鏡の中の俺
夜、帰宅した俺。リビングの電気がついている。「ただいま」と声をかけると、奥の方から「おかえり」と返事が。安心してドアを閉めた瞬間、背後で玄関のドアが開く音。「今、帰ったよ」と妻の声が響いた。リビングには…誰がいる?
リビングに入ると、そこにいたのは俺自身だった。鏡でも窓でもない、確かに「もう一人の俺」が微笑んで座っている。「お前は誰だ?」と問い詰めると、静かに立ち上がり、俺に近づく。「お前こそ、俺の家から出て行け」と、まるで当然のように言った瞬間、全てが暗闇に包まれた。
俺が気を失ったかのように目を開けた時、もう一人の俺は消えていた。ホッと息をつくと、鏡に映る自分の姿がなぜか微かに笑っていることに気づく。慌てて顔を触るが、動くのは俺の手だけ。鏡の中の「俺」は、じっとこちらを見つめたまま、にやりと笑い声を上げ始める。まるで、俺の代わりに鏡の世界へ連れて行こうとしているかのように。
鏡に映る「俺」は、徐々にその笑みを深くしながら、ゆっくりと手を伸ばしてきた。こちら側に来るつもりなのか?心臓が激しく脈打つ中、体が勝手に鏡に近づいてしまう。「待て、やめろ…」と叫びたかったが、声が出ない。ついに、鏡の「俺」の手が触れた瞬間、世界が逆さまにひっくり返った。気がつくと、俺は鏡の中に閉じ込められ、外側の「俺」がにやりと笑い、ドアを閉めて去っていった。
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