第23話



 『それ』は、ずっと観察していた。


 迷宮の奥。蓄積された魔力により歪んだ空間の中、陽の光の届かぬ地下奥深くで、の事を見続けていた。

 迷宮へ入り込んだ男女。両者ともにこの上なく強力な個体であり、【異能】による脱出と再転移を繰り返しながら着実に攻略を続けている人類種ヒューマン


 


 "それ"は、恐怖と同時に高揚していた。あれは人間の中の特異個体、【英雄】と呼ばれる者だ。長年生きた"それ"ですら滅多に見たことの無い、人類種の頂点。彼らを倒せば、自分はより強く大きくなれる。"それ"には、『より大きくなりたい』というシンプルで原始的な欲求があった。

 


 より強く。より大きく。より多く。ただ増える事こそ、生命の命題ゆえに。



 生命の本懐である願いに従い、ボコボコと大地が湧きたつ。周囲に石造りの柱や彫刻が飾られた神殿じみた空間に、"それ"の意思が浸透していく。


 どちらを新たな『主』にしようか。男の方が身体は強いが、女の【異能】も捨てがたい。あれの真価は測り難いが、恐らく自分が使えばより輝く力だ。どちらも悩ましい、魅力的なだ。


 彼らは必ず、この迷宮の最深へ辿り着くだろう。"それ"自身がそう望んでいるのだ。より良い贄を得て、より大きくなりたいと。強くなりたい。何者にも生存を脅かされることの無い安寧を得たい。この世界に、自分が占める割合をもっともっと増やしたい。


 失敗は考えない。考えても無駄だからだ。己に出来る最善を行い、失敗すれば死ぬだけである。


 迷宮核ダンジョンコアには知性があると、人類の研究では囁かれている。少なくとも、植物程度の知性・本能は存在するだろうと。また、魔力の豊富な土地に芽吹き、地下で根を張って成長する迷宮は、時に植物に例えられる。しかし今"それ"に宿っている知性は、物言わぬ植物のそれを遥かに超えていた。


 "それ"は、迷宮核ダンジョンコアに芽生えた意思。


 "それ"は、迷宮を統括する新たなる生命。


 瘴気を吸って成長する、世界最新の災厄である。

 







 エリザとクライヒハルトが迷宮に潜り始めて、一週間が経過した。


 第二層。階層主【影に潜む首狩り巨鬼バッドチョッパー】(命名:エリザ)、クライヒハルト卿により斬殺。

 第三層。階層主【揺らめき揺らぐ炎巨人フレイムジャイアント】(命名:エリザ)、クライヒハルト卿により斬殺。

 第四層。階層主【虫】(命名:クライヒハルト)、群れによる物量で抵抗するが、同じく斬殺。

 

 第五層。第六層。第七層。同じく斬殺。もはや斬殺よりも惨殺と言うに相応しい、むごたらしくみじめな最期であった。


「ふう。それでは、そろそろ今日も帰るとしましょうか」


 チン、と剣を鞘へ納め、クライヒハルト卿がこちらへ向き直る。その姿を見ながら、エリザはもはや怪物たちへ憐みの念を抱き始めていた。


 第一層では純粋な耐久。

 第二層では隠密による回避。

 炎と化した身体による物理耐性、物量による特攻。


 その他諸々、本来ならば単体物理クライヒハルト卿への十分な有効策となっていたであろう策の数々。クライヒハルト卿はそれらを全て、【英雄だから】の一言で一刀に切り捨てている。


 馬鹿げている。理屈に合っていない。理不尽だ。


 ありとあらゆる罵倒と賞賛を並べても、クライヒハルト卿を表現するには一歩足りていないと思わせる。万物を捻じ伏せ君臨するのが【英雄】という生き物だが、それにしたって流石に限度という物がある。


 神懸かりの肉体。天与の英雄。お伽噺の騎士。彼はそう語られている。

 しかしこうして暫くの間彼を見ていれば、その称号にすら疑問を抱かざるを得ない。


 果たして彼は、の呼び名で言い表せる存在なのだろうか。


 (……クライヒハルト卿は、本当に【英雄】なのか?)


