第90話

「アヤちゃんのお父さんとかが当日挨拶するとき、あのモニターに映るんだよ。各フロアに挨拶で回るのは無理だろうしね」


「なるほど……」



頷きながら、「そういえば」とそのままナツキさんに訊ねた。



「今日はナツキさんは、どうしてこちらに……?」


「どうしてって、明日の警護やら警備やらはうちの家がやるから、一応見に来た方がいいって言われて」


「警護や警備って……ナツキさんの家って……」


「警察一家、だって……あれ?言ったことなかったっけ。うちの爺さんとか警視庁長官やってたよ」


「すっ、すごいですね……」


「そうかな」



ナツキさんは退屈そうに肩を竦めて「ああ、でも」とこちらを見た。



「小さい頃、きみがアヤちゃんの誕生日パーティーに来てたのも知ってたよ」


「え……そうだったんですか?」


「うん、だってナツキもいたからね」



緩やかに微笑むナツキさんに、何度か目を瞬かせる。


あたしにとっては割と衝撃なことをあっさりと告げた彼は、ポケットに入ったスマホを取り出した。



「あー、アヤちゃん、四十階の方にいるんだって、行こっか」


「あ、はい……」

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