第38話 VS 鱗の魔物
リーナとアレクは、巨大な体と硬い鱗で覆われた二体目の強敵と対峙していた。その魔物は異様な暗黒のオーラを纏い、その圧倒的な威圧感にリーナとアレクは緊張を隠せなかったが、彼らは冷静に戦闘態勢を取った。
「アレク、この魔物、鱗が硬すぎる。魔法の力さえ通らないかもしれない。」リーナは鋭い視線を魔物に向けながら言った。
アレクはリディアの白銀の体を見つめ、静かに頷く。
「確かに、これは手強い相手だね。でも、僕らにはリディアとタリアがいる。神獣の力があれば、きっと打破できるはずさ。」
その言葉に、リーナもまたタリアを見つめる。
タリアの風が魔物の体をかすめると、魔物は唸り声を上げて荒々しく動き始め、闇のオーラが増幅されたかのように広がりを見せた。
「リーナちゃん!リディアで視界を遮るから、その間に攻撃を!」
アレクが指示を出すと、リディアが放つ聖なる光が辺りを照らし、魔物の視界をくらませた。
「ええ、わかったわ!」
リーナはタリアに目配せをし、タリアが大きく翼を広げ、風を巻き上げた。まるで嵐のような風が巻き起こり、魔物の動きが封じられる。
「さあ、リディア、君の神聖な光で浄化の矢を放つんだ!」アレクは指示を出し、リディアが聖なる矢を生成する。光の矢はリディアの白銀の体から放たれ、魔物の片目を射抜いた。その一撃に激痛が走り、魔物は体を激しく震わせた。
「どんどん行くよ〜、魔物さん。」
アレクは素早く次の攻撃に入ろうとする。しかし、魔物は怯むことなく、暗黒のエネルギーを口に溜めていた。
「危ない!!下がって!」
リーナがアレクを引っ張り、炎の攻撃をかわしたが、その熱と圧力は想像以上だった。闇の炎に触れた地面は瞬く間に焦土と化し、魔物の強力さが二人に突きつけられる。
「リーナちゃん、すまない。助かったよ…ははは。それにしても、僕たちがこのまま攻撃するだけじゃ、埒が明かないかもね。」アレクが息を整えながら言う。
リーナはアレクの言葉に同意する。
「そうね、さっきから攻撃を当てて鱗を傷つけても再生していく…。」
「どうしたもんかねぇ。」
アレクが策を考えるが、リーナがすぐに前へでた。
「大丈夫。私がやる。タリアッ!」
その時、タリアがリーナに視線を向け、深い青い瞳で見つめた。リーナはその瞳に応えるように手をタリアにかざし、心を通わせる。
「タリア、共鳴いくよ。」
リーナがタリアに囁いた瞬間、彼女の中で何かが目覚める感覚があった。彼女の心とタリアの鼓動が一体化するように響き始める。
ドッドッドッドッドッドッーーー
ドッドッドッドッドッドッーーー
ドッドッドッドッドッドッーーー
ドクンッ
リーナの中でタリアの力が共鳴し、共鳴強化の力が解放されていく。リーナは目を閉じ、タリアとの心のつながりを深く感じながら、無意識に呪文を唱え始めた。
「風よ、我が力と共に進化せよ…その身に新たな命を宿し、嵐と共に闇を討て…!共鳴強化レゾナンス・ブースト!」
リーナの声が高まると、タリアの体から更に強力な風が巻き起こった。タリアの青い瞳がさらに深い青色に輝き、背中には新たな風の翼が形成されていく。
タリアの能力が覚醒し、周囲にはまるで嵐そのものが顕現したような風の壁が形成された。リーナの瞳もまた同じ深い青色に変わり、二人の能力が完全に一体化していた。
「タリア、あなたの能力借りるわ…」リーナは小さく呟き、共鳴の力で風の精霊と共に空中を自在に移動し、魔物の真上に飛び上がる。
共鳴強化により、タリアの風の刃が魔物の体を切り裂いた次の瞬間、風の刃が硬い鱗の一部をついに完全に剥がし取ると、魔物の額から鈍く光る赤い核が剥き出しになった。
その核は禍々しい闇のオーラを纏い、不気味に脈動している。その隙を逃さず、リーナは剣に風の力を纏わせた
「風の加護よ、我が剣と共に…」
リーナの剣が輝き、魔物の露出した核に向かって一直線に突き進む。魔物は怒りと恐怖の叫びを上げ、再び鱗を再生させてリーナを取り込もうとするが、アレクが声を上げた。
「リディア、再生を封じろ!」
リディアが放つ聖なる光の結界が、魔物の鱗の再生を阻止し、リーナの進路を完全に開いた。
「リーナちゃん!!今だ!核をっ!」
アレクが力強く叫ぶ。
「これで終わりだぁっ!」
リーナは叫び、光を纏った剣で魔物の核を貫いた。剣から放たれた風と光が、魔物の内部を浄化していくかのように広がり、魔物は崩れ落ちていった。消滅していく魔物の姿を見つめながら、リーナは深い息を吐いた。
「リーナちゃん、あの力は一体…共鳴強化なんて…初めて聞いたよ。」
アレクが驚いたように言った。
「そうね。この前アテナのところに行った時に習得したの。タリアの能力と私の魔力を共有することで、タリアの技の威力も格段に上がる。それに、私もタリアの力で空中移動ができたり、魔法を無詠唱で使えるようになる。」
リーナは淡々と答えた。
アレクはリディアを撫でながら感心したように頷いた。
「なるほど…陽くんの獣人化と少し似ているけど、タリアも恩恵を受けられるなんて、面白い力だ。(陽くん、君が追いかけてる背中はなかなか手強そうだぞ。)」
そう言うと、アレクは少しニヤリと微笑んだ。
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