 エリザは一つ、昔に聞いた話を思い出していた。


 少し前に滅んだ、ある愚かな国の話だ。ただの幸運で手に入れた【英雄】を笠に着て、諸外国へ高圧的な交渉を繰り返していた愚かな国。

 大した強みを持たないまま、強国の真似をした国の寿命は短い。その国は結局破綻し、今は荒れ果てた城の残骸がその跡を残すのみだそうだ。


 商国相手にも随分な真似をしてくれた馬鹿が自滅したという、エリザからすれば非常にスッキリする話だ。しかも滅んだ直接の原因と言うのが『阿呆にも自ら英雄を追放した事』と聞き、エリザは馬鹿の馬鹿さ加減は想像もつかんなと笑ったものだが……。


 (……いや。そもそも。本当に、同じなのか?)


 実際のクライヒハルト卿を見た後では、少し考えを改めざるを得ない。


 なるほど。これ程の【英雄】を手に入れれば、少しは傲慢になっても仕方ないだろう。


「エリザ?」

「……いや。何でもないさ、クライヒハルト卿。今日の探索は終了だな? 」


 しおらしくクライヒハルト卿へ身を寄せ、彼の手に触れる。脈拍、呼吸、共に平静。緊張も無い。クライヒハルト卿は、常に【英雄】らしい態度を崩していない。


「……お前は常に平常心だな」

「はい?」

「同情するよ。お前にも、お前の周りにも。なんとも気苦労が多く、敵を作りやすい男だ」


 英雄バケモノの中でも特級のバケモノが、常にニコニコと笑顔で傍に立つ。そのストレスたるや。


 クライヒハルト卿に瑕疵はない。彼は完璧だ。だが硬く丸い鉱石と凸凹デコボコの石くれが触れあえば、石くれの方が勝手に削れていくのが世の常だ。遠く離れて崇拝するか、ひたすら疑心と不信感を募らせるか。彼の周囲の人間にはその二択しかない。前者を取ったのが王国で、後者を選んだ国は滅んだのだろう。


 迷宮探索を始めて、およそ一週間……。エリザは積極的に距離を詰めようとしているが、クライヒハルト卿と親しくなれた感触は微塵も無い。彼は常に丁寧で親しみやすいが、だ。恐らく彼は、エリザにも、そこらの平民にも同じように親切な態度を取るだろう。


 面白くない。クライヒハルト卿と指を絡めながら、そう一人ごちる。


 だが、不満を言うだけならば猿でもできる。面白く無いならば、自力でしなくては。それでこそ英雄だろう。


 (基本に立ち返ろう。交渉の基礎は、『相手の好みを知る事』。クライヒハルト卿は高潔な性格で、王国へ忠誠を誓っている。個人的な好みなどは噂に上がっていなかったが……)

 

 クライヒハルト卿は無私の英雄として知られている。やはり、彼の言動から少しずつ推測していくしか無いだろうか。


 (……いや。そういえば、一つ手がかりがあったな)


 エリザの脳内が、ある一人の女性を拾い上げる。彼女は帝国との戦乱の中、クライヒハルト卿と出会った類い稀なる幸運の持ち主。彼の直属の主人であり、『一生分の幸運を使い果たした』と言われる庶子の姫。王国で冷遇され、【異能】も持たぬ飾りの姫君。


 マリー・アストリアからならば、少しは情報を得られるかもしれない。


 王国内でクライヒハルト卿の悪口を吹聴すると、基本的に周囲からの暴行に遭う (衛兵は黙認し、一部は積極的に暴行へ加わりさえする)。それと噂に尾ひれがつく事も相まって、彼の情報は非常に不確実で集めにくいのだ。行き詰まっている今、取れる手段は全て取っておきたい。

 

