女の名前が、どこにも入っていない。

わけがわからず首を傾げていると、棗が言う。

「ゲームは2チーム。もうひとつ、別の道筋があるんだよ」

いったいどこうして、同じ時期に2箇所で呪いが発生したのだろう?

それは考えてもわからなかった。

でも、呪いなんて簡単に作れてしまう人間って、恐ろしい生き物だと思った。


「清水弥生、同じ店でバイトしている高校生らしい。最近はバイトを無断欠勤しているみたいだ。住所聞いたから、家に行ってみるか」

渥美さんが、車のエンジンをかける。

「それと、聖ちゃんらしき女の子が、1時間位前に店に来たそうだ」

「聖が……急ごう。聖ひとりじゃ危険だ」


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