ホラー短編集
MKT
廃墟
これは、友達と廃墟に肝試しに行った時の話です。
友達と一緒に廃墟を探索していると、突然「カタン」と音がしました。振り返ると、誰もいないはずの部屋の奥で、何かが動いた気配がしたんです。
驚いてそちらを見てみると、そこには古い鏡がありました。その鏡に映る自分の顔が、何か変だと気づいたんです。顔が、笑っているんです。自分は笑っていないのに、その鏡の中の自分だけが、不気味に笑っていたんです。
「カタン」という音が響いた廃墟の中、鏡に映る不気味に笑う自分自身。驚いてその場を離れようとした瞬間、背後から冷たい空気がふっと流れ込んできた。
友人たちも異変に気づき、静まり返った廃墟の中、皆が無言でお互いを見つめた。次の瞬間、床下から不気味な囁き声が聞こえ始める。
「誰か…いる…助けて…」
しかし、鏡に映る自分が再び動いた。その顔は今や自分自身の表情とは全く違い、まるで誰か別人のように目を細め、薄く笑っている。
友人の一人が思わず叫び声をあげ、「ここを出よう!」と叫び、全員が急いで出口に向かおうとした。
すると、出口の扉が突然バタンと音を立てて閉まった。
ドアが突然閉まった音に全員が凍りつく。誰も動けない。廃墟の中にいるはずのないものが、この場に確実に存在していると、全員が悟った。
「どうする…?」友人の一人が声を震わせながら言ったが、誰も答えられない。
その時、床下から聞こえていた囁き声がさらに大きくなり、まるで何かが這い上がってくるような音が聞こえ始めた。ゴリ…ゴリ…と何かを擦る音と共に、重い足音がゆっくりと階段を登ってくる。
全員が出口に向かおうとするが、扉はびくともしない。まるで何かに押さえつけられているかのように、開かないのだ。
「窓だ!」一人が叫び、窓に駆け寄った。しかし、窓もなぜかガタガタと震えるだけで、開く気配がない。焦りと恐怖が全員を包み込む中、背後で足音がさらに近づいてくる。
その瞬間、鏡がガシャーンと割れた音が響いた。振り向くと、鏡の破片の中から黒い影がにじみ出てくるように現れ、まるでこちらに向かって手を伸ばしているかのように見えた。
「逃げろ!」誰かが叫んだが、どこへ?出口はふさがれ、窓も開かない。
全員が恐怖に飲み込まれ、絶望的な状況に追い詰められていく中、次の行動を決める時間は残されていなかった。
黒い影がゆっくりとこちらに迫る中、全員が一瞬のうちに絶望に包まれた。足がすくみ、誰も動けない。影の中からは低い、何かを囁くような声が響いてくる。それは言葉にならないが、心の奥底に直接訴えかけてくるような、不気味で冷たい感触だった。
「何か…何かしないと!」一人が震えながらも声を出したが、どうすればいいのか誰にもわからない。時間がない。影は徐々に形を成してきており、まるで何かを探しているようだ。
その時、友人の一人がポケットから懐中電灯を取り出し、無我夢中で影に向かって照らした。影は一瞬のけぞったように動きが止まった。
「ライトだ!光に弱いんだ!」彼は叫び、全員が一斉に持っていたスマートフォンのフラッシュや懐中電灯を影に向けた。光を浴びた影は苦しそうに動きを鈍らせ、少しずつ後退し始めた。
「今だ、行こう!」その一言で全員が再び動き出し、出口に向かって突進した。ドアは未だ開かないが、影が後退した隙をついて力を合わせ、全員でドアを押し開ける。
ドアがついに開いた瞬間、冷たい夜風が一気に廃墟に流れ込み、全員が一斉に外に飛び出した。振り返ると、廃墟の中には影がじっと佇んでいたが、光を浴び続けてその姿は徐々に薄れていき、やがて消えてしまった。
外に出た皆は息を切らし、無事に生き延びたことを実感しながらも、何があったのかを理解する余裕はまだなかった。ただ一つ確かなことは、もう二度とあの場所には戻らないということだった。
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