 転移の瞬間、エリザの口元は良い考えが浮かんだ喜びで歪んでいた。








 

 どうも。

 最近商国の技術力に圧倒され過ぎている、マリー・アストリアです。


「やっぱり最近のマイブームは婚約破棄物ですね。身近に実例がいらっしゃるお陰で、より深く没入して楽しむことが出来ます。ジャンルとして確立されたぶん事前説明を省けるので、著者ごとのオリジナリティを出しやすいのも強みですよね」

「……一応聞いておくけど、その"実例"って私の事じゃ無いわよね」

「もちろん姫様の事ですよ。あれは痛快でしたから」

「イザベラ……」

「そう睨まなくても良いではないですか。私が、敬愛していた作者の正体が実は瘴気に呑まれた元人間と言う事実にどれ程のショックを受けたか。娯楽は娯楽だと割り切り、こうやって小説を楽しめるまで回復したことを褒めてくださいませ。具体的には頭を撫でて下さい」

「……最近あなた、クライヒハルトに似て来たわよ」

「え゛」


 ショックを受けて硬直するイザベラをよそに、私はペラペラと書類をめくる。

 

 既に形骸化しつつあるが、一応私は『有力商会との顔つなぎ』をエサに兄上に呼びこまれたのだ……。兄上は色々と誤魔化すが嘘はつかない、約束通り彼が持つ人脈を私に紹介してくれた。今はそれらを取り纏め、可能ならば【劇団】の手を入れる事が目標である。尤も、これは消極的目標だが。


「にしても、『銃』に『自動車』は分かるけど、小説って……。得られる知識に節操が無いわよね。意外と、瘴気も万能では無いって事かしら」

「いやぁ? 瘴気は真に万能だとは思うね。問題は蛇口の方さ。奴ら元研究員の薄れた意思で、望んだ知識だけを取り出すのは難しい。小説はまだマシな方で、もっと訳わからねえ知識もあった。知らねえ食材を使った知らねえ料理についてひたすら聞かされた時は、流石にめげそうになったね」

「ふぅん……じゃあやっぱり、クライヒハルトが重視されるのもその辺りが理由かしら」

 

 は?


 いま、私は誰と喋った?


「――――――エリザ!」

「敬称を付けろよ、マリー・アストリア。俺と仲になりたいってなら応えてやるが」


 いつの間に? どうやって? いつから? そう思考する間に、部屋を鋭い風が通り抜ける。


「……エリザ様。ご用件をお伺いいたします」

「あ? あー……あれだ、イザベラか。暗部組織の長。いい資産だ、一瞬で主人の盾になったのか」

「……ご用件を」

「が、俺にナイフを向けるのは頂けねえな。客人だぞ? 丁重にもてなしてくれよ」


 誓って言う。この時、私は眼をそらしていなかった。まばたきもしなかった。


 なのに。イザベラがナイフを構えた次の瞬間、彼女はティーポットを持って紅茶を注いでいた。


「――――――!」

「どうもどうも。俺は意外と紅茶好きでね」


 こぼれそうになったカップを素早く受け取り、エリザが優雅に紅茶をすする。


「ふう……で、どうした? いきなりそんな喧嘩腰で。品位に欠けるぞ」

「……貴女が、いきなり部屋に入って来たからでしょう」

「あ? そんなことでキレてんのか? ココは元を辿れば俺が買った宿屋だ。所有者として、許可がなくとも部屋に入る事はある。契約書に書いてあったろ? ちゃんと読めよ、この国で契約書は絶対だぜ」

 

 そう言ってふてぶてしくエリザは立ち上がると、歩いて外に出た。数瞬後、コンコンとノックの音がする。……こいつ。


「……どうぞ」

「やあどうも、マリー・アストリア。とはいえ敬意は払う、お前らの流儀に合わせてやったぜ」


 じゃ、お茶でもいかがかな?


