第88話
「いいんだよ、緊張しても。今アヤちゃんいないし」
「そ、れは……甘えに、なるので」
自制するように告げれば彼は少しだけ興味が失せたように「ふーん?」と首を傾げた。
そして、続けて「なんか、染まったね」と呟く。
思わずナツキさんを見て、「え……」と口を開こうとするけれど、彼はさっさと先を歩いて行った。
染まった、とは……。
どういう意味なのか訊ねたいけれど、「とりあえずエレベーターで三十階まで行って、そっから乗り換えてー……あ、でも三十階にアヤちゃんもいるんだっけ」とぶつぶつ言いながらナツキさんはやはり先にエレベーターへ乗り込んでいくので、立ち止まっている暇はなかった。
「…………」
極力、周りをあまり見ないようにしなければ……。
興味という興味が尽きないから、きっといらぬことをしてしまう気がする。
見ないように努めれば、きっと感情をコントロールできるだろうし……。
ふう、と一度深呼吸をして、あたしは呼吸を整える。
大丈夫、落ち着けば失敗はしないはず。
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