突入編
札幌隊
1, 一世一代の大博打
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────『
ユグ・シルドア王国は、カラスコ大陸の北部の端にあるため、北部はローツ海に面している。
その海で取れた新鮮な魚を大陸中央に存在する皇国に輸出することで、何とか独立を保つことが出来ている、弱小国家だ。
そんな、ユグ・シルドア王国で行われている御前会議は、今までにないほどに荒れていた。
何故こんなにも会議が荒れているのかと言うと……事の発端は、一週間前のことだった。
───同年4月1日正午 ユグ・シルドア王国 領空
天気は快晴、雲ひとつなく暖かい日差しがサンサンと照りつけていた。
そんな天気の中、痩せこけた畑を耕し農作業をしていた村人達を轟音と一つの大きな影が覆う。村人達が不思議に思い、空を見上げると……大きな塊が轟音を発しながら、空を飛んでいた。
一瞬で飛び去っていた塊を、村人たちはただただ呆然と見つめるしか無かった。
その後、大きな塊───航空自衛隊 P1哨戒機は、その青白い機体に描かれた日の丸を誇らしげに見せつけながら、ユグ・シルドア王国の王都上空を優雅に旋回していた。
シルドア王国の王都上空に突然現れた、未知の物体にあるものは恐怖し、あるものは未知なるものに興味を抱いた。王国の軍部は、右へ左へ大騒ぎであった。
数分後、数度の旋回のち、空飛ぶ塊は轟音を空に響かせながら北の空へと飛び去っていった───
シルドア国王は、正体不明の物体が自国の首都上空にまで侵入された、この非常事態に対処するため、御前会議を急遽開催。今後の対応などについて、話し合われていた。
───そんな中だった。日本国と名乗る国から、打診があったのは。
未知の物体が王都上空まで侵入されたあとだ。そのため、最初は断ろうとしていたがその内容が内容だったため、会議にて話し合いがされていた。
その内容というは────
・我が国は、貴国の沿岸部から北方に凡そ50キロメートル離れた場所にある、小島に存在する『門』の奥より来たためこの世界の知識に疎い。
・この世界の常識や文化を知るため。そして、我が国のことを貴国に知ってもらうためにも、我が国の使節団を派遣したい。
・返事は、2週間ほどを目安にしてもらいたい。もし、3週間経っても返事がない場合、貴国を警戒対象として、今後対応していく。
・なお、我が国の航空機が哨戒活動中に陸地を発見したため、偵察を行った。その際に、貴国の領空を侵犯してしまったことに関して、深く謝罪したい所存である。
────というものだった。
シルドア王国のトップ──セルキ・シルドア国王は、まともに話し合いができていない大臣たちを眺めながら、この打診について思考を巡らせる。自分の選択に、この国の未来が懸かっていると感じながら。
『門』という、謎の多い建築物の奥から来たと言っている未知の国、日本国。
普段なら有り得ないと一蹴りにする所だが、日本国が保有するという、あの未知の物体──航空機が、意図も簡単に首都の防空網を掻い潜って見せたのだ。
にわかには信じられない話だが、あの技術力があるのだ。ありない話ではないのかもしれない。
しかし問題は、皇国だ。
あの国が未知との接触を許すか?いや、絶対に許さないだろう。
この国は、皇国の顔色を伺って経済援助を受けるだけの、属国に成り下がったのだ。
少しでも皇国の機嫌を損ねれば、直ぐにでも併合されてしまうだろう。
ローツ海で捕れる魚の量も年々減る一方。あと数年で、皇国からの納品要求量を下回ってしまう。
そうすれば待っているのは併合。あの国は、利用価値がなくなった国などすぐに自国へと併合する。
そうしてあの国は発展していったのだから。
どっちみち待っているのは破滅のみ。ならば、あの国にかけてみても良いのかもしれないな。
「もしそれでもダメだったのなら、それまでだったということだな」
セルキは一人覚悟を決め、玉座から立ち上がり、口を開いた。
国王が立ち上がった瞬間、先程まで騒がしかった会議室に静寂が訪れる。
「皆の者、よく聞け。我は日本国とやらにこの未来を託してみようと思う」
「しかし……」
ある大臣が反対しようとして、国王の顔を見る。そして、国王の目には決意が宿っているように見えた。
この大臣は、現国王が即位してから共に国を取り仕切っていた、いわば側近だ。だから、そんな側近の彼にはわかる、この目を国王が見せた時は、何を言っても無駄なのだと。
「わかりました」
「よし。ならば早速、日本国の者に返事を送れ。貴国の使節団を歓迎する、とな」
『『仰せのままに』』
────同年4月10日
日本国が『異界』内で、初めて接触した国となった、ユグ・シルドア王国は、国の存亡を賭けた一世一代の大博打を始めるのだった。
一方その頃、カラスコ大陸東部と南部では、銃声や爆発音、兵士の雄叫びが響き渡っていた───
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