流星戦争

 遠い未来の話。人類は大きな発展を遂げ、居住区を地球外へと広げた。火星や木星といった太陽系内の天体に住む者もいれば、もっと遠い星に住む者、地球に残る者もいた。

 そんな中、幾つもの星で、それぞれの集団が次々に独立や侵略をしようとして、あちらこちらで戦争が勃発した。

 世界情勢は混乱を極め、人類はその戦争を止めることはできなかった。兵器はかつての戦争で使われたものから大幅に進化し、より残虐なものになっていた。町ほどの大きさがある宇宙戦艦、巨大レーザービームを搭載した宇宙戦車、星が丸ごと要塞になっているものもあった。

 各地での戦争は激化し、常闇の宇宙を、数多の死の光が照らした。

 しかし唯一、この戦争に参加しない星があった。地球である。地球は人類の故郷の星として、戦争をしてはいけないという法律が制定されているのである。

 地球に住む人々は、宇宙へ飛び出した人類の愚かな争いの行く末を、指を咥えて黙って見ることしかできなかった。

「起きろって、流れ星が見えるぞ」

 地球のある島に住む男の子は、ベッドで寝る妹を起こして言った。

「お兄ちゃん、寝ないとお母さんに怒られちゃうよ」

 妹は兄のパジャマの袖を引っ張る。

「母さんはもう寝てるから、大丈夫だって」

 そうして妹は、彼に半ば無理やりベランダへ連れていかれた。

「ほら、見てみろよ」

 兄に言われるがまま重い瞼をなんとか開けた妹は、彼の指さす空を見上げた。

「わぁ、すごい」

 空には輝く光の線が、一つ、また一つと瞬いていた。

「目、冴えただろ」

「うん」

 妹は兄と共にしばらく夜の空を眺めると、彼は突然手を合わせ、祈りながらこう唱えた。

「お小遣い増えますように、お小遣い増えますように、お小遣い増えますように」

「お兄ちゃん、何してるの?」

「流れ星には、三回お願いを唱えるんだよ。ほら、お前は何かお願いごとないのか?」

「うーん」

 妹はしばらく考えて、同じように手を合わせて唱えた。

「世界が平和になりますように、世界が平和になりますように、世界が平和になりますように」

 妹は噛み締めるように祈った。遠い宇宙で、何年も前に一つの星を破壊した、超大型レーザービーム砲の光に向かって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る