 そう言って、エリザはにこやかに笑ったのだった。





「クライヒハルト卿について話が聞きたくてね」


 紅茶へジャポジャポと砂糖を大量に入れながら、エリザが話す。砂糖なんてまだまだ高級品なのに、勿体なくないのかしら。


「ふう。金を浪費してる実感が脳に一層キくね」

「……健康に悪そうだけれど」

「アホ言え、英雄が砂糖ごときに負けるかよ……」


 底に溜まった砂糖をジャリジャリと噛み砕き、エリザは再び私へ向き直った。


「それで、クライヒハルト卿の話だ。教えて欲しいんだが、彼はいつも『ああ』なのか?」

「……?」

「完璧な英雄。お伽噺の騎士。そして、あまりにも非人間的。ああいう態度を、直接の主人であるあんたにも取ってんのか?」


 …………。


『ママーーーーッ!! マ、マァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

『建物を改築したいんですよね……こう、床をくり抜いて、透明なガラスを埋め込むというか……。え? いやいや、俺が入るんですよ。俺、側溝になりたいんです』

『三角木馬って興味ありませんか?』

『ワン! ワンワンワンワンワンワンワンワン!!! (迫真の鳴き声)』


 ……ひ、非人間……的……?


「……も、ちろん。その通りよ」

「そうか、違うのか。いい収穫だ、此処に来た甲斐があった」


 クソ。

 なんとか否定は絞り出せたが、流石に言葉に詰まってしまった。

 

 というか、マズい……! あまりに突然の事すぎて認識が遅れたが、今この女は『尋問』しに来ているのだ……! クライヒハルトの秘密、その一端を私から暴こうと!


 守るべき秘密がクライヒハルトの性癖と言うのが本当に最悪だが、兎にも角にもエリザを諦めさせなければ……!


「んー……警戒させたか? そんな風に見るなよ、仲良くしようぜ? 転移したのはアレだ、ちょっと最近使いすぎてたからウッカリしたんだよ」

「……帰って頂戴」


 エリザから一方的に腹を探られるなど冗談ではない。これでも王族として、それなりに人を見る経験はある。彼女は、話せば話すほどこちらが不利になる人間だ。


「王国の姫に対して、あまりにも無礼よ」

「ハッ、こっちは商国の英雄だぜ?」

「……だとしてもよ。立場で、非礼が許されるわけじゃないわ」


 そう言い返すと、エリザは少し面白そうに口笛を吹く。


「そりゃもっとも。良いね、良い価値だ。意外と肝が据わってるんだな、姫様?」

「……褒められても、嬉しくないわよ」

「いやいや、もっと褒めさせてくれよ……まだまだ、の態度からわかったことが沢山あるんだからな」


 ゆっくりとエリザが席を立ち、こちらへ歩み寄る。


「親切も少しはあったんだ。クライヒハルト卿を見てつくづく思ったが、あれは凡人が相手出来るようなもんじゃねえ。最悪何も聞き出せずとも、貴女が参っているようなら仲介してやっても良いと思ったのさ。それはそれでクライヒハルト卿へ恩は売れるだろうしな」

「…………」

「だが、どうも違うようだなあ? 顔つきが変わったぜ、姫様。どうしても知られたくない秘密があるやつの顔だ」


 エリザ。エリザ・ロン・ノットデッド。商国の英雄にして、眼力確かな稀代の大商人……! 私のかすかな身じろぎや表情から、どこまで見抜くというのだ。


「クライヒハルト卿は逸材だ。瘴気に対する完璧な器となった彼は、必ず迷宮の最奥まで辿り着くだろう。そうしなければならない。俺が、必ずそうさせる。だが恥ずかしながら、現状彼の事が全く分からなくてね。無作法は重々承知だが、貴女の持っている秘密を是非とも知りたい」

「一人で、随分先走るのね……! 私は貴女に、『帰って』としか言ってないわよ」

「態度。表情。僅かな言葉遣い。それだけで十分さ。どうやらクライヒハルト卿にとって、貴女は特別らしい。それが正の方向にしろ負の方向にしろ、その秘密を暴かなくては」

 

 そう語るエリザの顔は、何かに衝き動かされる様に真剣な物だった。英雄の引き抜きや、今後の国家戦略を気にしているような顔ではない。もっと、別の何かに動かされているような……。

 

「どういう秘密だ? クライヒハルト卿と貴女はただの雇用関係では無かったのか? 気になって仕方が無い。あの人間離れしたクライヒハルト卿と、どうやって折り合いをつけている? それとも、貴女の前ではまた別の顔を見せるのかな?」

「……っ、だから! 私の答えは同じよ、帰って頂戴!」


 一瞬だけ彼女の思考が自己暗示真実に触れかけたその時、私は遮るようにそう強く言った。エリザの不気味な雰囲気に耐えられなくなったのだ。


「随分嫌われたな。ま、いきなり部屋に押し入られたらそれも当然か。実はワザとなんだ、心理的に無防備な間を突きたくてね」

「最低ね。立派な犯罪よ、それ」

「いや? 言っとくと、契約に書いてあるってのはマジだぜ。『貸主が部屋の点検に参る事があります』ってちゃんと書いてある。ココでは契約に気を付けた方が良いってのもマジだ。いい勉強になったろ?」


 ま、忘れてもらうがね。


 そう言いながら、エリザがゆっくりと眼帯を外す。


「警戒されたままじゃ話もし辛い。自業自得だし収穫はあったが、次はもっと丁重に行こう」


 その中に入っている物は、眼球では無かった。朱く輝き、キラキラと光を反射する。大粒の宝石が、彼女の眼窩には埋め込まれていた。


「―――貴女、その眼……!」

「という訳で、失礼ながらいただく。ここ一時間の記憶を忘れて、俺への悪印象も是非リセットされてくれ」


 宝石の眼に、赤く光る紋様が浮かび上がる。エリザの【異能】。未だ詳細不明のそれが、私に振るわれようと―――。


「――――ッ!」

「メイド。お前は邪魔だ、寝ていろ」

 

 イザベラが投げた暗器が掻き消え、彼女が眠るように倒れ伏す。


「イザベラ!」

「諦めなければ、夢は絶対に叶う。次はもっと上手く、次の次は更に上手くやるさ」


 近づいてきたエリザの赤い眼が、私の顔を覗き込み……


「――――【俗物的奇跡インスタントプレイ】……イ゛ィッ!?」


 バチィッ!!!!!!!!! と空間に火花が散り、眼に見えない何かが部屋をガタガタと揺らして通り抜けていった。


 ……私は無傷だ。身体にも記憶にも、何一つ欠けは無い。


「は……何だ……? 【俗物的奇跡インスタントプレイ】が、弾かれた……?」


 ―――そして。顔を押さえるエリザの眼からは、ボタボタと血が滴り落ちていた。


「ガ、ァア……! い、ってぇ……!」


 ……何が起きたのか、私には分かる。

 クライヒハルトの異能、【英隷君主ディバインライト】だ……。クライヒハルトの持つ膨大なエネルギーを私に捧げ、【英雄】に仕立て上げる異能。それは非活性化時でも、ありとあらゆる危害から私を守る……。肉体的損傷には治癒という形で。そして今回エリザが行った【異能】による干渉は、そもそも【英隷君主ディバインライト】が弾いたのだろう。


 だが。


 これで、『ああ良かった、エリザの異能は効かないのね。めでたしめでたし』とは、到底思えそうにも無い……!


「……ハッ。ハ、ハハハハハ……!」

 

 眼から血を流しながら、顔を押さえながら、エリザが笑っている。


 対して、無傷の私は、苦虫を嚙み潰したような表情をしている。


「良いね……最高だ……!」


 最悪だ。


「面白い! 本当に面白いぜ、マリー・アストリア第二王女! 貴女を以前見過ごした俺の眼は、まさに節穴だったと自戒しよう……!」


 エリザに、【異能】の存在が露見した……!




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